
事業承継の手段の1つとしてM&A(合併・買収)があることをご存知でしょうか?
M&A(合併・買収)と聞くと「大手企業だけの話では?」と思ってしまう方もいるかもしれませんが、実のところ会社の規模には関係なく、大手企業でも中小企業でもM&A(合併・買収)を活用しています。
とくに後継者問題を抱える中小企業では、M&A(合併・買収)による事業承継の必要性が高まっています。
本記事ではM&A(合併・買収)による事業承継のメリットやデメリット、その他の事業承継の方法との比較についてご説明したいと思います。
事業承継とM&A(合併・買収)
事業承継と日本の『後継者問題』
事業承継とは、会社の経営を後継者に引き継ぐことです。
どれほど独自の技術を持っていたり利益を出していたりする企業も、経営者の高齢化や死亡を機に誰かに経営を引き継ぐか、もしくは廃業すること考えなければなりません。
とくに高齢化が進む日本では、『経営者の高齢化』の問題は避けて通れません。
中小企業庁の『事業承継に関する現状と課題について(平成28年)』によれば、
- 2020年頃に数十万の団塊経営者が70歳前後の引退時期にさしかかる
- 60歳以上の経営者の半数以上が廃業予定
- 廃業の理由は「当初から自分の代でやめようと思っていた」が38.2%、後継者問題は28.6%
- 廃業予定企業のうち3割が同業他社よりも業績が良く、4割が今後10年間の将来性がある
ということが分かっています。
つまり、今後数年で多くの経営者が事業承継を選ばず廃業する一方、その中には廃業しか道がないわけではない企業が半数以上いるということです。
その中には業績が良い企業や独自の技術を持った企業が含まれ、それらの廃業によって日本国内の雇用機会や独自のノウハウが失われることを意味しています。
もし後継者さえ見つかれば、後継者に引き継ごうとさえ思えれば、廃業せずに済む企業もいるのですが、良い後継者がそもそも見つからない『後継者問題』により解決は簡単ではありません。
後継者の候補になるのは主に、
- 現経営者の親族
- 役員、従業員
- 他社や社外の個人などの第三者
です。
家族経営が珍しくない時代では、経営者の子どもが跡継ぎとして事業を引き継ぐことが当たり前のように考えられていました。
しかし現代では子どもが引き継ぐ意思を持っていなかったり、現経営者である親がそもそも継がせる気を持っていなかったり、子どもや親族に引き継ぐケースが減ってきています。
前述の『事業承継に関する現状と課題について』によれば、40年ほど昔では9割が親族内承継であったのが、ここ5年ほどでは4割未満にまで低下しています。
逆に役員や従業員、社外の第三者へ引き継ぐ親族外承継の割合が増し、6割以上を占めるようになりました。
ただし役員や従業員に引き継ぐ場合は、経営者が持つ株式を買い取るための資金を用意できなかったり、役員や従業員の家族から反対を受けたりすることで、なかなか思うように引き継ぐことができません。
役員や従業員への承継の割合が40年ほどの間-2.6~+6.8ポイントの間での増減にとどまっているのに対し、第三者への承継は-0.80~+18.7ポイントとプラス方向に広い範囲で推移しています。
とくに5~10年以内は9.7ポイント、5年以内は18.7ポイント増加しているのです。
近年、このように後継者の割合として伸びている第三者承継では、M&A(合併・買収)による事業承継が行われています。
M&A(合併・買収)とは
M&Aは『Merger and Acquisition』の略で、企業間の合併や買収のことを指します。
M&A(合併・買収)は主に3種類に分けることができます。
- 株式譲渡
- 事業譲渡
- 吸収合併、吸収分割
ライブドアによるニッポン放送へのM&A(合併・買収)や、放送当時話題になったNHKドラマの『ハゲタカ』などから、M&A(合併・買収)に対してマネーゲームや冷たいイメージを持っている方もいますが必ずしもそうとは限りません。
M&A(合併・買収)には、売り手企業と買い手企業の両者が合意していない敵対的M&Aと、両者が合意している友好的M&Aがあります。
事業承継におけるM&A(合併・買収)は友好的M&Aを指します。
では、なぜ事業承継の手段としてM&A(合併・買収)を選択する経営者が増えてきているのでしょうか?
