
長年保育園を経営してきた方でも、毎年同じ行事をしていても、いつも同じとは限らない、慣れるということはないといいます。
保育事業は常に変化を感じる事業なのです。
それは、なぜか?答えはシンプルで、サービスを受ける対象が複数いるからです。
園児と保護者です。親子がサービス対象になります。
そして保護者同士の結束が固いのも保育園の特徴です。顧客同士の結びつきがあります。
これは良いこともたくさんありますが、ほんの些細なミスで、多くの顧客を失ってしまう事態も招きかねません。
なぜなら、保護者同士の結束が固いのですから、情報の伝達もかなり早いと思ったほうが良いのです。良い噂というのは、ゆっくり回っていきますが、悪いうわさが駆け巡るスピードはかなり速いですよね。
今回は、このように特殊で決して簡単ではない保育園の事業譲渡に関して、成功のために必要なポイントをご説明していきたいと思います。
目次
事業譲渡とは何?
簡単に一言でいえば会社の事業を、第三者に譲渡(売却)することです。
ここでいう「事業」とは、有形の動産、不動産のほか、債券、債務、特許権など無形財産、ノウハウや得意先、人材等を含む包括的な概念とされています。
事業を伴わない、単なる財産の譲渡や債務の引継ぎは事業譲渡になりません。
保育園の事業譲渡を行う前に知っておくべきポイントは3つ
事業譲渡は専門家を頼ったほうが良い
保育園経営者でM&Aを行った方は、まだまだ少ないのではないでしょうか。
一方買い手側は、他業種からの参入にはなりますが、M&Aに関しては経験者が圧倒的に多い傾向にあります。ほとんど未経験者と経験者とでM&Aを行うことになりますから、必ず間に入ってもらうエージェントが必要になってきます。
M&Aの仲介を行うエージェントにもいろんな種類があります。早速みていきましょう。
《保育園経営者が事業譲渡を行う際に、選ぶべきエージェントとは?》
まず、そのエージェントが保育園のM&Aを行った実績があるかどうかは重要なポイントです。そして、できればその事例も教えてもらった方がいいです。
保育園とどんな企業がM&Aを行ったのか、これは実際に保育園オーナーがM&Aを行う上でとても有益な情報です。
現在は、まったくの他業種から保育事業参入するケースが多く、またそれが成功しているのです。買い手側は、自分の事業に保育サービスが必要だと思って、保育園を探します。
買い手側の事業内容と売り手側の保育園との相性を見極めて、適正価格で譲渡できてこそM&Aが成功したといえます。
エージェント次第で、M&Aを成功できるかどうかが違ってきます。
《M&A経験が少ない売り手側は、どのようなエージェントを探せばいいのか?》
・保育園のようなデリケートなサービスを提供する場合、最初は買い手を匿名で探せるほうが良い
・保育事業について深い理解と知識があるスタッフが在籍していること
・相談に関しては無料で、完全成功報酬型であることが望ましい
保育事業という、子供と保護者がサービス対象です。言うなれば少し特殊な業界ではないでしょうか。
業界について深い理解のあるスタッフが在籍したエージェントに相談することがとても重要です。この相談相手の探し方を間違えると、いくら秀逸な事業価値があったとしても、希望価格で事業を譲渡できない場合があります。
また、相談する時点で手数料を徴収するエージェントも数多く存在します。
初めてM&Aをやってみようと考えても、気持ちが変わることもあります。もう少し事業を続けてみようかと思う場合もありますし、身内の中から後継者が見つかる場合もあるかもしれません。事業をやっていたら急な変化はいつもありうることですよね。あらゆることを想定して動く必要がありますから、最初から大きな経費がかかる方法は避けたほうが良いといえます。
成功報酬型ですと、最初に事業譲渡して手に入る金額の何%にするかと取り決めておけば、あとで膨大な手数料を払う必要がありません。
成功しないことには手数料も手に入りませんから、M&Aを成功させるために一緒に動いてくれる良心的なエージェント探しを早めに取り掛かることをお勧めします。
事業価値が高くても譲渡先に伝わらなければ意味がない
M&Aエージェントを探し方でも少し触れましたが、間に入ってもらうエージェントが業界に詳しくないとせっかくの事業価値が買い手先に伝わらないことがあります。
そもそも保育園の事業価値ってなんでしょうか?
