
事業譲渡を検討しているけれど、手続きが煩雑なのではないか。
そのような不安を持たれていないでしょうか。
事業譲渡は現経営者だけでなく、従業員や取引先にとってもプラスの影響を与えるかもしれない可能性を秘めています。
しかし手続きが分かりづらい、面倒というものに対しては、なかなか積極的に進めていこうと思えないのが人間というものです。
そこで今回は事業譲渡を検討している方が諦めないために、事業譲渡の手続きやポイント、注意点について整理したいと思います。
事業譲渡とは
事業譲渡とは、自社が持つ事業を他社に譲り渡すことです。
すべての事業を譲渡する場合もあれば、一部の事業を譲渡する場合もあります。
「そろそろ引退する年齢だから」
「事業を手放したい」
経営者の方にとって、手塩に掛けた事業は大切な子どものような存在です。
しかし人生には限りがありますので、いつか自分の手から離さなければいけないときが訪れます。
自分の引退とともに廃業を選ぶ、人生が終わるまで自分が、という選択もできますが、家族や従業員、取引先への影響を考えて、ご自身が元気なうちに他社へ事業を譲渡するというのも1つの手段です。
まだまだ現役を続行するつもりでも事業譲渡を選択する経営者の方もいます。
一部の事業に集中するために他の事業を譲渡するのです。
また、事業譲渡では現金を得ることができます。
もし譲渡する事業が自社でうまく行かず赤字になっていたとしても、譲渡する際に得られる資金で補填することができるのです。
このように事業譲渡することで得られるメリットがあるのですが、そう簡単に経験できるようなことではないため、人生最初で最後、たった1回きりの事業譲渡になる方は珍しくありません。
初めてですので、どのように進めればいいのか、何が必要なのか、ということがさっぱりで事業譲渡に対して腰が重くなってしまうのも頷けます。
そこで事業譲渡の手続きについて、次の章で順を追って見ていきたいと思います。
事業譲渡の手続き
事業譲渡の手続きは大きく7つのフェーズに分かれます。
- 譲渡先の候補企業を見つける
- 候補企業からの意向表明書を確認する
- 両社で基本合意書を締結する
- 譲渡する側の企業について調査を行う
- 事業譲渡の契約書を締結する
- 株主総会で事業譲渡の承認を得る
- 事業を受け渡す手続きを行う
詳しく見ていきましょう。
譲渡先の候補企業を見つける
事業を譲渡するのであれば、まずは譲り受ける側の企業がいなければいけません。
事業譲渡は決定するまでおおっぴらに話せることではないので、自社のホームページなどで大々的に告知して相手を探すことはできません。
日本には何百万社という企業が存在しており、その膨大な数からお互いに条件の合う譲受先企業を見つけなければいけません。
普段と変わらずに企業経営をしながら相手企業を探さなければいけませんので、経営者の方にとっては大変な負担になってしまいます。
最近では団塊世代の大量リタイアに伴う事業譲渡の増加から、そのような譲渡したい企業と、買い取りたい企業を集めたマッチングサイトや仲介業者が見受けられるようになりました。
そのようなサイトや企業のサービスを利用すると、候補企業を見つけやすいと思います。
候補企業からの意向表明書を確認する
意向表明書とは、その名の通り事業を買い取りたい意向を表明するものです。
譲り受けたい事業や資産、債務の範囲、買取金額などの条件面やどのように譲渡を進めていく予定なのかが内容に含まれます。
売り手企業はその内容を見て、相手企業を買い手企業として選んでもいいのかを検討します。
場合によっては内容について相手企業と交渉することもあります。
両社で基本合意書を締結する
意向表明書を確認し、基本的に問題がなければこのまま進めましょう、と両社が同意に至った場合は、基本合意書を締結します。
ただし基本合意書の締結時点では、事業譲渡の契約は結ばれていません。
あくまでも「じゃあ一旦これで進めましょう」という認識を合わせるためのものでしかありませんので、基本合意書を締結しても実際に事業譲渡に至らないこともあります。
