
学習塾には通ってくる生徒がいます。
生徒たちの成績が上がっていき、志望校に合格することを目標に一緒にがんばるのが学習塾の使命です。
やる気と学力をアップさせたいという執念を、生徒たちに自分の手でつかみとってもらわなければいけません。塾に通うこと自体、自分の学力を上げたいと思って通ってくるはずなのですが、親に通うよう言われたから、友達もみんな通っているからというだけで、自分の意志とは違うところで塾に通っていると、いつまでたっても「やる気」は起こってこないのです。今回は、この真剣勝負が繰り広げられる教育の現場である「学習塾」のM&Aについてお話していきます。
目次
学習塾のM&A
M&Aとは
M&A(エムアンドエー)とは『Mergers(合併)and Acquisitions(買収)』の略です。
買収と聞けば、ドラマでもありましたが「ハゲタカ」などが記憶に新しいのではないでしょうか。
経営状態が思わしくない企業を買いたたいて、のっとってしまうイメージです。
ある日、会社の株式の過半数を買い占めた新しい経営者が現れて、既存の役員、従業員の首をバスバスっと切って解雇してしまい、自分の息のかかった従業員ばかりを入社させて、まったく違う会社に作り変えてしまう。
さらに元の経営者も丸裸にされて、追い出される…。
というのは、ドラマの中のお話です。ドラマのモデルも巨額の負債をかかえた大企業の話です。
今回お話しますのは、中小企業や個人経営者向けののM&Aです。
それも、ドラマのような敵対的なものではなく、売り手と買い手の両方に利益をもたらすWin-WInなものです。
例えばまだまだ経営を続けることは可能だけれども、後継者が不在、または他の事業を始めてみたいと思ったときに、このM&Aのスキームはぴったりなのです。
これは会社の規模は関係なく、むしろ中小企業に合ったビジネススキームです。
事業譲渡や株式譲渡を行うメリット
まず、事業譲渡と株式譲渡についてご説明します。
ここでいう「事業」とは会社のものです。そして「株式」は株主のものとなります。
この一連の流れを頭に入れておくとM&Aのスキームが理解しやすいのです。
《事業譲渡にかかる税金は益に対して40%!》
事業は会社のものですから、譲渡してもオーナーの手元にお金は入ってきません。会社に入るのです。
ですから譲渡した益に関して課税されます。
法人に課税されますから、税率は40%となります。
しかしメリットもあります。事業だけを譲渡するため、オーナー=株主の場合、会社はオーナーが保持することができます。
そして、事業だけを切り離すことができて、会社には譲渡による利益も入ってきます。
例えば少し業績の悪い事業を切り離すこともできて、事業を譲渡することによる利益も入ってきて、会社の資金力に余力が増すことになります。
《株式譲渡は手元にお金が入ってきて、税率も20%》
株式譲渡の大きなメリットは税率が20%と安いことです。そして株式だけを譲渡するので、手続きも少なくて済みます。
さらに、株式を売るので、お金は株の持ち主であったオーナーのもとに渡ります。
ただ、最初にお話しました通り、会社は株主のものとなりますから、株主=オーナーだった場合は、株を譲渡してしまったら会社に対する議決権はなくなります。
株主が変わって元オーナーの議決権はなくなりますが、新オーナーのもとで会社自体は存続します。
株式譲渡、事業譲渡の共通のメリットは、会社自体は存続するということです。
せっかく育てた事業が、ずっと第三者へ引き継がれますが、社名も残すことができるということです。
学習塾がM&Aを行うケース
後継者がいないが引退したい
いままで、子供たちの学力向上のために学習塾を経営してきたけど、あとを継いでくれる人が見つからない。
少子化に伴い学習塾経営に少なからず不安を感じていたので、そのまま自分の子供に継がせるのは少し難しい。
そういう状況に追い込まれてしまう経営者が少なくないのが実情です。
適性も必要な事業ですから、学習塾の事業内容に全く興味がない場合もあります。従業員の中から探すにしても、ほとんどの塾講師が学生アルバイトだった場合、その人たちに経営を任せるのはとても難しいことです。
学習塾ほど、適任の後継者を選ぶのに苦労する事業と言えます。
しかし、オーナーの高齢化に伴う健康問題が起こってきたり、まったく違う仕事を始めたいと思っても、後継者がいなければ生活の為に続けていかなければならなくなります。
しかしその負担が大きく、続けていくのが困難だとわかったら、すぐに後継者を探し始めましょう。
身内に後継者が見つからない場合、M&Aの手法を使うことをおすすめします。
塾経営の経験者、もしくは経験はないけど、子供の学習指導に興味のある経営者に、あたなの大切な「学習塾」を引き継いでもらうことができます。
塾講師が集まらない
塾講師のアルバイトというのは、時給が高くて、人気があるアルバイトではないかと思っている方もいらっしゃるかもしれません。
