
「中小企業の事業売却を検討しているけれど、何から始めてよいか分からない」
「だれに相談したらよいかも分からない」「実際の事例を知りたい」
こんな悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、中小企業のオーナーが事業売却を行うのはどんなときなのか、実際の事例と、事業売却を行ううえで注意したい点などを解説します。
中小企業の事業売却を検討するうえで、ぜひ参考にしてください。
中小企業の事業売却を行うのは、こんなとき!
中小企業のオーナーが事業売却を行うのは、次のようなときが多いです。
- 業績が思わしくないとき
- オーナーがリタイアしたいとき
- 別の事業に注力したいとき
業績が思わしくないとき
中小企業のオーナーは、業績が悪化してきたときに、経営改善のための資本が注入できずに事業売却を選ぶことがあります。
事業売却により、自社よりも資本力や企業規模の大きな買い手の力を借りれば、中小企業では難しかったテコ入れが実現できる可能性があるためです。
ほかにも、大手企業の傘下に入ることで、生き残りや信用力の強化などを図るケースもあります。
または、複数の事業を多角的に経営している場合は、採算の取れない事業のみを売却して売却益を他の事業に充て、事業の選択と集中を行うという選択肢も可能です。
オーナーがリタイアしたいとき
中小企業のオーナーが、60代後半を迎えたり病気が発覚したりなどの事情でリタイアを考えたときに、事業売却を選択することも多いです。
廃業という選択肢もありますが、その場合は築き上げてきた事業は消滅し、従業員も路頭に迷います。
事業に将来性があっても、土地や設備、建物などは処分価額で叩き売られ、わずかな金額しか手元に残りません。
しかし、事業売却を選べば、オーナー変更後も事業は消えずに成長・展開を続けます。
従業員も職を失うことなく、新しいオーナーに資本力があれば、処遇や福利厚生が売却前より改善する可能性もあります。
さらに、事業売却の方法によっては、事業に将来性があれば一定額の現金が入手できるケースもあります。
売却益が、リタイア予定時期までにもらえる役員報酬の総額を超えるなら、早期リタイアを選択して第二の人生を謳歌するという選択肢もよいでしょう。
別の事業に注力したいとき
オーナーが比較的若い場合、新しい事業にチャレンジしたいために現在の事業を売却するケースもあります。
たとえば、ラーメン業界など流行の変遷が激しい業界の場合、ブームを利用して事業を拡大し事業価値を最大化した後に、高値で事業売却しようと考えるオーナーもいます。
良いタイミングで事業売却できれば、売却益を新しい事業に注ぎ込むことができ、その繰り返しで利益を出し続けることも可能です。
また、現在の事業の見通しが悪いため、事業売却によって事業の選択と集中を行うケースもあります。
売却益を成功している別の事業に注ぎ込むことで、コストや人員の効果的な活用が可能です。
中小企業の事業売却の事例を見てみよう
それでは、中小企業における事業売却の事例を紹介します。
事業売却により、小規模な会社が後継者問題を解決できた事例1
A社は、11名の従業員を抱える、1975年に創業した中小企業です。
消防・防災関連設備の設置工事などを行っており、規模は小さくとも一定の売上を保持できていました。
しかし、オーナーが60代を迎えたとき、子どもは薬剤師として別の人生を歩んでいたため、後継者問題に悩むことになります。
従業員などへの承継も考えましたが、同社の資産額は約1億5千万円と、従業員個人が買い取ることは難しい現状がありました。
そんな中、オーナーはM&Aを活用した事業承継の方法を知り、M&Aの仲介会社に相談、事業売却という道を選びます。
売却の条件に、現従業員の雇用継続と、引き継ぎ期間はオーナーも代表権なしの役員として会社に残れることなどを挙げ、候補先を選定しました。
そして、不動産管理会社が売却候補先に挙がります。
買い手にとっても、現在の不動産管理事業に、消防・防災関連設備の設置工事が加われば、シナジー効果が見込めると期待できたからです。
