
最近は「保育園」においてもM&Aを用いた事業承継が増加傾向にあります。
M&Aとは、合併と買収という意味です。
この買収という意味が、まだまだM&Aのなじみがない方々には「買いたたき」というイメージがあります。
しかし昨今のM&Aにおいては、事業不振の為に事業を手放す企業ばかりではありません。
むしろ廃業を選ぶことなく、自分の会社をM&Aでの事業承継によって残すことができ、経営者として「勝ち組」とも言えるのです。
今回は、保育園の事業承継について、事例を交えながらご説明していきたいと思います。
目次
保育園が事業承継を行う背景
保育園の経営について、将来を不安視しているオーナーは少なくありません。
その理由として挙げられるのは、
- 進んでいく日本の少子化
- 深刻な保育士不足
- また保育士の待遇改善が難しい
- 助成金、補助金の申請が度重なる法改正で複雑化してきている
ざっくりとご紹介して、この4つが考えられます。
他にもこまごまとしたトラブルが保育園経営では日常化しています。
年齢的、体力的にもこのまま保育園経営を続けていくのは難しいと考えてしまうのも仕方ありませんね。
先にあげました、保育士不足、そして待遇改善が難しいという項目ですが、保育士がなぜなり手が少ないかというと、この待遇が改善されないことにあります。
ほとんどの保育園は、社会福祉法人が経営しています。
社会福祉法人の割合は、認可型保育園の約90%近くに上るといわれています。
そしてこの認可型は、助成金、補助金でもって経営しています。
安定していると思われがちなのですが、運営資金に限度がありますので、なかなか保育士の給料まで多く支払うということは難しいのです。
法改正により、保育士不足を打開すべく、給与体系のベースアップは検討されて実施されてはいますが、まだまだ労働に見合った報酬を支払うことまでには達成できていません。
保育士さんの仕事内容というのは本当に多岐にわたり重労働なのに、改善できたというところまでには到達していないのが現実です。
勤務時間も長く、休みも少ないうえにお給料も安い仕事では、やはり現代のように女性が社会進出して、職業も多様化してくるとどうしても好待遇な仕事に若い労働力がながれてしまう傾向があります。
この保育士さんの給料を支払うべく経営資金をどこから持ってくるかにより、経営状態はもちろん、従業員である保育士の待遇改善にもつながります。
やはり経営資金は補助金だけでなく、オーナー自身の資金力も必要になってくるのです。
少子化ではありますが、共働き夫婦の増加により、まだまだ保育園は不足しています。
この保育園不足が、少子化を招いているという悪循環も生み出しているのです。
生みたくても、預かってくれるところがなければ働けないし、生むこともできない状態です。
保育園という事業はとても大変ではありますが、開業すれば必ず園児が集まり、ビジネスとしてはかなり効率が良いものとなります。
また、女性社員の定着率をあげるためにも、社内保育施設を増設したいと思っている企業も増え続けています。
民間企業のオーナーが保育園のM&Aを検討している事例が増えてきています。
もし子どもや従業員に事業承継ができないという状況であれば、M&Aを利用して保育園を事業承継することも検討されてはいかがでしょうか?
保育園の事業承継の事例
▼不動産管理会社大手と東京23区内数か所で保育事業を行う大手保育園とのM&Aの場合
2016年12月15日、双日のグループ企業双日総合管理(東京・港)は待機児童問題が深刻になるなか、安定した利用を見込むべく、保育所の運営を手掛けるアンジェリカ(東京・目黒)の全株式を取得しました。
買収額は公表していません。
双日不動産管理は、双日が開発するマンション内に保育施設を設置するなどし、東京都内を中心に年間数カ所ずつ増やしていく方針です。
2004年設立のアンジェリカは現在、東京23区で国の基準を満たす認可保育所9カ所、東京都の独自基準に基づく認証保育所6カ所を運営しています(2016年12月時)。
国や都からの補助金を受けており、安定した経営を行っていました。
双日は子会社の双日新都市開発(東京・港)を通じ、マンション開発や不動産売買を仲介しています。
不動産情報のネットワークを活用し、アンジェリカが保育所を新設する用地も管理して開発しています。
建設ラッシュが続く分譲マンションのマンション内、または近隣に、保育施設を増設することにより、マンション住民に対して子育ての利便性を図ることを目的にM&Aしました。
住まいと子育てできる保育施設の距離を縮めることで、働く子を持つ親たちの支持を受けています。
保育園の事業承継のポイントとは
事業承継相手に経営能力はあるか
この経営能力とは、資金力はもちろんですが、保育事業に関しての理解がどれくらいあるかということも確認しなければいけません。
保育園経営というのは、子供だけでなく、保護者、保育士と対応する人間が多くいます。
親は子供に対して、自分のこと後回しにしても子供のことを優先したいと思っています。
できれば預ける先の保育士や経営者に対しても、同じように子供に接してほしいと望んでいるのです。
保育事業をやってみようと考えている方は、簡単に始められるとは思ってはいないでしょう。
人間と接する仕事のなかでも、保育という、子供の成長過程のベースの部分を担当するわけですから、その責任は計り知れません。
資金力、責任感、使命感、そして人間力を兼ね備えたオーナーにしかできないのが、保育園経営だと思っていただきたいのです。
売り手側は、本当に自分が育ててきた保育園を引き継いでくれる人物なのかしっかりと見極める責任があります。
そして買い手側は、責任もって引き継ぐことができるかどうか、買い取る保育園の教育方針が自分の価値観と合っているか何度も確認する必要があるのです。
現在通う園児への影響を抑える
商売には、お客様が必要ですよね。
保育園を事業として始める場合に本当に忘れてはならないのが、保育園は教育業であるとともにサービス業だということです。
