
日本企業によるM&Aの件数が大幅に増えてきました。
海外では主流のビジネススキームだったのですが、今や日本の大企業が買収と合併を繰り返すのは日常のこととなりました。
しかし、M&Aは大企業だけのビジネスモデルでしょうか。
最近では、中堅、中小企業をはじめ、個人経営者までもがM&Aを取り入れるようになってきました。それは、事業拡大や事業承継などの観点からもM&Aを行う件数が増加したためです。
小規模な事業所ほど、深刻な人手不足と後継者不在問題を抱えています。この経営者の深刻な悩みをM&Aが解決してくれるのです。
企業を買収、合併を考えている企業だけでなく、経営に携わるすべての方にとっても、M&Aのビジネススキームは知っておいて損はありません。
自社の発展にも役立つM&Aの知識を、今回は「保育園の事業承継」を例にとってご説明していきたいと思います。
目次
事業承継のメリットとは
この項目では、事業承継を行うメリットを3つご紹介します。
これは保育業界にかかわらず、全ての業界に共通するメリットです。
経営に対する重責からの解放
会社に勤めるサラリーマンなら、就業規定により定年があります。そして多くの企業で退職金があるでしょう。その上、大企業でしたら企業年金が支給されるところもあります。
しかし、経営者には、この「退職」という規定が当てはまりません。
言うなれば定年退職がないのですから、死ぬまで働けるということです。
しかし、大抵の経営者はある程度の年齢になると引退します。
従来は後継者に引き継ぐのが一般的だったのですが、現代社会のように少子化・職業の多様化が進んでくると、わが子が自分の事業を継ぐとは限りません。
また、従業員の中から選抜して引き継ぐということも、経営者側も従業員側もかなりの負担を背負うことになります。
そこで、昨今取り入れられるのが、「M&A」による「事業承継」です。
実子、従業員でなく、第三者へあなたの大切な事業を引き継ぐ事ができるのです。
それも、あなたの事業に強い興味をもつ経営者へと引き継ぐことができます。
これは、後継者不足の問題を効率的に解決してくれることになります。
現金を得ることも
前項でもお話しましたが、自営業では「退職金」はありません。
しかし、M&Aを行うことにより、あなたの事業を売却して現金を受け取ることもできます。これが退職金代わりとなります。
《適正価格で事業を売却するためには》
なるべく事業を高く評価してもらう必要があります。そのためにはどんな点に気をつければよいでしょうか。保育園の場合でポイントを整理してみますと、
・事業の長所と短所を度確認する
・園児と保護者などサービス対象者のリストアップ
・事業の将来性を従業員も含めて確認する
・独自の教育方針は何か
・保育士の人事考課などもデータ化しておく
項目で挙げた内容を完璧にリストアップすることで、自分の保育園の事業価値を客観的に確認することができます。
まず売り手側が冷静に、自分が経営する保育園の強みや弱みを認識しておくことは、M&Aを進めていく上で、とても重要なことです。
そして分析されたデータは、事業価値を高めることとそれに伴い、売却代金を適正にはじき出してくれます。高額の売却が可能になります。
従業員の雇用継続や待遇改善
保育園の従業員と言えば、「保育士」さんです。また給食を準備している保育園なら「栄養士」「調理師」も大切な人財ですよね。
保育園を廃業するという道を選んだ場合、これらの大切な人財を路頭に迷わせてしまう可能性もあるのです。
しかしM&Aを選んだ場合は、事業を売却するときの条件としてこの従業員の雇用継続と待遇の改善を盛り込んでおけば、そのまま雇用継続は可能です。
買い手側も、優秀な人材も一緒に手に入れることができますから、少ない投資金額ですぐに保育園を始めることが可能になります。
売り手、買い手、そして従業員にとってもハッピーになれるというのが、このM&Aの最大のメリットといえます。
保育園の事業承継を行う際の注意点
メリットについてご説明してきましたが、今度は保育園ならではのM&Aを行う上での注意点についてピックアップしていきます。
事業承継の確定まで従業員や保護者には秘密にする
大切な我が子を預ける場所が保育所です。
もし、経営者が変わることが早い段階で保護者の耳に入ってしまうと、「経営不振なの?」「このまま子供を預けていて大丈夫かな?」と余計な心配をさせることになりかねません。
特に、保育園に子供を預けている保護者のネットワークを甘く見てはいけません。俗にいうママ友ネットワークです。
女性同士はおしゃべり、井戸端会議が好きと言われていますが、あれはただのおしゃべりではなく、大切な家族を守るための「情報交換」をやっているのです。
そんなママ友の情報交換の場で、「保育所の経営者が変わるかもしれない」などという情報はトップの沸騰ワードであり、瞬く間に保護者全員に駆け巡ってしまいます。