事業売却の結果としては、売却後も売却前の業績を保つことができています。
従業員に状況を説明する時には、動揺や心配が多少は見られましたが、売却後に全従業員の雇用継続が実現した点や、処遇の変化もなく買い手が従業員を大事にしている点、売却後のシナジー効果などから、現在では従業員の心配も解消されました。
さらに、取引先や金融機関に対しても、売却の経緯についてしっかり説明した点と、前オーナーが会社に残っている点を含めて評価されています。
事業売却により、小規模な会社が後継者問題を解決できた事例2
B社は、40名の従業員を抱える、1963年に創業した貨物の運送業者(中小企業)です。
東京や茨木、大阪などを主な取扱地域としています。
オーナーが60代を迎え、子どもは他の業界で働いていたため、一時期は甥への事業承継を検討します。
しかし、当時は貨物運送に関わる法改正が進行しており、事業の継続とさらなる発展のためには、同族経営に頼るのではなく、専門知識を備えたオーナーが必要だとも思っていました。
その後、商工会議所に相談した結果、オーナーは事業売却による事業承継を選択します。
ところが、当時の運送業界を巡る厳しい状況などから、数社と交渉はしたものの、すぐには成約まで進みませんでした。
検討開始から2年後、北関東の同業者への事業売却が、全従業員の雇用継続とともに成立しました。
事業売却により、買い手にとってもサービス圏の拡大というシナジー効果が生まれ、売却前の業績を保持することができています。
中小企業におけるその他の事業売却事例
2つの事例にあったように、中小企業のオーナーにおいては、売却額よりも従業員の雇用継続を優先する傾向があります。
また、中小企業白書によれば、60代以上のオーナーが経営する中小企業の約半数が後継者不在の問題で悩んでいるため、事業売却においても後継者問題に関する事例が多いです。
それ以外の事業売却事例も、箇条書きで紹介します。
事例3:
売り手:金属加工業(資本金1,000万円程度)/売却目的:後継者不在
買い手:機械部品加工業(資本金1,000万円程度)
買収目的:メインとなる事業の取得による、下請け体質からの脱却
事例4:
売り手:電子部品卸売業(年商2,000万円・従業員1名)/売却目的:事業撤退
買い手:金属部品加工業
買収目的:売り手の顧客と販売拠点の獲得
売り手は小規模な赤字会社ではあるが、大手メーカーとの取引口座を有していたのが、大きなセールスポイント
事例5:
売り手:携帯電話フランチャイズ業
売却目的:上場企業の傘下入りによる信用力強化
買い手:情報通信機器等販売業
買収目的:新商品販売による既存事業強化
事例6:
売り手:医薬品・健康食品などの製造販売業
売却目的:大企業の傘下入りによる収益力の強化と事業発展
買い手:青汁などの製造販売業
買収目的:隣接業種(健康食品事業)への進出
売り手の強みが、買い手にとってメリットやシナジー効果を与えるマッチングができれば、事業売却は成功する可能性が高いです。
中小企業の事業売却を行う際に気をつけたいポイント
実際に、中小企業の事業売却を行ううえで気をつけたいポイントには、次が挙げられます。
- 業界での優位性や規模拡大などの買い手にとってのメリットはあるか
- 現経営者でなくても成り立つビジネスか
- 資料やデータを十分に用意する
- 事業売却のコンサル企業の力を借りる
業界での優位性や規模拡大などの買い手にとってのメリットはあるか
事例に、小規模な赤字会社であっても、大手メーカーとの取引があるという優位性のために、事業売却が成立したケースがありました。
このように、業界での優位性や規模拡大など、事業売却が買い手にもたらすメリットがあるかという点は、事業売却が成功するかどうかを分ける大きなポイントとなります。
そのため、事業売却にあたって、自社事業の強みを明確化して分析しておく必要があります。