サービスには提供する相手がいます。
誰がこのサービスを望んでいるかを常に考える必要があります。
保育園の場合、サービスを提供する対象は「子供と保護者」です。
お客様が親子であるということです。
たとえば、紳士用アパレルなどターゲットは30代男性のように、シンプルではありませんね。
親と子のようにターゲットが複数いるのです。
大切なお子さんを預かる仕事であることをお忘れなく。
子供相手だからと適当に対応することなんてできません。
子どもは家にに帰ってから親に保育園でこんなことがあったと報告しているものです。
他の事業に比べて、かなりデリケートで細やかな気遣いが必要なのです。
ですからオーナーが変わるなんてことが早々と保護者にわかってしまうのは考え物です。
まず、保護者が思い浮かべるのが「経営状態が悪くなったのでは?」という疑念だからです。
それに伴い、保育に関する質が落ちるかもしれないという心配も起こってきます。
先程の事例の項目でお話しましたが、保育事業を行っているアンジェリカの経営状態が悪くなって、双日不動産管理とM&A契約を締結したわけではなかったですよね。
双方の事業との相性を考えて、また双日が開発したマンション住民の住みやすさのためにM&Aをしたわけです(顧客サービスの向上のために行ったわけです)。
M&Aを行うと、このようにサービスが向上されることが多く、顧客にとってはメリットしかないのです。
子供は意外に敏感です。
自分の置かれた状況の微妙な変化を感じ取ってしまいます。
どこからその微妙な変化を感じ取るかというと、いつも一緒にいる保育士さんからの場合が多いのです。
いっしょにいる保育士さんに元気がない、いつもと違うなど感じたらすぐに気づいてしまいます。
家に帰って「○○先生の様子がおかしい」などと親に報告されたりして、保護者が保育士から聞き出すことも考えられます。
いくら信用できる保育士でも、早い段階で、近しい保育士などにも話してしまうのはお勧めできません。
早い段階から取り掛かるべきことは、M&Aに詳しいエージェントを探すことです。
大体の保育園オーナーがM&Aの経験は皆無と言えます。
しかし、買い手側の企業は、M&Aに対して経験豊富な場合が多いのです。
自分で買い手を探すのは至難のわざですし、また運良く探し出しても、自分の思った条件でもってM&Aを行うことはとても困難です。
保育事業に対して深い知識のあるエージェントを探して、相談相手にしましょう。
まずは、エージェントとオーナーの1:1でM&Aを使った事業承継について話を始めてみることで、周りに不要な心配をさせることもなくなります。
事業承継後に自身は何をしたいか
M&Aによって事業承継を行ったオーナーの中には、まれに後悔している方もいます。
「やっぱり自分の保育園を手放すんじゃなかった」ということです。
どうしてこのような状況が起こるかというと、最初に、なぜM&Aをしてまでも保育園の事業承継をしなければならないのかという目的が明確ではなかったということと、この事業承継を行った後、自分自身はどうするのかということを決めていないからなのです。
健康問題や後継者が不在問題などM&Aを行う理由は様々です。
しかし、身内ではなく「他人に事業承継する」ということを何度も確認する必要があります。
自分の気持ちを再確認する作業が必要です。
そして目的を明確にすることです。
事業を第三者へ引き継いだ後は、もう経営からは一切手をひいて、保育もしないのか、経営自体は手放すけれど、保育園に残って保育を続けるのか、選ぶことも可能です。
事業承継を行う時に、契約条項に自分が残ることを盛り込んでおけばいいのです。
買い手側企業も、オーナーがそのまま保育園に残ってくれることはかなり助かります。
長い付き合いの地域の人たち、保護者達などとの交流方法なども引継ぎしてあげてもいいでしょう。
この引継ぎ内容も事業価値となり、高い金額がつくこともあります。
事業承継に伴い受け取った現金で、新しい事業を始めることももちろんありです。
自分の経験を活かして、セカンドステージに進むことを選ぶオーナーさんも数多くいらっしゃいます。
廃業を選んでいたら、引退しか道は残されていませんが、保育園をM&Aで事業承継することにより、資金を得られるため新しい未来に進みやすくなるのです。
保育園の事業承継後、オーナーの身の振り方はしっかり決めておくことはとても大切なことです。
M&Aの専門家に頼るのもアリ
3.2の項目でもお話しましたが、M&Aエージェントを探すことはとても大切です。
エージェントは、あなたがM&Aを完了させるまでずっとサポートしてくれる存在です。
買い手企業を探すよりも、さきにエージェントを探すことが大切だというのは、M&Aを行う上での鉄則だと思ってください。
保育園経営に詳しいエージェントは存在します。
そしてM&Aによる保育園の事業承継を数多く経験しているのです。
自分の事業価値をしっかり理解して、先方の企業へきっちり伝えてくれるエージェントを探してください。
自分の保育園の事業内容をきっちり理解してくれて、オーナーとも相性が良いエージェントが見つかったら、M&Aに関しては9割がた成功したと思ってください。
保育園の事業承継を行うなら
さまざまな理由で保育園の経営を次世代に引き継ぐことを考えてしまいます。
後継者がすぐに見つかればいいのですが、現代社会ではなかなか身内に引き継ぐことは難しくなってきています。
こんな悩みを持つオーナーにぴったりなビジネススキームが、M&Aによる事業承継なのです。
まず保育業界に詳しいスタッフが在籍するエージェントを探してみて、気軽に相談されることから始めてみてください。
M&Aによる保育園の事業承継支援ができるエージェントに、M&Aコンサルティング社がいます。
- M&Aで得られるお金をより多くしたい
- M&Aで第三者に事業承継したい
- まだ事業承継するか決めかねている
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