一流大学に在学している学生、または卒業生だからこそできるんじゃないの?と思われるかもしれません。
しかし現在は、塾講師というのはそんなに人気のあるバイトではないのです。
塾講師の時給というのは、大体2,000円~5,000円というのが平均的な相場です。
しかし時給5,000円もらえる講師というのは、かなり人気があって実績のある人物です。
つまり平均的な時給というのは、2,000円前後ということになります。
この2,000円という数字、かなり高給だと思われたかもしれません。
しかしこの時給というのは、授業時間に対する報酬です。おおむね授業時間は1時間半から2時間です。
ということは、時給を2000円とすると、1時間半の事業時間だと3000円です。
授業前の準備、授業後の片づけは時給に換算しないという塾がほとんどなので、1日3000円、2コマ担当しても、6000円です。
そして、この授業には準備が必要です。小学生に教えるような勉強なら準備なんていらないという天才肌の方もいらっしゃるかもしれませんが、小テストの準備や、授業内容をどこまで理解しているかなどの調査、授業内容の予習などを細かくやっておく必要は絶対にあります。それをしておかないと子供が授業についてきてくれなくなるからです。
要するに、塾講師に適性のある人物とは、このような几帳面な性格でないと難しいということです。1コマの授業をするのに、5,6時間の準備時間をかけています。
準備時間も合わせて時給を換算すれば、1時間500円以下になります。
よっぽど人に教えることに喜びを感じる人でないと難しくありませんか。
一流大学に通っている学生で、塾講師のバイトをしている人はどんどん減っているのが現状です。
情報量が豊富な現代社会では、バイトの種類も多様化しています。もっと割の良いバイトを見つけることもできますよね。
一方、塾の講師は、最近ではプロ講師と言われる社会人がとても多くなってきています。
給料を払って、正社員にしないといけないということです。
しかし、なかなか個人経営者で正社員の塾講師を雇用するのは難しいのではないでしょうか。
講師がいないと塾というのは経営できませんが、人件費がかかりすぎるため、塾の経営を継続することに悩みを抱えている経営者がとても増えてきているのです。
このような場合も、M&Aを検討するタイミングになります。
健康問題で経営を続けられない
先程の項目でもお話しました通り、塾講師がなかなか見つからない悩みがあり、オーナー自らが、教壇に立っていることもあります。
経営の仕事と生徒への講義・指導を並行して行っているオーナーも大勢いらっしゃいます。
やりがいは確かにありますが、少しでも健康面に不安要素がでてきますと、続けることが難しくなります。
また、受験指導を行っていると、絶対に講師が休めない時期があります。
健康面での不安要素が出てきたらすぐに後継者探しをしなくてはなりません。
準備を早めにしておく必要があります。
学習アプリの脅威
スマホの普及に伴い、学習面をサポートするアプリも急速に発達しています。
大手予備校などの有名講師による「神授業」が手軽に受けられるのです。
それも自宅にいながら、好きな時間に受けられます。
今では、中高生はスマホを持つのは当たり前ですから、例えば通学時間などもアプリで自習ができます。苦手なところを何度も見直すこともできます。
塾に通っていると、一人の講師に対して数人の生徒になりますから、何度も同じ質問をすることはなかなかできません。
また、授業時間は決まっていますし、通うにも時間がかかります。
一方、アプリのダウンロードにかかる費用は月額数百円ほどなので、塾の月謝に比べればかなりの価格差があります。
そのため学習系のアプリは、今の時代にマッチした教育法であり、塾にとってはかなりの脅威となります。
ただ、こういった学習アプリにも欠点はあります。
このようなアプリが向いている生徒は、もともと勉強が好きで、既に良い成績を上げているような生徒が多い、ということです。
なぜなら、自由な時間に好きな場所で勉強できるというアプリの特徴を活かせるということは、いつでもどこでも勉強する姿勢を持っている勤勉なタイプということになります。
そのくらい高い学習意欲がないと、アプリを使った自宅で好きな時間に学習する方法で成績を上げるのは難しいでしょう。
学習アプリは学習塾にとって脅威ではあるのですが、学習塾の良さは、わざわざ塾に通って勉強する空間に行くということ、講師に面倒を見てもらえるということ、そして一緒に勉強する仲間・ライバルが常にいることです。その点はアプリにない強みだと言えます。
しかし、学習アプリのような存在が塾の存在を脅かし始めたのも事実。
今後の経営に不安があり、自分で乗り越えるのが困難なのであれば、M&Aを使って状況を打開できる経営者へ受け継ぐという手があります。
学習塾のM&Aでオーナーが得られるメリットとは?
