
「事業売却の手続きを始めたい」
現役リタイアを控えた経営者の方や急ぎで現金が必要なため事業を売却したい方は、今すぐにでも事業売却の手続きに移りたいのではないでしょうか。
しかし、いざ始めようと思っても何から始めればいいのか、本当にこれでいいのか、と事業売却に詳しくないと不安になってしまうのではないでしょうか。
そこで本記事では事業売却の手続きについて、流れや売却時のポイントや注意点をご紹介したいと思います。
事業売却で未来は広がる!
事業を他社に売却することを事業売却と呼びます。
売り手企業と買い手企業の両者にとってメリットがあり、売却の価格や条件が合意に至った場合に事業売却が成立します。
事業売却を行うことで、売り手企業と買い手企業は以下のようなメリットを受け取ることができます。
<売り手側にとっての事業売却のメリット>
- 後継者問題が解決し安心してリタイアができる
- 現金が手に入る
- 売却せずに残す事業に集中できる
- 赤字を生み出す事業を手放すことができる
- 愛着のある事業の可能性を広げることができる
<買い手側にとっての事業売却のメリット>
- 商圏の拡大
- 事業の拡大
- ノウハウの獲得
- 既存事業と買取事業のシナジー
売り手も買い手も、事業売却の成立によって未来が広がります。
いかにお互いがwin-winになるように交渉できるかが売却成立のポイントと言えます。
それでは具体的にどのような手続きを経て、事業は売却されるのでしょうか。
事業売却の手続き
事業売却の手続きについて、大まかなフェーズに分けて見ていきましょう。
事業売却を希望する企業と売却先候補企業がマッチングする
まず事業売却を希望する企業と、逆に買取を希望する企業が出会わなくてはいけません。
経営者の知り合いの企業に売却することもありますが、より条件の良い売却先を選ぶには知人以外のネットワークでも売却先候補企業を探したほうが良いでしょう。
最近では団塊世代の中小企業経営者の大量引退が予想されるため、事業売却の支援を行う企業も増えてきています。
そのような企業は独自のネットワークで買取を希望する企業と繋がっているため、経営者のネットワークでは出会えないような企業にもコンタクトを取ることができます。
また売却希望の企業と買取企業の企業に向けたマッチングサイトもあります。
このようなサービスを利用して、より条件のいい売却先企業を見つけましょう。
売却先候補企業から意向表明書を受け取る
売却先候補にコンタクトをとり、相手企業が事業売却に乗り気である場合は意向表明書を受け取りましょう。
事業売却で買い手企業は事業を買い取るための資金が必要です。
その資金をどのように準備するか、いくらで買い取るのか、売却完了までのスケジュールなどについてまとめたものが意向表明書です。
この時点で不明な点があればお互いにすり合わせたり、了承できない点があれば交渉したりする必要があります。
基本合意書の締結
もし意向表明書の内容に問題がなければ、売り手企業と買い手企業の間で基本合意書を締結します。
基本合意書は契約書ではないので、締結しても法的拘束力は持ちません。
「意向表明書の内容で事業売却を進めることに同意します。一緒に協力して進めていきましょうね」という書類ですので、事業売却の手続きを進める中で交渉が決裂して話がなかったことになる可能性もあります。
いくら法的拘束力がないとはいえ、お互いの今後の信用問題に発展する可能性もあるため、基本合意書の締結後も誠意を持って相手企業に対応するようにしましょう。
デューディリジェンスの実施
基本合意書を締結した後はデューディリジェンスを実施します。
デューディリジェンスとは、売却先企業が契約を結ぶ前に売却事業の調査し評価を行うことです。
どの視点から調査して評価するかによってデューディリジェンスは種類が分かれます。
ビジネスデューディリジェンスや法務デューディリジェンス、財務デューディリジェンス、人事デューディリジェンス、税務デューディリジェンス、ITデューディリジェンスなどです。
売却先の企業は買い取る事業を正しく評価できるように、その事業の分野について詳しい専門家にデューディリジェンスを依頼するようにしましょう。
売り手企業はデューディリジェンスが正しく、そして円滑に行えるように調査に協力しましょう。
デューディリジェンスを行うことによって、意向表明書に記載された売却価格や売却スケジュールに修正が入る可能性があります。
その修正をした内容で最終的に売却契約を結ぶかを判断しますので、デューディリジェンスは事業売却の契約において肝となります。
売却の契約書締結
デューディリジェンスの結果、売却価格や条件が決まり、両者が合意できた場合は契約書を締結します。
この契約書の内容に従って事業売却の手続きを進めていくので、どうしても納得できない、交渉の余地がない内容があれば契約書にサインする必要はありません。
その場合は、別の売却先候補を探し、一からやり直します。
また同じ過程を繰り返すのは面倒に感じるかもしれませんが、そこで妥協してしまうと事業売却後に後悔することになりかねません。
契約を結ぶ前に本当にこれでいいのか、良く考えましょう。
株主総会での承認獲得
事業売却は会社全体の経営や株価に影響を与えますので、株式を公開している企業では株主総会を開き承認を得る必要があります。
株主の半数の出席、3分の2以上の賛成票が必要ですので、もし出席数や賛成票が足りない場合は、いくら売却契約書を結んでいても事業売却は無効になってしまいます。
無事に株主からの承認を得るには、事業売却を行うことでどのようなメリットが株主にあるのかを、きちんと数値とともに説明しなければいけません。
業務、土地の所有権等の引継ぎ手続きの実施
無事に株主から承認を得て事業売却することが確定したのであれば、後は売却事業に関わる業務の引継ぎや土地の所有権等の引継ぎ手続きを進めましょう。
場合によってはこの引継ぎに時間が掛かり、事業売却の完了が数年後になることもあります。
スムーズに、迅速に引継ぎが完了するように、売り手企業も買い手企業もお互いに協力して進めていきましょう。
