
「会社を買う」ということが、サラリーマンでも実現可能となってきました。
今までは、大手企業が対象企業を買収して傘下にいれるということが多く行われてきて、会社を買うなんて一般人には無理だと思われてきたのですが、最近は個人が会社を購入することが増加する傾向となっています。
なぜこのような状況になってきたのでしょうか?
一番の理由として考えられるのは、後継者不足により身内に会社を引き継ぐことが難しくなり、第三者へ事業承継する傾向が多くなったことが挙げられます。
今回は、システム開発会社のM&Aを例にとって、会社の売却や購入についてご説明していきます。
目次
システム開発会社のM&A
システム開発会社のM&Aについてお話する前に、まずM&Aとは何か?そのスキームの中から事業譲渡と株式譲渡のメリットについてご説明します。
M&Aとは
M&A(エムアンドエー)とは『Mergers(合併)and Acquisitions(買収)』の略です
大手企業がある会社を買収して子会社化した、同業者同士が吸収合併した、といった報道を聞かれたこともあるのではないでしょうか。
M&Aというビジネススキームは、大手企業ばかりのものではありません。中小企業や個人でこれから事業を始めようと思っている方々にもぴったりなビジネスモデルなのです。
M&Aには大きなメリットとして、新しく事業を始める際の初期費用を抑えられるという点があります。
すでに営業を行っている企業をそのまま手に入れることができますから、新しく事務所、店舗の賃貸契約を結んだり、従業員を雇用したりという手間が省けるのです。
その上、顧客も同時に手に入れることができます。
事業譲渡や株式譲渡を行うメリット
先程の項目でもM&Aのメリットとして、初期費用が抑えられる点を一つあげてみました。
今度はもう少し掘り下げるために、「事業譲渡」と「株式譲渡」というM&Aの中でもポピュラーなスキームについてメリットについてお話していきます。
「株式譲渡」とは、株式を51%以上所得して経営権をとる場合ということを指して、それ以上過半数の株式を所有する場合は、資本提携とします。
この株式譲渡の大きなメリットは、手続きがシンプルであることです。
なぜなら、株式の名義を変更するだけで、会社の経営権が手に入るからです。
大企業によるM&Aではこの株式譲渡が行われることが多くあり、株式の過半数を手に入れて、子会社化にしたという報道を耳にされたこともあるのではないでしょうか。
中小企業において、この株式譲渡にメリットがあるのかどうかは少し考える必要があります。その理由として、中小企業の株価というのがはっきりした金額ではないことが考えられます。
上場企業ですと株価はすぐに判明しますが、中小企業の場合の株価は財務データから計上する必要があります。純資産をもとに計上されるのですが、将来の成長度は計上にははいりませんし、決算書類だけでの計上は、その企業の真の価値を測れないというデメリットもあるのです。
買い手企業にとっては、大きなデメリットはないかもしれませんが、売り手側には、正確な計上をして、将来の事業価値まで算入可能かどうかを確認する必要がでてきます。
「事業譲渡」に関しては、事業の全部、または一部を譲渡することも可能なところがまず挙げられる大きなメリットです。
買い手側において、引継ぎ対象とする負債を選ぶことができるため、対象会社の簿外負債などを負う可能性が低くなります。取引上「のれん」が発生する場合は、適正価格であれば税務上償却が認められて、節税効果があるなど多くのメリットがあります。
しかし、事務所の賃貸借契約、従業員との雇用契約など一つ一つ契約をし直す必要があるところが少し煩雑です。
システム開発会社がM&Aを行うケース
M&Aについて基本的なことをご説明してきましたが、この項目では、なぜシステム開発会社がM&Aを行うことになるのか?という理由についてご説明します。
後継者がいないが引退したい
システム開発という仕事は、技術面だけでなく、営業力も必要です。
ユーザーとの細かい打合せを重ねることで、お互いに納得したシステムが出来上がり、納品ということになります。