M&A(合併・買収)を事業承継に用いるメリットについて見ていきましょう。
M&A(合併・買収)を事業承継に用いる5つのメリット
事業承継の手段としてM&A(合併・買収)を選択する理由として、主に5つのメリットがあります。
現経営者と後継者、双方が納得した引継ぎが可能
親族や従業員以外から後継者を探すことができますので、より多くの候補者の中から相応しい人物・企業を選ぶことができます。
親族や社内から後継者を探す場合、次のような問題に直面することがあります。
<親族へ事業を引き継ぐ場合>
- 子どもや孫などの親族に、引き継ぐ意思がない、別の仕事に就いている
- 子どもや孫の家族から反対される
- 従業員からの信用、信頼を得られず求心力がない
- そもそも子どもや孫などの親族がいない
- 経営者を務めるための能力を持った親族がいない
<従業員に事業を引き継ぐ場合>
- 従業員の家族から反対される
- 現経営者から株式を買い取る資金を持っていない、銀行から融資を受けられない
- 現経営者と同年代の高齢の従業員しかいない
- 経営者を務めるための能力を持った従業員がいない
以上のような問題に直面することで、事業を引き継ぐことを諦めて廃業を選択する経営者も少なくありません。
また、子どもや孫に引き継ぐ意思がないのにも関わらず無理やり継がせることで、親子間に軋轢を残す場合もあります。
一方、M&A(合併・買収)による事業承継を選択することで、経営能力を十分に持ち、株式を購入する資金を用意でき、自ら引き継ぐ意思を持った後継者を見つけることができるため、現経営者と後継者双方が納得した上での承継が可能です。
社外に後継者を求めることでスムーズに事業を引き継ぐことができるのです。
従業員や取引先などへの影響を抑えることができる
もし事業承継を選ばずに廃業を選択した場合、従業員や取引先に大きな影響を与えることになります。
廃業するということは、従業員は雇用先を失うということです。
従業員が高齢ばかりであれば廃業と同時に彼らもリタイア生活に入る、ということもありますが、若い従業員がいる場合は次の就職先の面倒をみることが経営者の最後の仕事になるケースもあります。
また取引先は、今まであなたの会社に依頼していたものを他で見つけてこなくてはなりません。
例えば取引先の商品の原材料をあなたの会社が納品していたとすれば、その原材料の発注先を他社に変えることで製造コストが上がるかもしれません。
製造コストが上がれば、取引先の利益が減ったり、商品の値上げによって消費者の負担になったりすることが考えられます。
一社の廃業といっても、社内社外問わず多くの人に影響を与える可能性があるのです。
しかし廃業せずにM&A(合併・買収)によって事業を第三者に残すことができれば、このような問題は解決するケースが多いことを知っておきましょう。
例えば株式譲渡によるM&A(合併・買収)では、経営者が変わるだけですので、従業員の雇用や取引先との関係はそのまま維持することができます。
吸収合併の場合でも存続会社・新設会社は、消滅会社が従業員と結んだ労働契約関係を含めて事業を承継しますので、基本的に従業員が雇用先を失うことはありません。
「今まで支えてきてくれた従業員や取引先に迷惑を掛けたくない」とお悩みの経営者の方は多いのではないでしょうか。
そのような方のお悩みを解決できるのがM&A(合併・買収)による事業承継です。
事業の拡大、相乗効果による発展が期待できる
M&A(合併・買収)では、買い手企業は自社の事業拡大や利益増大を狙って買い手として名乗りをあげます。
例えば関東地方で業績を上げている成長企業が東海地方進出を考えた際、イチから販路を開拓するよりも、すでに東海地方に展開している同業他社を買収した方が効率が良いのです。
逆に売り手企業もM&A(合併・買収)によって同じようなメリットを受けることができます。
例えばある県で数店舗を持つ飲食店があったとしましょう。
提供する料理は好評で業績も年々アップしており、さらに店舗を拡大できる勢いがあります。
しかしオーナーが全店舗の運営を管理しており、これ以上店舗を増やすのはキャパオーバー。
従業員はまだまだ運営を任せられる状態ではなく、県外進出、ましてや全国チェーン展開は夢のまた夢。
このような状況でも全国チェーン店を運営する企業に買収されることで、買い手企業の持つチェーン展開のノウハウや資金力を武器に店舗拡大を実現することができます。
さらに買い手企業がすでに運営している他の飲食店と商品をコラボしたり、ポイントカードを共通にして集客力を強化したりするなど、M&A(合併・買収)による相乗効果を狙うことができます。
M&A(合併・買収)による事業承継によって、現在の資金力や営業力、人材だけでは実行できなかったことを可能にすることができ、それによって利益が伸びれば従業員の待遇を今よりも良くすることもできるのです。
現経営者は役員や社員という形で残ることも可能
M&A(合併・買収)によって事業承継した場合、現経営者は担保や個人保証のプレッシャーから逃れることができると同時に、そのまま企業に役員や社員として残ることができます。
買い手の企業から新しい取締役が派遣されてきた際に新しい取締役への引継ぎのために残ったり、新人の教育係として活躍したりする方も少なくありません。
経営のプレッシャーから逃れることで、商品や顧客に対して全力で向き合えるようになったと感じる方もいらっしゃいます。
もちろんリタイア生活に入り、家族との時間をより大切にしていこうという方もいます。
しかし今まで仕事一筋だった方にとって、ある日を境に仕事を失ってしまうのは生きがいを失うことに等しいのではないでしょうか。