《事業価値を見直して、明確にしよう》
この事業価値を明確にすることは、とても大切な作業です。
いろんな角度から事業価値を分析する必要があります。
たとえば、
・経理データ(財務諸表類、銀行残高明細書、税務申告書など)
・事業データ(保育園独自の教育方針、事業計画書、通園者名簿など)
・労務管理データ(保育士の人事考課など)
簡単に言うと、お金の面、事業の将来性、従業員に関する資料を作成しておく必要があります。
お金の面というのは、資産と負債をきっちり資料化しておかなければなりません。
ここでいう負債というのは、事業資金の借入金だけでなく、支払うべき従業員の退職金、オーナーの自宅を担保に借りている個人保証なども含まれます。
後で簿外負債が見つかったりしないように、全てデータ化しておく必要があります。後から明確にしていない負債などが数多く出てくると、信用を失ってしまいます。酷いときは、進んでいた事業譲渡の話も頓挫してしまうかもしれません。
さて、ここでもう一度考えて欲しいのですが、保育園の事業価値とは何でしょうか?
保育園の建物、設備といった資産も必要ですが、一番大切なものは何だろうと考えて欲しいのです。
もちろん、通園してくる園児です。
では、その園児の為に必要なものは何でしょうか?ひとつは『教育方針』、そしてもうひとつは、教育方針に則って園児と接してくれる『保育士』です。
《保育園の事業価値は、オリジナルな教育方針と保育士》
自分の保育園にもM&Aの手法を取り入れてみるかと考えたら、一番に整理してほしいのが保育園の教育方針です。
どのように子供を教育して、どんな大人になって欲しいか?と考えながら教育方針って決めていきますよね。
そしてその教育方針を支持してくれる保護者が、大切な子供を預けてくれるのです。
自分の教育方針をもう一度見直して、わかりやすく書面化することが大切です。
間に入るM&Aエージェントが保育事業に詳しいことは大切ですが、誰が読んでもわかりやすい資料作りをすることも重要です。この資料がとても高い価値があるのです。
財務データや不動産の価値などの資料は、税理士にも作成できます。しかし、オーナーが決めた教育方針は、オーナー本人しかその良さを説明することができないのです。
また、自分が採用を決めて、自分の教育方針についてきてくれる保育士も大切な財産です。
子供たちは、保育士さんを信頼して、保育園に通ってきているのです。
この独自の教育方針と保育士は、保育園の事業価値を高めます。
そのことを再認識して、わかりやすい資料作りを心がけてください。
事業譲渡を行う目的があやふやだと譲渡後に後悔しやすい
保育事業を譲渡しようと考え始めたら、本当に譲渡するしかないのかを徹底的に考えてください。そして、譲渡の目的を明確にしておく必要があります。
M&Aというのは、企業同士の結婚と表現されることがあります。結婚といえば、結婚式を待つばかりの時に陥るのが”マリッジブルー”ですよね。本当にこの相手でよかったのかな?結婚してもいいの?他に道があったのでは?といまさら考えても仕方ない…?というような悩みが起こってくるものです。
結婚もM&Aも「縁」があって行うものです。この「縁」というのは、一度タイミングを失ってしまうと、再度結ぶのが難しいものです。多分、次はないと思った方が良いでしょう。たった一度きりの出会いがあって結ぶ縁です。大切にしなければなりません。
そのためには、
・交渉にあたって、譲れないことと、譲歩できないことを決めておく
・自分の事業を客観的に分析して、相応の価値を判断しておく(高望みをしない)
・相手の立場になって考える
・業界に精通したM&Aエージェントに相談する
・M&Aを決めてからも事業内容を向上させるよう頑張る
どうしても、自分の事業を譲ろうと決めてしまうと、もういいやと少し投げやりになったり、力が入らなくなったりするものですが、せっかく大切に育ててきた事業を簡単に手放すのは考え物です。M&Aを決めてからこそ、もっと事業を向上させて高い価値を相手に感じて貰うことがとても大切なのです。
保育園の事業譲渡を行う手順
この項目では、M&Aを決めてから事業譲渡を完了させるまでの手順をご説明していきます。
事業譲渡する相手を見つける
まず、保育園を譲り受けてくれる人を見つけなくてはなりません。
しかし、譲渡先を見つける前に見つけて欲しいのがM&Aエージェントです。さきほどもお伝えしましたが、業界に精通したエージェントに相談することがまずは大事です。
