
一昔前までは、M&Aといえば大企業同士が行うことが多かったのですが、最近は中小企業を中心にM&A件数が増加傾向にあります。
この理由として、後継者不在問題、少子化に伴う若手労働者の不足などが関係しています。ただ、ここまでM&Aが一般化した要因には、M&Aが特別な手法ではなく、誰にでも実行するチャンスがある身近なものだという認知が広まったことも関係しています。
M&Aを完了することで、後継者不在で廃業しかなかった企業が経営を続けることができたという話や、赤字経営だった会社が売却できたという話がどんどん出てきているのです。
今の時代の中小企業経営者にとって「使いやすいもの」となった「M&A」について、今回はシステム開発会社の事業譲渡についてご説明していきます。
目次
事業譲渡とは何?
わかったふりをしていたけど、結局「事業譲渡」ってどういうこと?という疑問をこの項目ではお答えしていきます。
事業譲渡とは、会社の事業の全部または一部を売買するM&Aの手法です。
事業譲渡は会社の事業の部分的な譲渡なので、会社の財産のうち譲渡する部分と残す部分を明確にする必要があります。
ですから事業譲渡では個々の資産や契約の移管が必要になります。
ここでは、事業譲渡のメリットとデメリットについてもご説明しておきましょう。
メリット
引き継ぐ従業員や契約が限定できて簿外負債を引き継ぐ必要がない
デメリット
会社の財産のうち譲渡する部分と残す部分を明確にするため手続きが煩雑になりがち
システム開発の事業譲渡を行う前に知っておくべきポイント
事業譲渡とは何かということをご説明してきて、次に事業譲渡を行う前に、知っておくべきポイントについて3つご紹介します。
事業譲渡は専門家を頼ったほうが良い
M&Aというのは、日常的に行われる取引ではありません。
売り手企業にとっては、何十年も経営を続けてきたけれど、M&Aを行うのは初めてですという企業は珍しくないということです。M&Aを社内でチームを立ち上げるなんて余裕のある企業はほとんどないと言えます。
そのためM&Aを確実に完了させるために、M&Aエージェントを選定する必要があります。M&Aのプロを起用するのです。
M&Aエージェントを起用するメリットとは
まず、M&Aエージェントの業務内容とはどんなものでしょうか。大きく2つに分けることができます。
一つは「交渉」です。M&Aには必ず交渉相手が存在します。交渉を円滑に進めるためにアドバイスを行って、時には代理人として実際の交渉業務も行ってくれます。
エージェントは、依頼人の目的、ゴール、条件等を理解して交渉項目を優先順位付けして依頼主が短期間で最大限の結果を得られるよう支援してくれるのです。
エージェントの業務内容の二つ目は、「調査・手続き」に関する支援を行うところです。
後でお話していく「デューデリジェンス:買収監査」や官公庁への届け出と言った公的手続きなど、M&Aを実施する上で必要なプロセスが多数あります。そういった作業を行うことをサポートしてくれて、依頼主の負担を最小限にすることが可能です。
何度かM&Aを経験している企業においても、社内のM&Aチームとは別に社外のM&Aエージェントに依頼することを必ず行っています。
M&Aとは、知識と経験が重視される世界です。システム開発会社のM&Aについて実績があるM&Aエージェントを見つけることをお勧めします。
事業価値が高くても譲渡先に伝わらなければ意味がない
営業担当と技術者がそれぞれの持ち場をきっちり理解して仕事を進めることができるという体制が社内で出来上がっているシステム開発会社というのは、非常に事業価値が高いといえます。
システムを納品した後で、ユーザーとのトラブルが全くないというシステム開発会社はほとんどいないでしょう。しかし、トラブルがあったとしても、社内でのサポート体制がきっちりしていれば、ユーザーとの対応に不安はありません。
もし、買い手企業がシステム開発とは全く違う業種であったとすれば、技術者と営業担当がお互いに理解してあって仕事をする体制になっていれば、新しい経営者に交代してもお互いの事業を理解することが早くできますし、買収した会社との意思疎通が図りやすくなるでしょう。
素晴らしい事業価値ではありますが、このことを買収した後にわかっていたのでは、売り手側にとっては少し損です。事前にしっかり伝えておく必要があります。
このようななかなか伝わりにくいけど、大きな事業価値というのはどの会社にもあります。M&Aを検討して、買い手企業が見つかった時には、この伝わりにくいけど素晴らしい事業価値についてしっかりアピールしておくことが必要です。
事業譲渡を行う目的があやふやだと譲渡後に後悔しやすい
M&Aを「売り上げや利益を増大させたい」とった財務的な観点だけで進めたら、その結果、財務面以外の目的が曖昧だったためにM&Aを失敗してしまった…という事例は多くみられます。
M&A完了後に想定通り事業を発展させて利益を創出するには、ベースとなる経営目標が根本にあり、その達成のためにどうするかという意思決定に際して判断軸を明確にしておくことが非常に重要なのです。
M&Aによるシナジーを実現するためには、いつまでにどのようなことを実現したいのか?というM&Aを行う目的を明確にして、自社内で繰り返し共有することが必要となってきます。
これが、買い手側に求められる目的設定です。
一方、売り手側においても、なぜ事業を譲渡することになったのか?ということを常に経営者が認識しておくことが必要です。
事業を譲渡するにあたり、高く事業を譲渡したい、後継者がいなくて事情を譲渡したい、そろそろリタイアしたいなどいろんな希望があると思います。その希望を実現させるためには、どのようなことをするべきか、ということを明確にしておくことが大切です。