譲渡する側の企業について調査を行う
譲渡する側、つまり売り手企業は買い手企業による調査を受けなければなりません。
事業譲渡後に買い手企業が不利になること、不都合になることがないようにするためです。
また買取金額が適切どうか、事業の価値を判断するためでもあります。
法務、財務、人事、ビジネス、不動産など多岐にわたる視点での評価を行います。
この調査をデューディリジェンスと言います。
デューディリジェンスの結果次第で、事業譲渡時の契約内容が左右されます。
事業譲渡の契約書を締結する
デューディリジェンスで譲渡する事業のリスクと価値をはっきりさせ、初めて契約に至ります。
この事業譲渡契約書の内容によって、実際に譲渡を行いますので、両社が納得できるよう条件を刷り合わせなければいけません。
交渉が長引いたり、決裂したりすることもあります。
弁護士や公認会計士、仲介を行う企業などを通すことで、この交渉を円滑に進めやすくなります。
株主総会で事業譲渡の承認を得る
株式が公開されている場合は株主総会を開き、事業譲渡の承認を得る必要があります。
事業譲渡の承認には、株主の半数の出席および3分の2以上の賛成票が必要です。
反対票が3分の1以上で承認が得られない場合もあります。
もし株主総会で承認が得られたとしても、反対する株主から株式の買取請求を受けた場合は対応する必要があります。
そのため株主総会では事業譲渡の承認が得られるように、事業譲渡を行うことでどのようなメリットが企業と株主双方にあるのかを伝えて説得しなければいけません。
実際に事業を受け渡す手続きを進める
株主総会で無事に承認を得られた場合は、実際に譲渡する手続きを進めます。
債権や土地の名義などを移転しなければいけません。
売り手企業、買い手企業の双方が協力しながら進めましょう。
権利関係や法律的な引継ぎもありますが、事業を進める現場上の引継ぎも行う必要があります。
事業譲渡に伴い引退を考えている経営者の方は、譲渡が成立したからといってすぐに引退できるわけではなく、この引継ぎのために数年ほど時間を要することもあります。
事業譲渡の手続きに必要なもの、存在
事業譲渡の手続きについて、流れを説明しました。
その中で事業譲渡の手続きに必要なものや存在がいくつか出てきたと思いますので、改めて一覧にしてまとめてみたいと思います。
- 売り手企業と買い手企業の仲介(弁護士や公認会計士など)
- 意向表明書
- 基本合意書
- 基本合意書
- デューディリジェンスのための専門家(公認会計士や税理士など)
- 事業譲渡契約書
- 株主からの承認
- 事業買取の資金
これらを大まかに分けると、『専門家』『書類』『実際に進めていくための承認や資金』の3つが事業譲渡の手続きに必要なもの、存在と言えそうです。
『実際に進めていくための承認や資金』については、承認を得られるか、資金はあるのか、という話なので、筆者個人からは事業譲渡を進めるには何とか用意してくださいとしか言えません。
しかし『専門家』については、いかに信用できて知識もスキルとしっかりした専門家を見つけてくるかだと思いますので、いくつか専門家を探す際のポイントをお伝えしたいと思います。
より良い専門家を見つけることができれば、『書類』の用意にも力になってくれると思うので、事業譲渡の手続きにおいて肝になるのは『専門家』ではないでしょうか。
安心して事業譲渡の手続きを任せられる専門家を見つけるには、
- 身元が確かなこと
- 事業譲渡のサポート経験があること
- その分野の専門家であること
- 対面で話して相性が良いと思えること
の4つをチェックしてみましょう。
事業譲渡では事業を買い取る資金だけでなく、株価や株主への影響もあります。
詐欺など犯罪に巻き込まれる可能性がゼロとは言い切れません。
最低でも身元が確かな相手に支援を依頼すべきです。
弁護士や税理士などの士業と呼ばれる人たちは難しい国家試験をわざわざ突破して資格を取得し、普段から高い倫理観を求められる人たちですので、おかしなことをする心配は少なくて済むかと思うのでおすすめです(その中でも犯罪に手を染める人は染めてしまいますが・・・・・・)。
