
物流事業は、今、過渡期に差し掛かっているのではないでしょうか。
慢性化している人手不足問題、再配達による過剰労働、運転マナーの低下など、事業を続けていく上で多くの向かい風が吹いています。ドライバーが長期間在籍してくれないと頭を悩ませているオーナーもいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、この物流業界の事業について、M&Aのスキームが活用できるということをお話していきたいと思います。
目次
物流事業のM&A
M&Aとは
まずは、M&Aについてご説明します。
M&A(エムアンドエー)とは『Mergers(合併)and Acquisitions(買収)』の略です。
買収や合併と聞いてしまうと、何となく買いたたかれて、乗っ取られるようなイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、このM&Aというビジネススキームは、本来の活用法は、既存の事業を失うことなく、活かすことが目的です。
倒産や廃業だけが選択肢ではなく、このM&Aを活用して事業を残すというやり方が、最近は大企業間だけでなく、中小企業、個人経営者でも活用され始めています。
本当に、自分の会社の事業が売れるのだろうか?親族や社内の人間以外に事業を引き継いでもらうことは本当に可能なの?と言ったお悩みに関しても、このM&Aがすっきり解決してくれます。
事業譲渡や株式譲渡を行うメリット
M&Aのビジネススキームの中で、ポピュラーなのが、事業譲渡と株式譲渡です。
これらのメリットをお話する前に、簡単に事業譲渡と株式譲渡とはなにか?をご説明しましょう。
・事業譲渡とは
会社の事業を、第三者に譲渡(売却)することです。
譲渡対象は、マンパワー(人;従業員)、モノ(設備、建物、工場)を含みます。売り渡した側の企業は、同じ事業を行うことは制限されます。
事業の全部を譲渡することも、一部を譲渡することも選択できます。
また、債務を切り離して譲渡するなど範囲を定めて契約できます。
この一部譲渡も全部譲渡も可能というところは、大きなメリットとなります。
会社のもつ事業をすべてを譲渡するわけではなく、範囲を決めることができるので、他に事業を行っている場合には、業績が少し振るわない事業を譲渡して、業績が良い事業に集中することもできます。
・株式譲渡とは
会社の経営者が所有している株式を、会社を買った人に譲渡することです。
会社の経営者は、筆頭株主である場合が多いので、この経営者が持っている株式をすべて譲渡するということは、経営権も譲渡するということです。
株式を譲渡して、すぐに引退する場合もありますが、残って事業の引継ぎをすることもあります。
この株式譲渡のメリットは、とにかく手続きが簡単という点です。
そして、株主が交代するだけなので、負債や資産が増減することもなく、行政上、許認可などの制限もありません。
これは、大半の株をオーナーが所有している中小企業でこそのメリットと言えます。
個別の契約更改をする、許認可をとるなどの手間がないのです。
物流事業がM&Aを行うケース
この項目では、物流事業を行うオーナーがM&Aを行うのはどんな時かをご説明していきます。
後継者がいない
今は、インターネットであらゆるものが注文できます。ホームページにアクセスして、クリックすればほしい商品が自宅に届くのです。
便利な世の中ではありますが、大手物流サービスでも、働き方改革の実施により、労働時間短縮するように指導されています。
新規の物流サービスを提供することを休止している業者も出てきているのです。
働き方改革も要因の一つですが、何よりも人手不足が大きな要因となっています。
配達してくれるドライバーが不足しています。
人手不足の業界は、他にもたくさんありますが、そのような業界ほど後継者も不足しています。いくら仕事があっても、やってくれる人がいないのですから、事業を継続することができないのです。
受注はあるけど、人手がない、後継者不在だという場合、このM&Aで事業を第三者へ譲ることを検討してみてください。
会社を廃業することなく、そのまま経営を引き継ぐことができます。
アーリーリタイアしたい
物流業を長年経営してきたけれど、そろそろ健康上の心配もできてきたし、リタイアしたいなということを考えたときに、M&Aを検討してみることをおすすめします。
M&Aが完了するまでには、だいたい6か月ほど必要になります。ただし状況次第でも伸びる可能性があるので、1年ほどはM&Aに費やすと想定して、早めから準備に取り掛かってください。