事業売却の手続きを進める上でのポイントや注意点
事業売却の手続きの流れについて説明しました。
なんとなくイメージは湧いたでしょうか。
次に事業売却の手続きを進める上でのポイントや注意点について説明したいと思います。
時間の余裕を持って事業売却を行う
売却先企業を探すのに時間が掛かったり、交渉の間で話がなかったことになることが続いたりすれば、事業売却の実現までに長い道のりを要します。
そうすれば自ずと長い期間を掛けて事業売却を進めなくてはいけなくなります。
早く事業売却の手続きを終わらせて老後の人生や次の事業に移りたいのであれば、事業売却の準備は早めに開始すべきです。
手続きを開始すればすぐに終わるだろうと思っていると、想定よりも時間が掛かり今後の予定に影響を与えます。
事業を立ち上げる段階の時点で「もしこの事業を譲渡をするなら」と考えておいてもいいくらいです。
事業売却を行う目的とゴールをはっきりさせる
なぜ事業売却を行うのか、行うことでどのような状況になることを望むのか、目的とゴールを明確にしておきましょう。
もしかしたら事業売却をする必要がないかもしれません。
また目指したい将来像にいたるには、事業売却よりも適した他の方法があるかもしれません。
事業売却はあくまでも手段であり、目的でもゴールでもありません。
目的とゴールを見失わないように注意しましょう。
協業避止義務について認識する
事業売却を行った後に、売り手企業は基本的に売却した事業と競合する事業を20年間運営することはできません。
これは事業を買い取った企業を守るためです。
商法でも明確に禁止されています。
事業売却を行う場合は、売却した事業を一定期間は運営することができないことを認識した上で売却してください。
売却後に「やっぱりもう一度」というわけにはいきません。
<参考:会社法第21条>
- 事業を譲渡した会社(以下この章において「譲渡会社」という。)は当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(東京都の特別区の存する区域及び地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市にあっては、区。以下この項において同じ。)の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から二十年間は、同一の事業を行ってはならない。
- 譲渡会社が同一の事業を行わない旨の特約をした場合には、その特約は、その事業を譲渡した日から三十年の期間内に限り、その効力を有する。
- 前二項の規定にかかわらず、譲渡会社は、不正の競争の目的をもって同一の事業を行ってはならない。
※記事執筆時の内容ですので、内容に変更・修正・追加等が生じる可能性があります。事業売却を行うときは、その時点での法令についてご自身でご確認ください。
事業売却の情報は確定まで周囲に漏らさない
事業売却が会社経営や株価に影響を与えることは前述しました。
つまり事業売却をすることを事前に周囲に漏らすことでインサイダー取引のリスクを負うことになります。
さらに従業員や取引先に不要な混乱や心配を招く可能性もあります。
そのため事業売却の情報は確定まで周囲に漏らしてはいけません。
従業員に知らせるのは契約締結の当日や早くても前日にしましょう。
もし事業譲渡の手続きを進める上で一部の社員に知らせる必要がある場合は、最低限の人数のみに知らせ、他の人に漏らさないことやインサイダー取引を疑われるような行動を取らないように念を押しましょう。
売却先に対して誠実に対応する
事業の売却先企業に対しては最初から最後まで誠実に対応しましょう。
もし交渉が決裂したとしても、その後一緒に仕事をすることになるかもしれません。
また世の中、誰と誰が繋がっているかも分かりません。
売却先企業の信用を失ってしまったら、その周囲にいる企業や人からも信用を失ってしまうつもりで事業売却に臨みましょう。
また売却事業について、嘘をついたり相手企業が不利になるようなことを隠したりしてはいけません。
過去には、事業について隠していたことが発覚して契約締結後に裁判となり、その事業売却が無効になったケースもあります。
嘘や隠し事はお互いのためになりません。
事業売却の専門家を交え、交渉が不利にならないようにする
事業売却を行うのであれば専門家を交えましょう。
もし売却価値の高い事業であったにも関わらず、できるだけ安く買い取りたい売却先企業が本来の事業価値よりも安い金額を提示してきた場合、それが適正かどうかを判断できるでしょうか。
「こんなものなのかな」と同意してしまっては勿体無いですよね。
せっかくゼロから自分の手で育ててきた事業ですので、価格はいくらでもいいから早く手放したい余程の理由がない限りは、事業売却に詳しい第三者と一緒に進めていくことをおすすめします。
事業売却の手続きが面倒ならサポートを検討してみては?
事業売却の手続きについて、流れや注意点についてお分かりいただけたでしょうか。
「面倒なことは分かった」という方が多いのではないでしょうか。
法律であったり、財務であったり、事業売却には専門の知識が必要です。
事業売却の手続きを進める際のポイントとして、専門家を交えることをおすすめしました。
そこで最後に事業売却の手続きについて相談を行うのにおすすめの専門家を紹介して、本記事を終わりにしたいと思います。
M&Aコンサルティング社は渋谷にある会計事務所です。
事業売却の支援を行っているので、相談はもちろん、どうすれば売却価格を高くして売ることができるか、という事業価値を最大化することにも対応しています。
「事業売却は手段でありゴールではない」ということを念頭に、売却の次のフェーズを見据えたコンサルティングを行ってくれますので、事業売却だけでなく経営全体の相談も可能です。
相談は匿名で可能ですので、気軽に問い合わせができるのも魅力の1つです。
もし事業売却をお考えなら、M&Aコンサルティング社の匿名相談を利用してみてはいかがでしょうか。
>>匿名で相談・簡易査定をしてみる<<