特に事業譲渡のサポート経験のある専門家がおすすめです。
なぜなら既に何件も経験があり今もサポートを行っているということは、過去のケースでやましいことをしていないということだからです。
また専門家といっても、各分野における専門家ですので専門外には疎いことがあります。
弁護士が対応できる範囲と税理士が対応できる範囲に被る部分もありますが、逆に被らない部分もありますよね。
そのため各分野、必要な専門家に支援してもらうのをおすすめします。
デューディリジェンスでは公認会計士や税理士に相談することがありますが、譲渡事業の価値を評価するには、その事業の分野に詳しい専門家と連携をとったほうがいいでしょう。
そして最後に、実際に対面して話してみましょう。
事業譲渡が完了するまで長い年月を要することが多いので、ご自身と相性が悪いと思った相手と長期間に渡って仕事をするのは苦痛です。
メール相談を受け付けている弁護士事務所や会計事務所、事業譲渡の仲介企業がいますが、最初はメールで相談しても必ず直接相談をしてから契約するかと決めることをおすすめします。
事業譲渡の手続きをする上でのポイントや注意点
さて、事業譲渡の手続きの流れはお分かりいただけたかと思いますが、その中でポイントや注意点はないのでしょうか。
事業譲渡の手続きを進める上で気をつけたいポイントや注意点をまとめてみました。
事業譲渡の完了まで長期間必要になることを覚悟する
事業譲渡には時間が掛かります。
まず条件の合う買い手企業を探すのに時間が掛かりますし、その企業と交渉するのにも時間が掛かりますし、無事に譲渡先として決定したとしても引継ぎに時間が掛かります。
もし引退とともに事業を譲渡したいと思っている方は、譲渡が完了するまで完全に引退することができませんので注意しましょう。
そのためにも、まだ引退や譲渡のタイミングではなくても早めに事業をどうするのかを考え、譲渡の準備を進めておきましょう。
事業譲渡が決まるまで社員や取引先に知られないように注意する
事業譲渡は譲渡が決定するまで周囲に知られてはいけません。
特に社員や取引先に知られてしまうと、不要な心配をさせたり混乱させたりしてしまう恐れがあります。
弁護士や税理士などに事業譲渡の相談をすることもあると思いますが、電話を掛ける際は社外の、できるだけ人のいない場所で掛けるようにしましょう。
もしくはメールで送り、うっかり話を聞かれ情報が漏れてしまった、なんてことにならないようにしましょう。
譲渡する事業について隠し事や嘘は一切しない
譲渡する事業について隠し事をしたり、嘘をついたりするようなことは絶対に止めて下さい。
過去には、売り手企業が買い手企業に譲渡する事業の営業利益について虚偽の内容を伝えたことで裁判になり、詐欺による契約取消しが認められたケースもあります。
できるだけ事業を高く売ろうと隠し事や嘘をつけば、交渉している企業に対して不誠実ですし、その企業と契約が取消しになった後にあなたの会社と契約しようとする企業が現れなくなってもおかしくありません。
事業譲渡の手続きは信用、信頼を第一に進めていきましょう。
事業譲渡の手続きが面倒ならサポートを検討してみては?
事業譲渡の手続きについて説明してきましたがいかがでしょうか。
やはり面倒そうでややこしそう、というのが多くの方の感想ではないでしょうか?
そのような方には事業譲渡のサポートを受けることをおすすめします。
最後に事業譲渡を検討している方におすすめの相談先をご紹介します。
完全成果報酬制で事業譲渡の手続きをサポートしてくれる会計事務所です。
事業譲渡が成立した段階で費用が発生しますので、事業を譲渡したことで得られた資金から支払うことができ、手元にお金がない方でも安心して相談ができます。
また完全匿名での問い合わせができるので、一度問い合わせした後にしつこく営業される心配もありません。
相談者に寄り添った事業譲渡のサポートをしてくれる会計事務所です。
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