自営業の方は、定年なく働くことができるところも魅力の一つではあるのですが、違う考え方をすれば、やめる時期が決まっていないということです。これは、ありがたいようで、際限なく働きづけてしまうということにもなりかねません。
このM&Aの手法を活用することで、リタイアする時期を自分で決めることができます。
そして、現金を受け取ることもできます。退職金かわりになるものを受け取れるわけです。
健康問題で経営を続けられない
健康問題が出てくると事業を継続することが難しくなってきます。
物流業というのは、かなりの重労働です。長時間の運転、または重い荷物を運び出すことなど、高齢になってからも続けるのは大変です。
健康状態が深刻になる前に、手を打っておく必要があります。
このような、オーナー、従業員であるドライバーの高齢化にも、このM&Aで解決することができます。M&Aでのスキームの中で、事業承継があるのですが、第三者へと事業を引き継いでもらうことが可能です。
今後の経営に希望が持てない
深刻なドライバー不足により、経営を続けていくことに難しさを感じているオーナーは多くいらっしゃると思います。とにかく人手がいないわけですから、これからの経営に希望を持てなくなるのも仕方ないことです。
しかし、仕方ないからと手をこまねいていても解決にはなりません。
M&Aによって、廃業を選ぶことなく事業を継続していくことで、ドライバー不足などの経営のプレッシャーからも解放されるのです。
店舗拡大のための資金や人員が足りない
大手物流業も新規契約を休止するなど、業界全体が先行きが見えない状態になっています。しかしそんな時だからこそ、中小規模の物流業に新規発注が増加の傾向にあります。
人員を増やしたい、店舗を増やしたいと検討しているオーナーもいらっしゃるでしょう。
新しく増やす店舗に関しては、M&Aで手に入れることも可能です。一から店舗を作るよりも、初期費用を抑えることができます。
そして、常駐しているスタッフごと手に入れることができますから、人員を新規採用しなくてはいけないという心配もなくなります。
M&Aの手法で物流事業を手に入れると、初期費用を抑えることができるばかりではなく、深刻な人手不足問題にも対応してくれるのです。
物流事業のM&Aでオーナーが得られるメリットとは?
この項目では、M&Aで得ることができるメリットを深堀していきましょう。
心理的負担の軽減(経営、後継者)
先程からお話していますが、これからの物流業を経営していくことの不安、後継者不在問題などをM&Aで解決することができます。
大切に育ててきた物流業ですから、簡単に廃業を選ぶのではなく、M&Aで第三者へと経営を引き継ぎましょう。事業自体を引き継ぎますから、経営を続けていく必要がなくなり、プレッシャーからも解放されます。
金銭的メリット
M&Aを成功させることで手元に現金が残ることもあるのです。現金を得ることができて、ハッピーリタイアが実現します。入ってきた現金を安定したリタイア生活に使うのもいいですが、他の事業に投資して経営基盤を盤石なものにすることもできます。
資金繰りが厳しいと悩んでいる経営者は少なからずいらっしゃると思います。業績の良い他の事業に投資したいけど、これ以上の金融機関からの借り入れは不安というとき、M&Aで既存の物流事業を譲渡することにより現金を手に入れて、設備投資などに役立てることができます。資金繰りの悩みも解決してくれます。
新事業への挑戦や引退後の生活
今経営している物流業を廃業して、そして新しい事業を始めようと思ったら、かなりの自己資金を用意する必要があります。
廃業するにも、車両や倉庫などの設備は売却して現金化できる場合もありますが、売却できずに引き取ってもらうような場合は、不動産を売却したときの課税などで、出費の方が多くなるということもあり得ます。
M&Aで事業を第三者へと引き継いだ場合は、現金が入ってきますから、その現金を元手に新規に事業を始めることや、サラリーマンでいう定年後の退職金を受け取るような形で、事業を譲渡して入ってくる現金を受け取ることもできます。
物流事業のM&Aを実施する際に気をつけるべきポイント3つ
物流事業のM&Aを成功させるために気をつけたいことを、具体的に3つご紹介します。
準備は早めに
前述しましたが、M&Aが完了するのに、スキームにもよるのですが、大体6か月はかかると思っていた方がよいでしょう。事業を譲渡しようと考えた時点からさかのぼると、1年はみておいた方がいいです。
つまり、意外に時間を要するということです。