このM&A目的があやふやだと事業譲渡後に「やっぱり譲渡するんじゃなかった」という後悔することにもなりかねません。
システム開発の事業譲渡を行う手順
この項目では、実際に事業譲渡を行う手順についてご説明していきます。
M&A完了まで7つの項目があります。長丁場にはなりますが、一つ一つを丁寧に取り組めば、M&Aを成功させることができます。
事業譲渡する相手を見つける
買い手を探す前に、まず頼りになるエージェントを見つけることがM&A成功への近道と言われています。
システム開発会社のM&Aを実際に行ったことのある、業界事情に詳しいエージェントを探しましょう。そして、事業譲渡する上での条件について徹底的に話し合いをします。
買い手を見つけるうえで、特に注意する点は
・資金力があって、従業員の雇用が継続できること
・ある程度業界に理解があり、スピーディな意思決定ができること
・お互いの事業内容に互換性があり、相性が良いこと
などが挙げられます。
譲渡先候補から意向表明書をもらう
この項目での注意点は、早い段階で1社に絞り込んでしまわないことです。
今は、買い手側が多くて、売り手市場なのです。
先程の項目で「買い手を見つける上での注意点」でもお話ていますが、本当にこちらの条件を受け入れてくれるか、また、その資金力があるのかどうかをじっくり検討する必要があります。
この会社にする、と決めたら、まずは書面で意向表明書をもらいましょう。
口約束でも民法では契約は成立しますが、かならず後でもめないように、「買いたい」という意思を書面でもらっておくようにします。
基本合意書の締結
ここでは、買い手側から「買いたい」意思表示である意向表明書を受け取って、今度はもう一度お互いに事業譲渡の意思があることを書面でもって表示します。同じような内容を何度も書面にするんだなぁと思われるかも知れませんが、言った、言わないのトラブルを防ぐためです。
今までは複数の買い手希望者と対応してきたのですが、ここからは、買い手と売り手の1:1の交渉が始まります。
お互いに合意をしていますが、これで事業譲渡が決まったわけではありません。
デューデリジェンスの実施
この項目が事業譲渡の山場と言えます。
スムーズに進んでいても、この「デューデリジェンス」の段階でトラブルが起きやすいのです。
書類を準備して、その内容について説明することになりますので、準備がとても重要になってきます。デューデリジェンスにおいて必要書類を書き出してみますと、基本的には以下の書類をそろえておく必要があります。
・監査基準日現在の試算表を会計事務所に準備してもらう
・試算表に関して内訳明細書も準備する
・定期預金に関しては、銀行に残高証明書を作成してもらう
・土地建物など資産に関する権利書を準備しておく
・株主総会、役員会議事録はすぐ見られるようにしておく
・総勘定元帳、補助元帳などもすぐに見られるよう準備する
・生命保険も監査基準日の解約返戻金を生命保険会社に計上してもらう
・小切手、手形(現物)と手形帳も照合して説明できるようしておく
買い手側としては、事業を譲渡された後には、引き続き経営していかなければいけません。
本当に価値のある事業なのかどうかを、財務諸表類、税務申告書、契約書関係から読み取っていきます。
これらの書類は、買い手側にとって重要なものですから、買い手側から人間が来て、徹底的にチェックされます。
できれば、上記の書類をそろえるときは、買い手側の立場になって作成されることをお勧めします。
契約書の締結
最後の山場といえる「デューデリジェンス」が無事済めば、あとは契約書を交わすだけです。
株主総会の承認
これが最終関門です。
大企業だと株主も大勢存在しますが、中小企業だと株主=社長という場合も多いですし、登記されている役員も身内が兼任していることが多いのではないでしょうか。
日ごろから、今後の経営について役員会議を行っておいて、事業の譲渡について検討しておくことをお勧めします。
さきほどご紹介したデューデリジェンスでの必要書類についても日ごろから役員、経理担当を交えて打ち合わせを重ねることで書類も充実させることができます。
事業譲渡が終了するまで数か月、半年くらいは必要です。しかし普段から経理面や今後の経営について把握して、話し合いをしておくことで、スムーズに事業譲渡を行うことができます。
引継ぎを行う
事業譲渡するときに、買い手側と交わした条件の中に、従業員の雇用継続の項目がある場合は、経営者も新しい譲渡先に出向いて、引継ぎを行う必要があります。
引継ぎに関して、譲渡の条件に盛り込んでくる買い手側も多数おられます。
これは従業員だけでなく、取引先が新しい譲渡先との関係性をうまく保てるようにも引継ぎは必要です。
譲渡してしまったらもう終わりだとおもわずに最後まで、従業員や取引先の為にも引継ぎがあることを想定しておいてください。
また、M&Aが完了したら引継ぎと言えでも会社には残りたくないと思ったら、ちゃんと残りたくない意志はあらかじめ譲渡の条件にも盛り込んでおくことです。
システム開発を事業譲渡するならまずは相談
M&Aを成功させるためには、オーナーが単独で行う必要があります。
そのために、細かいM&Aに伴う業務をサポートしてくれるM&A専業エージェントの存在は不可欠になってくるとお話しました。
特に、システム開発会社のM&A実績があるエージェントを見つけてご相談されることがおすすめです。
業界の知識が豊富なエージェントですと、経験と知識が必要なM&Aの成功について強力にサポートしてくれるでしょう。
システム開発会社のように、ユーザーの要望に沿ってシステムを開発することになりますから、守秘義務などを遵守しなければなりませんから、特殊な業界と申し上げても過言ではありません。
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