そして、他の保育園に転園させた方がいいかも?という思考回路に行きつきます。
大幅に園児を失う羽目になってしまうのです。
《M&Aをやってみようかなと思ったら》
自分の保育園をM&Aのことを考えはじめたのなら、まずはエージェント探しを早めに進めたほうがよいでしょう。良い相談相手を見つけることが大切です。
しかし、従業員などには極力初期段階で公表するのは避けてください。
初期の段階では、オーナー一人で動くことをお勧めします。
そしてよいエージェントを見つけたら、エージェントとの1:1である程度の段階まで進んで、買い手も見つかって、もう売却は本決まりになったころに、信頼を置ける従業員に話してみても遅くはありません。
従業員などに承継する以外にM&Aという手もある
今までの項目でもお話してきましたが、中小企業、個人経営者の事業承継にM&Aのスキームはとても相性がいいのです。
まず、経営者の頭を悩ませる点が、
・子供に事業を承継させるのはむずかしい
・従業員の中から選抜することに抵抗がある
の2点となります。
すでに子供は違う仕事についていて、とても保育園を継ぐ状況ではないし、従業員である保育士の中で選抜するにも、現場での業務で精いっぱいになり、とても経営面まで対応することが難しいのではないでしょうか。
このような後継者問題にこそ、このM&Aでの事業継承が活かせるのです。
新しい経営者を迎えることにはなりますが、保育事業に対して熱意のある経営者を迎えることで、通園する子どもたち、保護者達、そして従業員である保育士たちにとっても、プラスになることは間違いありません。
何度も申し上げますが、保育園にかかわるすべての人がハッピーになれる、これがM&Aでの事業継承を行うメリットであるのです
保育園の事業承継を成功させるポイントとは
準備は早めに
M&Aでの事業継承を行う流れを簡単にご説明すると下記のような流れになります。
・M&Aエージェントに相談して売却先を見つける
↓
・買い手候補から意向表明書をもらう
「買いたい」という意思表示でまだ契約ではありません。
↓
・基本合意書の締結
これも「売買」についてのお互いの意思確認で契約には至っていません。
↓
・デューデリジェンスの実施
ここが一番の山場です。経理資料、契約(雇用契約、施設の賃貸借契約書など)資料、事業内容資料(事業計画、教育方針などを資料化したのもの)を準備して、買い手に提出する必要があります。
↓
・契約書の締結
ここで初めて契約となります
↓
・株主総会の承認
中小企業の場合、株主=経営者の場合が多いですし、身内が役員の場合がおおいのではないでしょうか。M&Aを検討したときに、身内には話しておいて、根回ししておく必要があります。
↓
・引継ぎを行う
この時に新しい経営者を紹介するべく、保護者説明会を開催しても遅くはありません。
だいたい、M&Aを検討して、全て完了するまでに3か月から6か月はかかると思っておいた方がいいです。
もう一度申し上げますが、買い手を探す前に、まず信頼できるM&Aエージェントを探すことから始めてください。
業界に詳しいエージェントに相談することで、M&Aを完璧に成功させる近道となります。
譲歩できない条件を明確に
今まで長年にわたり大切に育ててきた保育園です。
身内ではない第三者へと事業を承継することに、最後まで少し抵抗を感じるオーナーも少なくありません。
すでにM&Aが進んで、いざ契約するという段階になって「やっぱり事業承継することをやめたい」というオーナーも実在します。
どうしてぎりぎりになって心変わりするのか?それは、第三者へ承継しなければならなくなった本当の目的を明確にできていないからです。
この記事の当初から、M&Aで行う事業承継についてのメリット、注意点をご説明してきていますが、なぜ他人に譲ることになったのか?を常に確認しておいてほしいのです。
・後継者が身内にいない
・自身の健康に対して自信がもてない
・法改正があまりに複雑で、従来の保育園経営ができなくなった。
などなど、たくさんの理由からM&Aを行うことを決断したことを忘れないでください。
そして、M&Aを行うと決めたのなら、次に考えることは、絶対に譲れない条件を決めることです。
・従業員の雇用を継続して、待遇もアップしてほしい
・事業を譲って、受取代金に関して納得のいく金額を決めておく
・教育方針など変えて欲しくないところは新しい経営者にきっちり伝える
・通園している園児、保護者が変わりなく利用できるように園のルール、年間行事などはしっかり伝えておく
などなど、今まで経営してきた保育園であなたが大切にしてきたことは新しい経営者にもしっかり伝わるように契約条項に盛り込んでおくことです。
このことを正確にやっておくと、契約したのはいいけど、やっぱり保育園のM&Aを後悔するなんてことは起きません。
真の強みを知る
あなたがこれまで保育園を経営してきて一番大切にしてきたことは何ですか?
