
事業譲渡は、第三者に事業を譲渡することです。
親族や従業員に事業を引き継がず、第三者に事業を譲り渡すのに、どのようなメリットがあるのでしょうか。
メリットを確認したうえで、実行するかどうか決めることが大切です。
また、事業譲渡の過去の事例から、どのようなことに注意が必要か確認しておきましょう。
ここでは、ラーメン屋の事業譲渡のメリットや事例からわかる注意点などについてご紹介します。
目次
ラーメン屋が事業譲渡の道を選ぶメリットとは
事業譲渡では、これまで関わってこなかった第三者に事業を譲り渡すため、本当にこれで良いのか慎重に考えることが大切です。
事業譲渡をするかどうかを決める際に考えたいのが、事業譲渡のメリットです。
メリットを十分に活かしきることができないのであれば、事業譲渡を選ぶ必要はないでしょう。
経営のプレッシャーから解放される
ラーメン業界は非常に競争率が高く、他のラーメン屋と差別化ができておらず、味が少しでも負けていると、短期間で廃業に追い込まれてしまいます。
経営が軌道に乗っても、いつ経営が傾くかわからないため、常に経営のプレッシャーを感じることになるのです。
「いつまでプレッシャーに耐え続ければいいのか・・・・・・」と考え、ラーメン屋を手放したくなる経営者は少なくありません。
事業譲渡によってラーメン屋を第三者に任せることで、経営がいつ傾くかわからないという不安から解放されます。
後継者問題の解決
年齢や健康状態の問題などにより、ラーメン屋を子供や従業員に継がせたいという方もいるでしょう。
ここで問題となるのが、後継者不在です。
これは、家族や従業員がいないのではなく、ラーメン屋の経営者に相応しい人物がいないということです。
また、ラーメン屋の経営に興味があり、性格も経営者に向いているとしても、親のラーメン屋を継ぐのではなく一から自分で始めたいという子供もいるでしょう。
繁盛していたラーメン屋が急に廃業するのは、このような後継者問題が原因の場合があります。
事業譲渡であれば、後継者問題に悩まされることなくラーメン屋を売却できます。
事業や店舗の拡大
複数の事業を展開しているケースでは、全ての事業の利益が均等になることは珍しいとされています。
ラーメン屋の利益が他の事業の利益よりも少なく、今後の成長性が見込まれない場合には、他の事業を成長させるためにラーメン屋の事業譲渡を検討することをおすすめします。
ラーメン屋の事業譲渡によって得た現金を他の事業資金に充てることができ、経営も他の事業に集中できます。
また、資本業務提携や合併などをすれば、他社の資金力を取り込み、速やかに店舗を増やせるようになるのです。
自分ひとりの力だけでは店舗の規模は小さいままで終わってしまう、しかし資金や人材さえもっとあれば全国展開も夢ではない。
そのような場合に事業譲渡によって大手傘下に入り、規模拡大を狙う経営者もいます。
このように、事業譲渡は事業や店舗の拡大に利用できます。
従業員の雇用安定や待遇改善
思うように収益が挙がらない場合、従業員の雇用が安定せず、給与水準も低くなるケースがあります。
従業員の待遇が悪いと、仕事に対するモチベーションが下がり、それがサービスの水準低下に繋がるでしょう。
事業譲渡をする場合、従業員は新たな経営者のもとで働くことになりますが、経営者が変わったことに不満を感じてしまわれると、待遇が悪いことも重なって、次々と退職してしまう可能性があります。
このような事態は、現経営者としての望むべきところではないでしょう。
事業譲渡の際に、従業員の待遇改善を条件にすることで、譲渡後も引き続き従業員に働いてもらうことが可能になるのです。
経営者の立場から退いても、ラーメン屋に思い入れがある経営者はたくさんいます。
そのため、従業員の待遇改善のような、経営者ではなくなれば無関係になることにも力を入れる方が多いのです。
譲渡による現金獲得
事業譲渡では、事業に値段がつきます。
そのため、売却によって現金を得ることができるのです。
事業承継では、役員退職金として現金を得られますが、事業承継の方が多くの現金を得られるでしょう。
より多くの現金を得るためには、事業の価値が高いタイミングで売却する必要があります。
また、ビジネスモデルや強みなど、事業の価値が高まる要素を明確にし、根拠となるデータとともに買い手企業に提示することが大切です。
M&Aの専門家のアドバイスを受けることで、譲渡額の交渉がうまくいき、より多くの現金を手元に残せるようになるでしょう。
