
平成28年6月に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」では、少子化対策として、希望出生率1.8の実現をめざしています。そのため平成29年度末に、保育の受け皿整備目標人数を40万人から50万人へ、上方修正を行いました。
平成28年度からは、異業種からの保育事業参入を促す企業内保育の新しい形として「企業主導型保育」がスタートしました。女性が社会で働きながら子どもを育てやすくするためです。
保育業界を取り巻く現状を見るに、現在は保育園を始めるには今までにないほどの追い風が吹いています。
今回は、保育園の事業売却について、事例のご紹介と成功のためのポイントについて解説していきます。
目次
保育園の事業売却を行うのは、こんなとき!
業績が思わしくないとき
少子化なのに、保育園が不足するという事態が起こっています。
政府は、保育園を増設することを検討して、地方にも保育園増設の波がきて、それに伴い保育士の待遇改善(給料のベースアップ)を図りました。
しかし、都市圏と地方では人口に格差があります。当然ながら子どもの人口にも大きな差があるため、地方では園児が定員に達していない保育園も多くみられます。
つまり保育園の数が余っている状態です。
こうなってくると、経営自体が難しくなってきますよね。
保育園経営をこのまま続けていくかどうか、悩んでいるオーナーが地方を中心に増加傾向にあります。
業績が思わしくない保育園を、自分の子どもに継がせるのは抵抗があるし、従業員の中で、そのような難しい経営を引き継いでくれる人はなかなかいませんよね。
しかし、M&Aでの事業売却というスキームを選択した場合、売却先の企業との事業内容と相性が良ければ、高額で買い取ってくれることもあるのです。
廃業するかどうか思い悩む前に、このM&Aでの事業売却を検討していただきたいのです。
オーナーがリタイアしたいとき
保育園は子どもを預かる場所であり、常に居心地が良くて、安全な場所である必要があります。衛生面、セキュリティー面で徹底した管理が必要になってきます。
その分、経営者にかかるプレッシャーは大きいものがあります。
どんな業種でも経営者には責任がありますが、特に保育園事業は子ども達の生命を預かるので、かなりの緊張感をもって経営にあたらなくてはなりません。子どもだけでなく、保護者の対応もあり、本当に大変です。
そのような負荷の高い環境なので、加齢や健康面への不安をきっかけに「リタイア」を考える方も少なくありません。このような場合にもM&Aによる事業売却は検討の価値があります。
また、長年保育事業を行ってきたけど、まったく新しい事業を始めたいと思っている場合も同様です。
別の事業に注力したいとき
保育園の経営母体は社会福祉法人が多いですが、中には宗教法人としてお寺が経営していらっしゃる保育園や、教会が経営しているものもあります。
また、企業が保育園経営をしていることもありますよね。
現在、保育園以外に事業を持っている場合、その別の事業に専念したいと思うこともあれば、全く新しい事業を始めてみたいと思うこともあるでしょう。
実際、保育園での経験を活かして、新しい事業を始めるオーナーも多数いらっしゃいます。
子どもに接する仕事はたくさんあります。また、今度は大人ばかりの現場で働いてみたいと思うこともあるでしょう。
自分の事業をM&Aで事業売却して、まったく新しい業界に参入するために、またM&Aで事業を始めるということもできます。
まだ仕事ができる状態だけど、保育園事業だけを誰かに引き継いでもらいたいと考えたときに、今回のM&Aでの保育園事業売却が役立ちます。
保育園の事業売却の事例を見てみよう
《保育園事業売却を希望するオーナーの「売却理由」NO.1とは》
最初の項目でもご説明しましたが、オーナーが事業を売却しようと考えるのは、ほとんどの場合がオーナーの高齢化による問題からです。
保育園経営というのは、体力勝負です。認可外保育園を経営されている方でしたら、早朝、昼間、夜間、お泊り保育もサービスしている保育園もあります。このような形態ですとほとんど24時間営業ということになります。
従業員がいるといっても、オーナーはすべてを管理する必要があります。
自身の健康に不安を持つようになったら、後継者を探さなくてはいけませんよね。
