
現在ではインターネットの普及により、旅行代理店で個人旅行を申し込む人は少なくなっているといわれています。
しかし、新幹線とホテルの格安パックなどを販売している旅行代理店もあります。
出張や地方在住の方が、東京へ遊びに行くときなど旅行代理店でツアーを申し込む方はいらっしゃるのではないでしょうか。
団体旅行を仕切るからこそできる割安なツアーなど、旅行代理店にはまだまだ利用価値があるのです。
また、企業や学校などの団体旅行や、またライオンズクラブ、ロータリークラブ、青年会議所など、全国に支部がある団体などが記念式典を行う場合も、旅行代理店ならではの強みを発揮できます。
日本全国47都道府県から会員が集まってきますから、飛行機、新幹線のチケット、宿泊施設などは旅行代理店が一手に予約し、さらに式典の会場をおさえて、その式典の進行まで企画してくれます。
旅行代理店だからこそできることがまだまだあります。
今回は、この旅行代理店における事業譲渡について成功できるポイントについてご説明していきます。
目次
旅行代理店が事業譲渡の道を選ぶメリットとは
旅行代理店が、M&Aの事業譲渡というスキームを使うことによりどのような恩恵があるのか確認していきましょう。
ここでは、5つのメリットをご紹介していきます。
経営のプレッシャーから解放される
旅行代理店の収入源と言えば、「販売手数料」です。
航空会社、宿泊施設(旅館、ホテル)、旅行保険加入よる保険会社からの販売手数料です。
しかし、最近は、利用者がネットでダイレクトに、飛行機チケットを購入したり、ホテル比較サイトなどで、一番安い料金のホテルを探して予約してしまったりします。
航空会社も、宿泊施設も販売手数料を支払わずに、お客様を獲得できますから、ネット予約できるよう自社ホームページでも対応していますよね。
航空会社や宿泊施設が直接利用客と接点ができてしまうと、旅行代理店の出る幕がなくなってしまいます。これは業界にとっては大問題です。
大手旅行代理店なら、まだツアー企画やパック料金などで、まだまだ経営を続ける可能性はありますが、中小の規模となってくると生き残り競争に敗退してしまう代理店も増加してきています。
このような業界内で吹き荒れる向かい風に対抗するためにも、廃業をえらぶことなく、M&Aの事業売却を選んで、続けてきた旅行代理店事業を、第三者へ譲渡する傾向が増えてきています。
後継者問題の解決
先程もお話していますが、旅行代理店業界はかなり厳しい状況となってきています。
日本の経営者の平均年齢は現在60代と言われています。
旅行代理店のように、行動力が必要な事業内容だと、どうしても健康的な問題も出てきます。
早めにリタイアを考える経営者も少なくないのではないでしょうか。
しかし、リタイアを考えたのはいいけど、あとを引き継いでくれる後継者が不在という旅行代理店も増加傾向にあります。
自分の子供に同じ事業を継がせることは難しい、従業員の中から後継者を見つけるのはもっと難しいと感じておられるのではないでしょうか。
自分の代で、もう旅行代理店をたたもうかと考えているオーナーもいらっしゃるでしょう。
そんなときも、廃業を選ぶことなく、M&Aでの事業譲渡を選択した場合は、事業を第三者へ譲渡することで、後継者問題を解決できます。
事業や店舗の拡大
買い手側の目線で見ると、経営している旅行代理店をもっと事業拡大したいときには、他の旅行代理店の事業を譲り受けるという選択肢があります。
人員や顧客、取引先もそのまま引き継げますから、新規採用や営業先の新規開拓をすることなく事業を大きくできるわけです。事業拡大にともなう出費を抑えることができます。
また、店舗を増やしたいと考えたときも、既存の店舗をそのまま引き継ぐようにすれば、新規に店を出す経費も抑えることも可能です。
初期費用をおさえるということは、事業を軌道に乗せるためにもとても重要です。
まだ儲けが出ていない時期に、なるべく経費は抑えてスタートしたいですよね。
一方で売り手側にとっては、自社の旅行代理店事業だけを切り離して譲渡することも可能なので、譲渡による代金をもとに新しい事業を始めることもできますし、既存の他事業へ資金投入することもできます。
従業員の雇用安定や待遇改善