M&Aは当初は口頭などでオーナーが事業内容を説明したりするのですが、最終的には、デューデリジェンスと言って、財務、事業、労務と言った内容を書類で提出しなければなりません。
株式譲渡では、先程もお話した通り、株主交代するだけで、契約関係の変更はありませんが、他のスキームですと、一つ一つの契約関係を見直す必要もでてきます。
これにかなり時間がかかります。
財務、労務、事業データなどは、普段からオーナーも把握するようにしておいて、いつでも手に取れるところにファイリングしておくようにしてください。
そうすることで、M&Aが完了するまでの期間を短縮することもできます。
売却事業の強みを明確化する
事業内容がどれくらい魅力的かを正確に伝えることで、事業価値が高まり、事業を高く売却できることにつながります。
物流事業の強みとはどのようなことが考えられるでしょうか。
・在籍しているベテランドライバーの人数
・物流倉庫の設備
・取引先
最初に挙げている、在籍ドライバーは、物流業界では大切な資産ですね。
今は、特に重労働である分野、飲食、建設、物流などは、人手不足が深刻化しています。
そんな中で、ベテランドライバーが複数在籍していると、これはかなり高い事業価値となります。
それにドライバーというのは、宅配、引っ越しなどを担当するとなると、直接お客様に接することになります。仕事の早さ、正確さももちろん大切ですが、接し方も大切になってきます。これは本当に難しい仕事と言えます。そんな優秀なドライバーを大切に育てて、数多く雇用している物流業であるということは、事業自体が成功しているということなのです。
このような成功している事業なら、本当に誰でも手に入れたいと思うことでしょう。
事業の強みを明確にするためにも、今日からでもドライバーの育成に取り掛かる必要あります。
譲れない売却先の条件を明確化する
事業を売却する場合、譲れない条件はきっちり決めておくことで、売却後に後悔するということは起きません。
譲渡先に遠慮してしまって譲れない条件を言い出せずに、相手のペースで決めてしまうと必ず後悔します。
これは、事業の売主であるオーナーが、あまりM&Aの経験が少ないことが原因になっています。どんな条件をつければいいのか、悩んでしまうのです。
例えば前述した、事業価値に直接結びつくドライバーですが、この大切なドライバーの雇用継続と待遇改善はきっちり決めておいた方がいいです。
M&Aを行うことが従業員にも知られてしまうと、自分が勤めている会社が他の会社に買収されると思い不安に思う可能性があります。ただ、M&Aの条件として、雇用と待遇アップがきちんと盛り込まれているなら、不安になる必要がありません。大切なドライバーが職場を離れていくという心配も起きなくなります。
事業の強みを確認して、その強みを今度は活かすためにも譲れない条件へつなげていくのです。譲渡先企業にとっても、ドライバーは必要な人財です。ドライバーがいないことには事業が始まりません。
貴重な人財をそのまま譲渡先へとつないでいくということは、とても大切な条件と言えます。
また、事業を譲った後に、オーナーは会社に残るのか、それともすっきりとリタイアするのかということも決めておく必要があります。
譲渡先からすれば、引継ぎを兼ねてしばらく残って欲しいと希望する場合も多いと思います。しかし、もうすっかり引退したいと思っているなら、ある程度の引継ぎ期間は必要かもしれませんが、その後は会社に残らないことを条件に入れておくべきです。
本当はすっきりリタイアしたかったのに、相手先の企業に流されて、期間を決めずに残ることになってしまった場合、M&Aをしたことを後悔してしまいます。
M&Aが完了したその後のオーナーの身の振り方をしっかり検討しておく必要があります。
物流事業のM&Aを相談するなら
売却希望のオーナーはM&Aの経験が少ない方が多い傾向にあります。買い手企業のオーナーはM&Aの経験値が高い方がいらっしゃる場合が多く見受けられます。
買い手企業の中には、M&Aの手法でもって、会社を大きくしているオーナーもかなり増加傾向にあります。
そのような経験豊富な買い手企業と渡り合うためには、間に入ってくれるM&Aエージェントが必要になってきます。
買い手先を探すよりも、このM&Aエージェントを探すことから取り掛かることがM&Aを成功させる秘訣なのです。
以下に、当サイトおすすめのエージェントをご紹介します。
物流業界のM&A実績も多いので、まずは一度相談してみることをおすすめします。
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