《東京都内でも売却希望の保育園はある》
都内の某所で、最寄り駅から徒歩1分の立地で、売却希望となっている保育園は実際に存在します。スタッフ5名で運営されているのですが、この保育園も売却希望理由はオーナーの高齢化と健康問題です。営業年数は10年間で、近隣では有名な保育園となっていました。
負債もなく、損益もないですが、このまま経営を続けていくのは難しくなると想定しての売却です。現在、都心にもこのような案件は多数存在しているのです。
保育園事業を経験しているオーナーなら、新しく保育園事業を買収して経営すれば、かなりの利益が見込めるのではないでしょうか。
また、事業内容によっては、申請すれば認可外から認可型に変更することもできます。
東京都に認可されれば、助成金も入ってきますし、より一層経営の安定化を見込めます。
《保育事業経験がないと保育園オーナーってなれないの?》
大体の保育園オーナーが売却先の条件として、保育事業経験者となっているのは事実です。
しかし、保育事業の経験はないけど、すでに経営している事業での女性従業員のために、保育施設が欲しいということもあります。
そんな時は、保育士経験のある従業員を新規に雇用するということもできます。
園長を雇い入れるということになるのですが、経験者を保育事業の担当者にすることで、保育事業経験者を確保できて、条件の良い保育園を手に入れることもできます。
保育園の事業売却を行う際に気をつけたいポイント
保育士を確保する
営業している保育園をそのまま買収する場合、通園している子ども、保育園の建築物、設備、保育士、そのほかの従業員をそのまま手に入れることができます。
その中でもベテラン保育士というのは、大きな事業価値です。
所属する保育士の人数や、経験年数、仕事ぶりなども事業価値を高める判断材料になります。ですから、事業を売却するときに、ベテラン保育士がすでに離職しているという状態は避けなければいけません。
事業売却を検討したときに、新しく経験者の保育士を新規に雇入れるということもしておいてもいいかもしれません。経験者保育士の人数も事業価値に結びつきます。
これは売り手側も、買い手側にも両方気を付けるべき点なのですが、経験豊富な保育士を失わないようにするには、誠意のある対応をしないといけません。
売り手側は、事業売却の契約条項に、保育士の雇用継続、待遇改善を盛り込むべきですし、買い手側は、事業売却することが決まって、新しく経営を引き継ぐときには、待遇改善についての具体的な策をきっちり保育士に説明する必要があります。
《新しい経営者が保育士に接触するのは、売却が決まってから》
タイミングとしては、売却金額を払って、全てが決まってから保育士と接触して、待遇のことなどを説明するようにしてください。
このタイミングをうまく見計らうことができずに、事業売却を失敗してしまうことが往々にしてあります。
焦ってあまりにも早い時点で従業員と接触してしまうと、かえって不信感を生んでしまうのです。
引継ぎが始まり経営者となった時に、「新しい職場に変わるよりも、同じ職場で、待遇だけが改善されて変更になる」ということを誠実に説明してください。
新しい経営者が誠実な人間だとわかったら、離職しようと考える保育士は現れません。
売却先との親和性を考える
売却先の条件として、保育事業経験者をあげている場合が多いとお話しました。
その他にも、どうして保育園事業を始めたいと思ったのか?買収希望の理由をしっかりヒアリングしておく必要はあります。
大切に育てた保育園をどのように、続けていってもらうのかとても気になることです。
なぜなら、預かっている子どもたちが安全で健康に通園できるようにしないといけないからです。ほかの事業とは少し違ったデリケートな点がありますよね。
人対人の事業となるから、売却先事業との相性が合うのかどうかということを丁寧に何度も確認する必要があるのです。
しかし、あまりにも疑心暗鬼になって、これもだめ、この企業も難しいと選びすぎるとまたわからなくなってきます。せっかく買いたいと希望する企業が複数現れても、
断ってばかりでは、結局売却できなかったということになりかねません。
ある程度の妥協点も必要だし、売却先の企業の事業内容をしっかり理解する必要があるということも忘れないでください。