会社に残れるのか、どのような形で残るか、というのは買い手企業との契約次第ですが、残ることを絶対条件として買い手を探すことも不可能ではありません。
廃業するよりも金銭的メリットがある場合もある
廃業するには負債や税金の残りを処分しなくてはいけません。
その際に土地や建物、商品、機械などの資産を処理して得たお金によって負債を支払わなければなりませんが、廃業の場合は資産評価がM&A(合併・買収)の場合よりも低く評価されてしまい、負債がゼロにならず、むしろ莫大な借金が経営者に残ってしまうことがあるのです。
そのため廃業したくても廃業できず、また後継者も見つからずに困っている経営者の方も存在します。
仮に借入金を全額返済し、無事廃業することができたとしても、手元に残るお金は少なく経営者のリタイア後の生活に影を落とします。
一方M&A(合併・買収)による事業承継を選ぶことで、引継ぎの方法次第では、経営者が個人保証していた負債は経営権や事業ごと買い手に引き継がれます。
そのため家を担保にしていた場合は家族の安心にも繋がります。
さらに事業承継後も創業者が会社に残る場合は報酬を受け取ることができます。
M&A(合併・買収)を事業承継に用いるデメリット
M&A(合併・買収)による事業承継のメリットをご紹介しましたが、逆にデメリットはないのでしょうか。
事業承継の手段としてM&A(合併・買収)を行う際のデメリットをまとめました。
買い手企業がなかなか見つからない
まず1つ目が買い手企業を見つけることに時間を要することが多い点です。
引継ぎ後も従業員を大切にし、今まで育て上げてきた自社商品や企業文化に対する理解を持った買い手企業を探したいところですが、すべての条件を満たした企業を見つけて双方合意に至るには長い道のりが掛かると思ったほうが良いでしょう。
そのため「いざ」というときになって事業承継の買い手を探すよりも、何年も前から準備を進めておくことをおすすめします。
日本には何百万社という企業が存在します。
その中から最適解を見つけ出すのは大変な労力が掛かると予想されますが、経営者自身にとっても、従業員や取引先にとっても、買い手企業にとっても、有益な事業承継になるよう力を尽くすことが事業承継する経営者の責任といってもいいでしょう。
取引先からの理解を得られず解約に至る
自社の商品を購入してくれていた取引先が、第三者による事業承継に理解を示さない場合も少なからずあります。
現経営者やその理念に共感していたため、経営者や企業名が変わることに抵抗を感じてしまうのです。
また承継後に売り方や商品の方向性が変わる可能性もあり、何かが変われば取引先との関係性も変わってしまうことは覚悟しておくべきでしょう。
取引先からの理解を得られるよう、第三者への事業承継が決定した後にどのように伝えるか、とくに重要な取引先の引継ぎを円滑に行えるかがキーとなります。
現経営者は取引先に迷惑を掛けないように事業承継を進めていくことが重要です。
M&A(合併・買収)による事業承継をご検討なら
M&A(合併・買収)による事業承継の利点についてご理解いただけたでしょうか。
とくに後継者問題を抱える中小企業にとって、廃業を考える前に検討すべき選択だと思います。
しかし前述したデメリットがあることも事実です。
現在の業務や職務をこなしながら、事業承継の準備を進めていくのは大変です。
事業承継を行うことを従業員へ知らせるのは基本的に契約後になりますので、準備の手伝いをお願いすることもできず、ひとりで抱え込んでしまったり、事業承継をしなければならない直前のときまで手を付けられずにいたりする方もいます。
売り手の経営者の方にとって、人生初の事業承継、M&A(合併・買収)となることも珍しくありませんので、わからないことが多く戸惑ってしまうのが当たり前なのです。
「引継ぎ先を見つけることができるのか」、「従業員や取引先にとってマイナスにならない事業承継を行うことができるのか」などの不安を抱えている方は、事業承継の仲介を行ってくれる仲介者や、自社に助言してくれるアドバイザーを利用すると良いでしょう。
M&A(合併・買収)による事業承継の経験が豊富ですので、経営者の不安を解消しつつ、数多くの企業の中から買い手候補を探し出し、円滑に交渉を進めてくれます。
しかし仲介者やアドバイザーを利用することで多くの費用が掛かってしまうのは避けたいものですよね。
そこで、完全成果報酬型エージェントをおすすめします。
完全成果報酬ですので、事業承継の契約決定後に支払が発生しますので、買い手企業を探すために長い期間が掛かってもエージェントに支払う費用は変わりません。
さらに、渋谷にあるM&Aコンサルティング社であれば成果報酬型であるのはもちろん、事業承継前に企業価値を向上させてから売却する『スケールM&A』を得意としています。
つけめんブームの火付け役となった某ラーメン店のM&Aを担当したのもM&Aコンサルティング社といえば、エージェントとしての実力も確かなのではないでしょうか。
「後継者が見つからない」「廃業したくてもできない」など悩むだけでは問題は解決しません。
あなたがリタイアするときが刻一刻と迫っています。
事業承継を検討されるのであればいち早い行動が成功に繋がりますので、迷いや不安をまずは専門家に相談してみることをおすすめします。
経営者や従業員、取引先、買い手企業など、すべての人にとって幸せな事業承継が実現するといいですね。
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Neil_Scottuk
Brett Jordan