廃業することを選択してしまうと、せっかく長年勤務してくれていた従業員を解雇することになってしまいます。新しい勤務先を探す必要もあります。
事業を畳むための様々な手続きもあるのに、新しい勤務先を探すこともしなければならないので、非常に大変です。
一方、M&Aで事業譲渡のスキームを選んだ場合は、契約次第では新しい譲渡先に従業員も一緒に雇用してもらうことも可能になります。わざわざ新しい勤務先を探す必要がありません。
また、事業譲渡を行う際には、譲渡する条件として、従業員の雇用継続だけでなく待遇改善を盛り込んでおくことをおすすめします。
旅行代理店の業務というのは、かなり特殊な内容になってきます、また旅行に関する資格や、海外ツアーを担当している場合、語学が堪能なスタッフも在籍しています。
それら優秀な従業員は事業価値を高めてくれます。旅行代理店事業と従業員は切っても切れないものですから、全ての社員をそのまま雇用して貰うようにしましょう。
慣れた職場で、そのまま勤務し続けることは従業員にとっても助かります。その上、待遇も改善されたら、職場から離れていく従業員はいなくなります。
譲渡による現金獲得
「事業や店舗の拡大」のところで少しお話しましたが、事業を第三者へ譲渡することで、現金が入ってきます。
もしも廃業を選んでいては、現金が入ってくるということはありません。
事業譲渡に成功して現金が入ってくるということは、続けてきた旅行代理店の経営が成功したということです。
自分が経営してきた事業を譲渡することに少し寂しさはあるかもしれませんが、譲渡できたということは、経営手腕が認められたということなのです。
また、自営業を営んでいる方には、リタイアしても退職金というものはありませんから、事業譲渡で得た現金を「退職金」代わりにすることができます。
旅行代理店の事業譲渡の事例
事例1:旅行代理店を大手IT企業が買収した例
IT大手の楽天が、ワールドトラベルを買収しました。
これにより楽天のサイトにおいて、旅館や新幹線、航空チケットを予約することが可能となりました。
楽天の集客力だとあらゆる事業に参入できますよね。
すでに銀行、保険、証券などネットで申し込めるあらゆるサービスを提供しています。
旅行代理店業務にも目をつけたというわけです。
事例2:旅行代理店大手が外資系旅行代理店を買収するケース
JTBがダイナスティ・トラベル・インターナショナルを買収しました。
ダイナスティは、中間層、富裕層に顧客基盤を持っています。
最近は、アジアからの海外旅行客が日本にも押し寄せていますよね。
中国人の富裕層からも、日本への旅行は人気です。
この状況に、JTBが目をつけて、ダイナスティを買収したわけです。
大手代理店が外資系と手を組むことにより、ダイナスティのブランド力、商品造成力、顧客管理力を活用したアセアン全域の市場獲得に向けた事業戦略を進めようとしています。
今回ご紹介している2つの事例は、大手ばかりですが、実際に行われている旅行代理店の事業譲渡は、中小企業に多くみられています。
規模が同じくらいの旅行代理店同士がM&Aを行うことにより、お互いの事業を成長させるというメリットもあります。
旅行代理店の事業譲渡の事例から見る注意点
旅行代理店を利用するメリットを顧客に提示できているか
ネットで旅の予約をする人が増えてきてはいるのですが、依然として、旅行代理店を利用して予約している人もいます。
旅行代理店をのぞいてみると、お客さんが大勢順番待ちをしている店舗もあるのです。
どんな人達が利用しているのでしょうか。
それは、ご高齢のお客様です。
インターネットにどうしても慣れることができない年齢層です。
しかし、お仕事はリタイアして自由な時間は増えています。旅行にでも行くかという方々は大勢いらっしゃるのです。
そういうお客様は、出張などのなるべく安く済ませたいという旅ではなくて、ちょっとリッチな旅を望んでいるのです。
かなりの上客といえるのではないでしょうか。
あと、旅行代理店を利用するといえば、団体客です。
企業や学校が申し込む団体旅行です。研修旅行、修学旅行などがあります。
今では公立高校でも、希望者には海外旅行を行っている高校もあります。
少子化となっているからこそ、子供の行事にお金をかける親が増えているからなのです。
こうやって見てみると、まだまだ開拓できる営業先はあるのではないでしょうか?