企業間のM&Aは、結婚と同じと言われています。人を育てて、人に対するサービスを行っている保育園という事業は、とくにこの相性と、出会ったことで生まれる「ご縁」というのがとても大切なのではないでしょうか。
売却先の事業内容も大切ですが、売却先のオーナーの人柄も重視してください。
保育事業の経験が少なくても、あなたの保育園を大切に引き継いでくれる人ならば、あなたの保育園との親和性が強いといえるでしょう。
資料やデータを十分に用意する
M&Aで事業売却を行う場合、様々な資料を用意する必要があります。
なぜ必要かというと、初期段階では、まずあなたの保育園の適正価格を算出するためです。
それは主に経理的なデータを用意することから始めて、事業内容も詳しく書面化していきます。事業価値を見込める所属保育士の人事的なデータも必要となってきます。
最初のうちにこれらの資料をきっちり作成しておくことで、終盤に訪れる「デューデリジェンス 買収監査」の時にあわてる必要がなくなります。M&Aが完了するまでの期間が短くて済むのです。
デューデリジェンスというのは、売却先の企業が本当に買い取っても価値があるのか最終確認するための作業です。売却先企業の為に行うことですから、そのことを念頭に資料を作る必要があります。
《財務データはとても重要》
財務資料として、下記の項目はそろえておくようにしてください。
どの資料に関しても、顧問税理士さんと相談ながら進めるとスムーズに作成できます。
・監査基準日現在の試算表を会計事務所に準備してもらう
・試算表に関して内訳明細書も準備する
・定期預金に関しては、銀行に残高証明書を作成してもらう
(銀行によって数日を要しますので事前に依頼しておいてください)
・土地建物など資産に関する権利書を準備しておく
・株主総会、役員会議事録はすぐ見られるようにしておく
・総勘定元帳、補助元帳などもすぐに見られるよう準備する
・生命保険も監査基準日の解約返戻金を生命保険会社に計上してもらう
・小切手、手形(現物)と手形帳も照合して説明できるようしておく
事業売却のコンサル企業の力を借りる
事業売却にあたっては、税務データに関しては、顧問税理士に依頼して、相談にのってもらうことも必要です。
M&Aに関して知識が深い税理士も最近はかなり増えてきました。当初からM&Aを見込んで事業を始める経営者が増えてきたからなのですが、しかし、まだまだすべての経営者がM&Aを理解しているわけではありませんし、経験がない方がほとんどです。
税理士に関してもM&Aに関しては理解度にかなりの格差があるのです。
解決策としてM&Aを専業に行っているエージェントに相談することおすすめします。
最近は、保育園のM&Aが増加傾向にあります。そのため保育業界に詳しいスタッフが在籍しているエージェントが増えてきています。
どのようにしたら、あなたの保育園の本当の事業価値が伝わるか、また売却価格を適正に算出してもらえるかのアドバイスをしてもらえます。
大切に育ててきた保育園です。熱意のある経営者に引き継いでもらうことも大切ですし、なるべく高く買ってもらうことも必要なのではないでしょうか。
そんな売却希望のオーナーの気持ちを理解してくれるエージェントを探すことからはじめてみることをお勧めします。
保育園の事業売却でお悩みなら
長年経営してきた保育園だけど、自分の子どもに継がせるのは難しい、従業員の中から選抜するのはもっと難しいと頭を悩ませているオーナーは大勢いらっしゃると思います。
これは、保育園という事業が、人を育てるということをサービスにしているからなのです。
要するに誰にでもできることではないということですよね。
だからこそ、続けていくのが難しい、後継者がいないと思ったら、まず保育園のM&A経験が豊富にあるエージェントを探していただきたいのです。
例えば、東京で保育園のM&A支援を行っている会社ですと、M&Aコンサルティング社があります。
保育園のM&Aの実績もあり、経験を生かして最適な方法を提案してくれるはずです。
さらに、初期段階では匿名で相談でき、簡易査定も受け付けています。まずは気軽にご相談をしてみてはいかがでしょうか。
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