打合せしたにもかかわらず、ここを変更してほしい、最初の指示とは180度違う内容の修正を要求されることもあります。それなのに、納期を伸ばすことも、金額を上げてくれることもありません。モンスタークライアントとも言われるのですが、このような顧客とも対応していく必要がありますよね。
このようなトラブルが多い仕事を、自分の子供に継がせることに抵抗のある経営者は多いのではないでしょうか。また、従業員の中から後継者を選抜すると言っても、技術にたけた社員であっても、営業力も備えている人材は少ないです。現場での仕事はできても、経営面まで対応できることは難しいですよね。
経営を任せたいとお願いしても、対応できずに退職してしまう危険性が出てきます。大切な技術者を失ってしまうことになります。
このようなことから、自分の代で会社を廃業しようと考えているオーナーはとても多いのです。
しかし、廃業を考える前に、このM&Aという手法を検討してみていただきたいと思います。
親族、社内だけでなく、社外の第三者へ事業を引き継ぐことで、会社をそのまま存続することができます。せっかく育てた事業を引き継いでもらって、大きく育ててもらうこともできるのです。
M&Aによって現金を得たい
会社を廃業してしまっていては、様々な費用がかかります。これ以上経営する必要はないのですが、廃業って意外にお金がかかるのです。
たとえば、
・設備、備品、什器などの売却、売却できないものは処分費用がかかる
・従業員への退職金を支払う、新しい職場の斡旋
・廃業に関する手続き(各種申請業務)を行政書士、司法書士に依頼するときの手数料
など、あらゆる費用と時間がかかります。
一方、M&Aを選択すると、会社を売却したことにより手元に売却代金が入ってくるのです。
自営業者には、退職金というものは共済などに入っておかない限りありませんよね。この会社を売却した金額は退職金代わりとなります。リタイア後の生活費に充てることもできますし、新しい事業を始める資金にすることもできます。
健康問題で経営を続けられない
経済産業省の調査によれば、2025年までに70歳以上のリタイア適齢期を迎える中小企業社長は、245万人と言われているのです。2025年と言えば、そんなに先の話ではありません。
この調査からわかることは、会社の代表者に60代以上が多いということです。
高齢になるとともに出てくるのが「健康問題」です。高齢になって健康問題が出てくると、即座に経営を継続することが困難になってきます。ゆっくり休養して、病気を完治させる時間や精神的な余裕がなくなってくるからです。
病状がかなり進んでから明るみに出て、急に会社をしめることにもなりかねません。
このような中小企業は今後増加傾向にあると言われています。
日ごろから健康に気をつけるだけでなく、M&Aというビジネススキームをつねに検討しておく必要があるのです。
どうしても自営業者は、自分のことを後回しにして、経営に専念してしまう傾向があります。本当に会社が大切だと思ったら、それと同じように自分の体を大切にすることがとても大切です。自分の健康と会社の経営は同じくらい重要なことなのです。
このM&Aを検討する年代ですが、60代では遅いです。40代からいずれは第三者へ事業を引き継ぐこと言うことを念頭に入れておいても早すぎるということはありません。なるべく早くから、健康問題とM&Aについて検討しておいてください。
事業を成長させたい
事業を成長させるためには、資金投下が必要となってきます。しかし、新しく事業資金を用意することは、中小企業にとって難しい課題となっています。
このような時に、M&Aで事業の一部を譲渡した場合、受け取った譲渡金額を他の事業に資金投下することが可能なのです。
金融機関から追加の融資を受けるという面倒な手続きもなく、借入金を増やすこともなく事業資金を調達する方法が、このM&Aです。
一部の事業を手放すことにはなりますが、そのまま続けていては不振だった事業も、社外の第三者が引き継ぐことで、生き返って業績が上がることがよくあることです。
事業を切り離すことを検討したときは、M&Aというスキームを取り入れることをお勧めします。
システム開発会社のM&Aでオーナーが得られるメリットとは?