M&Aでの事業譲渡を検討したら、まず新規顧客を開拓しておいてほしいのです。
見込み客も含めて、営業先が多ければ多いほど、その事業は必ず高く売れます。
譲渡先の事業との親和性はあるか
楽天がワールドトラベルを買収したように、M&Aでの事業譲渡において、企業が行っている事業内容との相性はとても大切です。
M&Aは企業間の結婚と言われているのですから、事業の相性は重要ですよね。
事業譲渡とは、譲渡が完了して終了ではありません。その後、買収した事業を成長させてこそ成功したといえるのです。
買収した後に、使える事業でなくてはいけません。
また、事業譲渡を考えている企業側も、せっかく育てた事業を永く続けてもらう必要がありますよね。
高く譲渡するためにも、譲渡をするその日まで、大切に事業を育てておく必要があります。
長い時間が掛かる場合もある
企業間でM&Aでの事業譲渡を行う場合、話が進んでいくと、最終段階では資料を用意する必要がでてきます。
少なくとも下記の資料をそろえなくてはいけません。
・監査基準日現在の試算表を会計事務所に準備してもらう
・試算表に関して内訳明細書も準備する
・定期預金に関しては、銀行に残高証明書を作成してもらう
(銀行によって日数を要しますので事前に依頼しておいてください)
・土地建物など資産に関する権利書を準備しておく
・株主総会、役員会議事録はすぐ見られるようにしておく
・総勘定元帳、補助元帳などもすぐに見られるよう準備する
・生命保険も監査基準日の解約返戻金を生命保険会社に計上してもらう
・小切手、手形(現物)と手形帳も照合して説明できるようしておく
M&Aでの事業譲渡を検討したら、役員、共同経営者などに、すんなりと事業譲渡が進むように根回ししておくこともお忘れなく。
事業の将来について話し合っておくのもおすすめです。
大体、事業譲渡が完了するのに、早くて4,5か月、長くなってくると1年くらいかかることも考えられます。
そろえる資料が多いですし、話が進んでいくにつれて煩雑な作業が増えてきます。
普段の業務と並行しておこなうのですから、どうしても時間がかかります。
日ごろから、財務データなどは確認しておく必要があります。いつでも手に取れるようにファイリングしておいてください。
資料などをわかりやすくしておくだけでも、スピーディーに事業譲渡を完了することができます。
事業譲渡は人対人
譲渡される事業に含まれるものは、従業員だったり、顧客だったりと様々です。
旅行代理店の業務というのは、人と人のつながりで成り立っているのではないでしょうか。
事業譲渡を進める中で、資料の提出なども重要ではありますが、本当に大切なのは、事業譲渡する経営者同士がどれだけお互いの事業内容を理解できるかにあります。
せっかく素晴らしい事業価値があったとしても、それが先方に伝わらないことには、事業が希望価格で売却できないことになります。
せっかく育てた事業を、適正な価格で譲渡するためにも、経営者自身が自社の事業の強みを理解しておく必要があります。
事業の本当の魅力と向き合うことがとても重要なのです。
旅行代理店の事業譲渡を行うなら
M&Aでの事業譲渡を検討したら、旅行代理店のM&Aの実績があるエージェントをさがしてください。
譲渡先を探すより、まずエージェント探しから始めることが事業譲渡を成功させる秘訣です。
旅行代理店M&Aの実績があるエージェントでしたら、旅行代理店の事業内容に関しても知識があります。
旅行代理店事業も特殊な内容ですから、事業内容を把握してくれているスタッフが在籍しているとスムーズに事業譲渡完了まで進んでいきます。
日ごろの旅行代理店業務も続けながら事業譲渡をしなくてはいけませんし、ほとんどの経営者が事業譲渡に対しては初心者だと思います。
経験豊富なエージェントにまず相談してみることから始めてみてください。
当サイトではM&Aコンサルティング社をおすすめします。
旅行代理店の事業譲渡も多く経験していますので、様々な質問にも応えてもらえるでしょう。
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