エージェントは、あなたの保育園の事業価値を的確に判断して、譲渡先を探してくれます。
ただし、どの企業に譲るかを決めるのは、オーナーだということを忘れないでください。
譲渡先候補から意向表明書をもらう
最近の傾向として、譲渡してほしいと望む企業の方が多いのです。保育園経営を始めるにあたりM&Aでと考えている企業が増えています。要するに、「売り手市場」と言えます。
ですから現在なら、譲渡先を選べるのです。
複数の企業から「譲渡希望する」という意向表明書をもらうことになります。
これは希望することを書面化しておく必要があるからです。
基本合意書の締結
数社から「意向表明書」をもらって、保育園オーナーも1社に絞り込んで、この企業なら自分の保育園事業を譲ってもいいと思ったら、つぎは基本合意書を締結することになります。
ここからは、1:1の対応となってきます。
デューデリジェンスの実施
この項目が事業譲渡の山場です。さきほどの基本同意というのは、お互いに事業譲渡に対して同意するということを書面化しただけで、まだ契約には至っていません。
このデューデリジェンス(買収監査)をすぎないとまだまだ事業譲渡は完了できないのです。
なぜ、デューデリジェンスの前に書面にて基本同意を結ぶかというと、契約一歩手前だということを意思表示して、譲渡先企業に、保育園の事業内容、財務状況、労務管理内容などの上方を渡すためです。それらには個人情報も含まれるので、個人情報保護の観点から、事前に書面を取り交わしておくのです。
多くのオーナーが、この情報開示が伴うデューデリジェンスにて、感情的になったり、事業譲渡を後悔することが多くあります。どうしてそうなるかというと、資料の作成が日ごろからできていなくて、この基本同意が終わったころに大慌てで作成しだす企業が少なくないからです。
不必要なトラブルを招かないためにも、財務データ、契約書類(不動産やリースなど)、労働者名簿、通園児童名簿などを日ごろからしっかり管理して作成しておく必要があります。
契約書の締結
先程の項目、デューデリジェンスが完了してからこの契約書締結です。
この項目でやっと事業譲渡が9割方決まったといえます。
しかし、まだまだ最終決定ではありません。
株主総会の承認
保育事業を行っている法人格は、だいたいが社会福祉法人ということもありますが、オーナーが筆頭株主であることが多いです。身内を役員で固めていることも多いでしょうから、あらかじめ根回ししておく必要があります。
後継者不在で事業譲渡を検討したわけですから、オーナーがどうして事業譲渡することに至ったかを説明する義務はあります。なぜ譲渡するかという目的を明確にし、事情を汲んでもらうことができれば、反対者が現れる確率は低いでしょう。
引継ぎを行う
保育園の業務というのは、本当に特殊ですし、多くの経験が必要です。
とくに、これからM&Aで事業を譲渡されて保育園を始めようと考えている経営者は、大体の場合において業界経験が少ないことが多いです。
異業種に新規参入しようと思って、なるべく初期費用が少ないM&Aというスキームを選んでいますから、ベテランの保育士を手に入れられるのはとても助かりますが、そのほか保護者や近隣の住民の方との対応など不安な要素はたくさんあります。
できれば元オーナーがしばらく残って、引継ぎをしてくれることはかなり価値のあることです。それを契約条件に盛り込む場合もあります。
事業を譲渡したからもう終わり、というものでもないのです。事業譲渡後もある程度の引継ぎ期間が必要なことを想定しておいてください。
保育園を事業譲渡するならまずは相談
前項「保育園事業譲渡の手順」でもお話しましたが、譲渡先を探す前に、必ずM&Aエージェントを探しましょう。
オーナーがM&Aの経験がなくても、間に入ってもらうエージェンが経験豊富で、保育業界に詳しいとかならずM&Aによる事業譲渡は成功できるといっても過言ではありません。
最後まできっちり対応してくれる、オーナーとの相性もよいエージェントを探すことをお勧めします。
東京で保育園のM&Aをお考えなら、M&Aコンサルティング社をおすすめします。
売却までに事業価値を高めることが得意ですし、譲渡契約でお互いがWin-Winの条件になるような交渉もしっかりと進めてもらえます。
相談は匿名でもOKです。情報が外部に漏れる心配がないので、安心して相談できると思います。
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