この項目では、実際にM&Aを行うことで得られるメリットについてお話していきます。
ここでは3つのメリットをご紹介します。
心理的負担の軽減(経営、後継者)
中小企業の経営者では、自宅などの個人資産を抵当にして金融期間から事業資金を借り入れている場合もありますが、M&Aで事業を譲渡する場合は、譲渡条件によっては、この個人保証を外すことが可能です。個人保証も一緒に買い取ってもらうわけです。
買い手企業の経営者も、負債額を含めても手に入れたい事業はあります。
また、多くの借入金を残したまま、身内に事業を引き継いでもらうことも抵抗がある経営者も多くいらっしゃるでしょう。後継者にとっても、事業を引き継がなければならないというプレッシャーから解放されます。
現経営者にも、後継者にもすべての人の心理的負担を軽くしてくれるところが、M&Aの大きなメリットと言えます。
金銭的メリット
前述の通り、廃業を選んでしまうと、一見楽そうに見えて、手続きと出費はかなり多くなってしまいます。
一方、M&Aを選択すると、出費を抑えることができて、譲渡した金額を受け取ることもできるのです。
出費を抑えて、入金が多くなるということは、M&Aを選択したほうが金瀬的なメリットを多く受け取ることができるということになります。
新事業への挑戦や引退後の生活
前述しました通り、譲渡金額を受け取ることで、新しい事業への資金投下、またリタイア後の生活にその譲渡金額を充てることもできます。
お金の問題だけでなく、今まで、会社経営につぎ込んできた、時間と情熱を新しい生活にそそぐこともできるのです。
システム開発会社のM&Aを実施する際に気をつけるべきポイント3つ
この項目では、M&Aを成功へと導くために気をつけたいポイントを3つご紹介していきます。
準備は早めに
M&Aを完了するまでに、大まかに下記の7項目が必要となってきます。
①事業譲渡する相手を見つける
②譲渡先候補から意向表明書をもらう
③基本合意書の締結
④デューデリジェンスの実施
⑤契約書の締結
⑥株主総会の承認
⑦引継ぎを行う
そしてこの項目の中でも最大の山場と言われているのが、④のデューデリジェンスです。
デューデリジェンスでは、基本的には以下の書類をそろえておく必要があります。
・監査基準日現在の試算表を会計事務所に準備してもらう
・試算表に関して内訳明細書も準備する
・定期預金に関しては、銀行に残高証明書を作成してもらう
・土地建物など資産に関する権利書を準備しておく
・株主総会、役員会議事録はすぐ見られるようにしておく
・総勘定元帳、補助元帳などもすぐに見られるよう準備する
・生命保険も監査基準日の解約返戻金を生命保険会社に計上してもらう
・小切手、手形(現物)と手形帳も照合して説明できるようしておく
上記の書類は、買い手側にとって重要なものですから、徹底的にチェックされます。
できれば、上記の書類をそろえるときは、買い手側の立場になって作成されることをお勧めします。
これらのデータを揃えておいて、説明できるようにしておくためには、財務データなどをいつも手元にファイリングして見ることができるようにしておく必要があります。
最低でも3か年の決算書、税務申告書は必要となってきますから、日ごろから経理スタッフと打ち合わせをするなど、会社の内情を把握しておく必要があるのです。
すべての項目を完了するには、6か月は必要となってきます。準備期間も含めたら1年はかかると考えておいてください。
1日でも早い時期から準備を始めることをお勧めいたします。
売却事業の強みを明確化する
現在、借入金があり事業を経理上は赤字になっていたとします。このような状況なら、安く買いたたかれてしまうのではないか?と売り手側としては、不安になることもあるかもしれません。
しかし、その借入金の内訳が、新しいシステム開発につぎ込む資金であったり、優秀な人材を確保するための人件費に使っているものであったりするならば、それは「負の借金」ではないということになります。
今、これだけの借入金はあるが、新しいシステムを開発していて、今までの顧客に対しても新しいサービスを提供することができるということをしっかり買い手にアピールすることが重要です。将来の売り上げに関しても、買い手側企業に理解していただき、譲渡金額にしっかり加味してもらうのです。
決算書、税務申告書での過去の売上、実績を示すことも必要ですが、将来の事業計画についてもしっかり説明して成長度をアピールできるようにしておいてください。
譲れない売却条件を明確化する
条件を明確にするためには、なぜ、会社を売却することになったのかを何度も確認する必要があります。
売却の目的を大きく2つに分けると、「売却条件を重視する」あるいは「会社の発展や従業員にとって一番よい相手先を選定することを重視する」になります。
売却を考えるにあたって優先順位をつける項目としては、
①譲渡価格
②スケジュール
③オーナー社長の残留の有無(引き継ぎ期間)
④従業員の処遇
⑤買い手企業とのシナジー(相乗効果)
⑥M&A後の経営方針等
100%理想のM&Aというのは現実的に難しいので、譲れる点、譲れない点を明確にしておく必要があります。
システム開発会社のM&Aを相談するなら
M&Aを相談するなら、まず、M&Aエージェント探しをしていただきたいのですが、実際に年に何件くらいのM&Aを成立させているのか確認する必要があります。
そしてシステム会社のM&Aの実績があるかどうかが非常に重要です。
業界に関しての知識と実績があるエージェントをまず見つけることが、M&A成功の秘訣なのです。
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