心理的負担の軽減(経営、後継者)
M&Aによる事業譲渡を行えば、学習塾の名前は残りますが、経営にタッチすることは少なくなります。
熱意のある第三者へ譲渡することで、経営することのプレッシャーから解放されます。
また、親が学習塾をしているからとそのまま引き継ぐ必要もなくなり、自由な人生設計が可能になります。
金銭的メリット
株式を譲渡した場合は、オーナーに現金が入ってきます。
事業譲渡しても、会社に事業を譲渡した利益は入ってきますので、会社に資金力がつきます。
塾をたたんでしまえば(廃業を選択したら)、現金が手元に入ってくるということはありません。
M&Aによる事業譲渡を選ぶメリットは、この「現金が手に入る」ということです。
学習塾としての事業価値が高ければ高いほど、この手元に残る現金も高くなります。
新事業への挑戦や引退後の生活
塾を経営していた経験をもとに、新しい事業を始めてみたいと思っているオーナーもいらっしゃると思います。
例えば、塾で教えていた生徒の中には、有名大学に合格した人もたくさんいるでしょう。
そのときの教育方法や経験談を本にすることだってできます。
実際に、偏差値37から慶応大学合格へ導いた「ビリギャル」は、いまでも伝説になっている受験ドキュメントですよね。
短期間で有名大学に合格させるメソッドは、誰もが知りたい情報です。今までの経験がおおきなビジネスに化けることがあります。
塾経営をしているだけでは、高齢になってくると、体力的に自信がなくなってきて、塾を廃業することばかりを考えがちですが、目先を変えれば「経験」も高く売れる時代、だということです。
学習塾のM&Aを実施する際に気をつけるべきポイント3つ
準備は早めに
M&Aによるスキームは時間的にも節約できるのですが、それでも短くて4か月程度は時間がかかります。長いと1年を超えることもあります。
また、場合によってはM&Aを成功できずに、塾の経営を継続するか廃業かの2つの選択肢しかなくなる場合もあります。
なるべく余裕をもって計画を立て、M&Aの成功を勝ち取っていただきたいです。
売却する事業の強みを明確化する
学習塾の「強み」ってなんでしょうか?
すぐに思いつくとしたら、有名中学、高校、大学への合格率ではないでしょうか。
塾などの前を通ると、○○大学○○名!!など大学名と合格者数が張り紙してあります。
確かに有名大学の合格者数は重要ですが、塾に在籍するだけで合格できるわけではありません。受験生本人が頑張って勉強したから合格できたのです。
ということは、学習塾側はどのように勉強をさせたか?そのノウハウがとても重要なのです。
「ビリギャル」の例では、偏差値を30から70まで引き上げ、名門大学に合格したノウハウが書籍化されているのです。
半年近くは偏差値40前後で伸び悩んでいたそうなのですが、偏差値50に到達してからは面白いように偏差値が伸びていったそうです。「ビリギャル」では、そのためにどのような指導をしたかが事細(ことこま)かに紹介されています。
(ちなみに、偏差値30台の生徒が40台へ上がることだけでも、かなりすごいことではあります)
この合格までの道のりが「ノウハウ」です。これは高く売れます。
事業価値というのは、同業他社との差が生み出すものなのです。
どのような指導をして、有名大学に何十人合格させたかをじっくり確認して資料化しておくことをお勧めします。それが強みの明確化に繋がるからです。
譲れない売却先の条件を明確化する
大切に経営してきた「学習塾」です。どういった経営者に引き継いでもらいたいかをじっくり検討しておく必要があります。
独自の受験指導法などもしっかり理解してもらう必要がありますよね。
また、通っている生徒もそのまま引き継いでもらうことになりますから、通っている生徒たちが安心して勉強が続けられるようにしてもらうことを何よりも優先してもらわないといけません。
価格面など契約の条件となる項目のうち、絶対に譲れない部分と、逆にいくらか譲歩できる部分を明確にすることで、M&Aの交渉を円滑に進めることができます。
学習塾のM&Aを相談するなら
経営している「学習塾」のM&Aを検討する際は、M&A専業のエージェント探しから始めてください。
学習塾M&Aを実際に行った実績のあるエージェントなら、学習塾の事業価値を的確に判断して適正価格でM&Aすることを強力にサポートしてくれます。
はじめてのことなので、エージェントの探し方や選び方もわからないという方もいらっしゃるかと思います。
例えば東京なら、M&Aコンサルティング社を候補に入れて検討してみてはいかがでしょうか。
匿名での相談が可能なので、自分の状況に関して相談してみたり、事例に関する情報を得たりもできるでしょう。
学習塾のM&Aも多数経験しているので、非常に多くのノウハウを持っています。
まずは気軽に相談してみてはいかがでしょうか。
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