ラーメン屋の事業譲渡の事例
ラーメン屋が事業譲渡をする目的は、後継者不足で廃業を検討しているものの、
「思い入れのあるラーメン屋を残したい」
「事業を売却して得た現金を元手に新たな事業を始めたい」
「売却によって得た現金を生活費に充てて働かずにゆっくりと過ごしたい」
ことなどです。
ラーメン屋が軌道に乗り、テレビなどでも取り上げられるようになってから他の事業を始め、そちらに集中するためにラーメン屋を売却した事例があります。
それだけではなく、後継者不足や早期リタイアのために事業譲渡をしているラーメン屋も存在します。
特に、後継者不足は多くのラーメン屋が抱えている問題です。
モチベーションが低い人物に無理に引き継いでも、競争率が高いラーメン業界を生き抜くことは難しいでしょう。
かといって、後継者を決めかねていると、経営者に年齢や健康状態の問題が起こり、廃業を余儀なくされてしまう可能性があります。
事業譲渡とラーメン屋は関係が薄いように感じる方もいるかもしれませんが、事業譲渡を行うラーメン屋は多いため、前向きな検討をおすすめします。
また、飲食業界のM&Aの経験が豊富な専門家も多いため、安心してアドバイスを求めることができます。
専門家のアドバイスに耳を傾けながら、少しずつ準備を進めていきましょう。
ラーメン屋の事業譲渡の事例から見る注意点
事業譲渡は、事業承継できない場合や現金を得たい場合におすすめの方法ですが、簡単には成功できません。
ここでいう事業譲渡の失敗は、次のようなことを指します。
・思っているよりも高値がつかなかった
事業譲渡では、希望譲渡額を提示し、必要に応じて交渉が必要となります。
希望譲渡額は、事業の価値と営業権から算出するのですが、実際の譲渡額は低くなる可能性があります。
これは、事業のビジネスモデルや強み、従業員の質、立地、将来的な売上を予測するデータなどの情報をうまく伝えられないことで起こります。
・契約の締結までに時間がかかりすぎる
交渉がうまくいかず、契約の締結までに非常に長い時間がかかるケースがあります。
一般的に、事業譲渡には6ヶ月以上はかかるといわれています。
もし、1年以上かかるようなことがあれば、時代の変化によって風向きが変わり、経営状況が悪化する可能性があるでしょう。
そうなれば、希望譲渡額も下げざるをえなくなり、思っていたような金額で譲渡できなくなります。
・交渉が決裂してしまう
事業譲渡は、必ずしも契約の締結までに至るとは限りません。
途中で交渉が決裂し、振り出しに戻ることもあるのです。
契約の締結の一歩手前で交渉が決裂すれば、それだけ多くの時間を無駄にしたことになります。
このような事業譲渡の失敗を防ぐために、次のようなことに注意しましょう。
ビジネスモデルの収益性や独自性は譲渡額に反映する
譲渡額には、次のような項目が関係しています。
・ビジネスモデルの収益性と独自性
ビジネスモデルは、継続的に収益を得る仕組みのことです。
ビジネスモデルの収益性が高ければ、今後も収益を挙げ続けることができるでしょう。
そのため、将来的な売上が高くなると考えられ、事業の価値が高まるのです。
また、独自性も重視されます。
ビジネスモデルの独自性が高いということは、他のラーメン屋がマネできないということです。
そのため、将来的な安定性も高いと考えられます。
・立地条件
立地が悪いと、どれだけラーメンの味が美味しくても、継続的に収益を挙げ続けることは難しくなります。
逆に、立地が良ければ、他のラーメン屋よりも多少味で劣っていても収益を挙げ続けることができるのです。
駅やオフィスビルの周辺、飲み屋街の周辺などは、ラーメン屋にとって好立地と言えるでしょう。
ただし、競合となるラーメン屋も多いことが予想されます。
競合が多ければ多いほどにラーメン屋の収益が分散されてしまいます。
他の追随を許さない人気のラーメン屋であれば、収益の分散を気にする必要はないでしょう。
このように、立地条件には競合の有無も含まれるため、事前に確認しておくことが大切です。
譲渡先が必要とするのは数字やデータによる裏付け
どれだけ優れたビジネスモデルで立地条件がよくても、根拠となるデータを提示しなければ説得力を与えられません。
これまでの売上の推移、人件費と売上の関係性、立地条件に関するデータなどを提示しましょう。
データから得た情報だけが信用されるため、不備のないよう注意が必要です。