この質問にすぐに答えら得られるオーナーは、M&Aを行って成功できるオーナーだと思います。
一生懸命に園児たちのことを考えて、保育士たちと力を合わせて保育園経営してきたオーナーならすぐに答えられる質問です。
そのあなたが経営することで大切にしてきたとは、M&Aを行う上では、「事業価値」と評価されるのです。
事業価値が高くなれば、受け取る代金も高くなります。
これは売り手側だけではありません。
買い手側も、買収する先の真の強み、すなわち事業価値をきっちり理解できていないと、せっかくの大金を使って保育園を手に入れたとしても、それを活用することができずにムダ金を使ったことになりかねません。
事業価値を正しく買い手に伝えることと、そして買い手はその事業価値を100%活かせるように事業内容を理解することがとても大切なのです。
オーナーと後継者と従業員にとって最も良い着地を目指す
先程からお話しておりますが、このM&Aで事業承継を行うことの最大のメリットは、買い手側と売り手がそして従業員までもがハッピーになれることです。
経営には様々な手法がありますが、その経営に携わるすべての人がハッピーになれる手法は、このM&Aがトップなのではないかと思います。
買い手側にとっても、保育園の設備を手に入れることもとてもメリットがあります。
一からすべてを揃えることはかなりの出資が伴いますよね。既存の設備を使えるのはかなりの節約となり、合理的です。初期費用が安くて済みます。
そして、ベテランの従業員も一緒に手に入れることができるのは、昨今の人手不足問題を早急に解決してくれることとなります。
ここまででお伝えしたように、M&Aは買い手側にとってかなりのメリットがあります。
新しい業界に進出しようと思ったらまず、このM&Aで始めることを検討したほうが良いです。
ですから、買いを希望する方がとても多いのが、最近のM&Aの大きな特徴でもあります。
売り手市場といわれる現代ですから、自分の保育園を第三者へ譲ろうと思ったら、早い段階であらゆる角度から自分の保育園を分析して、そして従業員の雇用と待遇改善を必ず契約条項へ盛り込むことが大切です。
廃業の道を選んでしまったら、従業員の再就職先まで考えないといけないのですから、その時間が必要ない分、従業員が新しい職場で困ることのないように、待遇について新しい経営者と密な打合せをしておいてください。
専門家の力を借りる
この項目も、何度かお話していますが、まず買い手を探す前に、間に入ってくれるM&Aエージェントを探すべきです。
エージェントを探すポイントとして
・保育事業に詳しいエージェントであるか
・保育園M&Aの経験があるかどうか
・子供たち、保護者達が利用するサービスであるので、新しい買い手を探す際にも、そのことを理解してくれているか
すくなくともこの3点は確認する必要があります。
高く売れれば成功というわけではないのが、この保育園のM&Aです。ある意味、人間力が必要とされます。
まずは信頼できるエージェントを探し、見つかったのであれば、最初はエージェントとオーナーの1対1で話し、M&Aについて検討していってください。
保育園の事業承継を検討するなら
先程もお伝えしたように、まずは保育園の事業承継について経験豊富なエージェントを探すが先決です。
最初のエージェント選定は、M&Aを成功に導くどうかの岐路となります。
東京で保育園のM&A支援を行っている会社としては、M&Aコンサルティング社が候補に上がります。
先程挙げたエージェント探しのポイントをクリアしていることはもちろん、
・匿名で相談ができ、買い手を探してくれること
・完全成功報酬型であること
・保育業界に詳しいスタッフが在籍していること
この3点も兼ね備えているので、安心してお任せすることができるでしょう。匿名での買い手探しができるという点も、情報漏えいを防ぐためには重要です。
まずは、無料の相談窓口にお問い合わせをしてみてはいかがでしょうか。
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