同業種に対しては、顧客層や販売拠点、商圏の拡大など、隣接業種に対しては、売却する事業への新規参入がもたらすメリット、買い手の既存事業とのシナジー効果など、アピールポイントを考えておきましょう。
現経営者でなくても成り立つビジネスか
中小企業のオーナーは、カリスマ性が高く現場が好きなことから、経営体制もオーナーありきで成立していて、従業員への権限委譲が遅れているケースが多いです。
そのため、事業売却にあたっては、オーナーが変更しても成り立つビジネスモデルかどうかを再検討しておく必要があります。
オーナーしか知らない知識やノウハウ、判断基準などがある場合、文書化して従業員に引き継ぎを行っておきましょう。
事業売却をよい機会として、だれがオーナーになっても組織が回るよう、オーナー個人に依存せず、従業員の力を借りた風通しのよい経営体制を再構築できるように努めましょう。
資料やデータを十分に用意する
中小企業の事業売却を成功させるには、自社事業の強みが買い手にどんなメリットやシナジー効果をもたらすのかを、客観的なデータとともにプレゼンを行う必要があります。
事業の将来性を示すには、事業計画の立案や、フリーキャッシュフローなどの専門的な数値の算定など難しい手続きが求められます。
ほかにも、数期分の決算書や各種税申告書など、多くの資料が必要です。
事業売却の成功には、資料やデータの十分な用意が必須とされるため、何が必要でどこにあるのかを早め早めに確認して行動するようにしましょう。
事業売却のコンサル企業の力を借りる
中小企業のオーナーが事業売却を行ううえで気をつけたい点を挙げてきましたが、事業売却の手続きは複雑なため、オーナーが注意点まで配慮して完璧に行うのは困難です。
そもそも、資料やデータの用意にしても、どこに財務資料が閉まってあるのか即答できないオーナーの方も多いでしょう。
そのため、事業売却のプロであるコンサル企業に、まずは相談してみることをおすすめします。
事業売却をどうするかは悩みの種でありますが、前向きに考えれば、外部の目を活用してビジネスモデルを再検討し、事業価値を客観的に再確認できる良い契機となります。
独力では難しい事業売却の手続きも、コンサル企業に依頼すれば、自社の価値評価から売却先候補の選定、売却条件の交渉や関連文書の作成など、徹底的なサポートが可能です。
中小企業の事業売却でお悩みなら
まとめると、中小企業のオーナーが事業売却を行うのは、「業績不振」「リタイア希望」「別事業への注力」などの理由が挙げられます。
実際の事業売却においては、後継者問題の解決や、大企業の傘下入りによる事業強化などが見られました。
事業売却を成立させるポイントとなるのは、自社の顧客や販売拠点、事業内容などが、買い手にシナジー効果を与えられるかどうかです。
中小企業の事業売却を行ううえで注意したい点は、「売り手にとってのメリット」「オーナー依存のビジネスモデルからの脱却」「資料やデータの用意」「コンサル企業に相談」となります。
といっても、具体的に何からスタートすればよいか分からないなら、事業売却のプロであるコンサル企業への相談をおすすめします。
事業売却は上場企業でない限りニュースになることは少なく、中小企業の事例を探すことは難しいです。
具体的な事例を知りたい場合は、中小企業の事業売却を専門とするコンサル企業が、実際に手がけたりストックしたりしている事例を紹介してもらうのが近道です。
中小企業のオーナーには現場重視でやってきた方も多いため、事業売却は、それまで築き上げてきた事業の価値と自らの頑張りを客観的に振り返る良い契機となり得ます。
事業売却の進め方で困っているなら、コンサル企業への相談をぜひ検討してみてください。
どこに相談すればいいかわからない、という場合は、当サイトがおすすめするM&Aコンサルティング社をご検討ください。
数々の事業売却ノウハウを持っており、自社の価値を最大化してから売却することを得意としています。
より満足できる事業売却にするためにも、一度ご相談してみることをおすすめします。
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