順序としては、ビジネスモデルや立地などにおけるアピールポイントをまとめて、そのアピールの根拠となるデータを用意します。
用意すべきデータがわからない場合は、M&Aの専門家に相談しましょう。
どのようなデータが必要なのか、データをどうやって取得すればいいのかなど、詳細なアドバイスをしてもらえます。
長い時間が掛かる場合もある
事業譲渡の交渉には長い時間がかかる場合もあるため、できるだけ早めに準備をすることが大切です。
事業譲渡の流れやアピールポイント、必要なデータなどを用意し、契約を締結する期限を決めます。
また、事業譲渡に関して親族が反対するケースでは、説得が必要になるでしょう。
従業員には、事業譲渡することを早い段階では伝えないことが大切です。
事業譲渡することが従業員に知られてしまうと、不満の声が挙がり、退職してしまわれる可能性があります。
そうなれば、体制を立て直すのに時間がかかり、契約の締結までの期間がさらに延びてしまうでしょう。
事業譲渡は人対人
希望売却額に対して買い手企業の反応が悪く、もっと安くならないか交渉された場合は、相手の事情をくみ取ったうえで交渉に応じることが大切です。
「絶対にこの金額でなければ譲らない」というよほどの理由がない限り、相手に歩み寄る姿勢がなければ、簡単に交渉が決裂してしまうでしょう。
交渉が決裂すれば、買い手企業を探すことからやり直すことになるため、譲らない姿勢を持つことは売り手としてもデメリットが大きいのです。
事業譲渡は、人と人の間で行われます。
単なるビジネスだと考えて感情を無視した交渉をしてしまえば、悪い結果となってしまうでしょう。
また、売り手が注意したいことは、「ラーメン屋への思い入れが強いために、法外な営業権代を請求する」ことです。
譲渡額は、事業の価値と営業権代で決まります。
このうち、ラーメン屋への思い入れが現れるのが、営業権代です。
現在の収益が赤字であっても事業譲渡は可能ですが、それだけ営業権代も安くなります。
そのときの妥当な営業権代を提示しなければ、交渉は決裂してしまうでしょう。
ラーメン屋への思い入れがどれだけ強くても、妥当な営業権代を提示することが大切です。
ラーメン屋の事業譲渡を行うなら
ラーメン屋の事業譲渡は、すぐに行えるものではありません。
身の回りの状況を整えて、事業譲渡を有利に進めるためのビジネスモデルや強みの明確化を行い、希望譲渡額の根拠となるデータを揃えることになります。
また、契約に関する書類も揃えることになりますが、書類の数は非常に多く、専門的な知識がなければ提出漏れが起きてしまうでしょう。
M&Aの専門家は、事業譲渡の契約に必要な書類の作り方はもちろんのこと、ビジネスモデルや強みを示すためのデータの取得方法、交渉のポイントなど様々な知識を持っています。
さらに前述したとおり、事業譲渡によって得られる現金を増やしたいのであれば、事業価値が高いタイミングで実施しなければいけません。
どのタイミングが良いか、まだまだ事業価値を高められるのではないか、どのようにすれば高められるのか、といった点は経営者ひとりではなかなか判断ができないものです。
そこでもM&Aの専門家の力が発揮されます。
例えば事業譲渡の支援を行っているM&Aコンサルティング社では、事業譲渡に備えた経営改善を行い、事業価値を高めてから高額で譲渡する「SCALE M&A」を行っています。
より高く売れるタイミング、希望の金額で売れるタイミングに合わせて譲渡することを勧めているのです。
そのため、「事業譲渡の相談」となると、それだけを目的に支援を行うエージェントが多く支援の範囲が限定的ですが、M&Aコンサルティング社の場合は事業の成長から売却後まで、幅広く対応してくれるのです。
このように、事業譲渡を行う際は適切なタイミングを見極めてくれる専門家を選ぶべきです。
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M&Aに関する知識を身につけて個人で進めることは可能ですが、買い手企業としても、こちらが専門家に相談していた方が安心して取引ができるでしょう。
また、交渉も安心して進めることができるため、売り手と買い手の双方にとって良い取引になりやすいのです。
ラーメン屋の事業譲渡を検討しているのであれば、専門家に相談しましょう。
そして、事業譲渡することが決定したら、専門家に仲介などを依頼して、取引をスムーズに進めていくことをおすすめします。