
保険代理店オーナーの中には、副業として不動産賃貸業や飲食店などを経営されているという方もいらっしゃると思います。
本業の方では新規顧客開拓が難しくなってきたけど、副業の方は順調だ、という方も多いのではないでしょうか。
できればその副業を本業にして、保険代理店だけ事業譲渡できないかと悩んでいるオーナーのために、今回は保険代理店のM&Aについてお話していきたいと思います。
この方法を使えば、自身の会社の「保険代理店事業」部分だけを切り離して譲渡することが可能です。
保険代理店を閉めることもなく、事業部分だけを譲渡して、現金も手元に残るという方法です。
この方法を選択した場合、顧客に対しても細かい説明する必要もなく、長年勤めてくれた従業員を解雇する必要もありません。
なぜなら保険代理店の事業はそのまま継続されるからです。
顧客にとっても、従業員が退職していないので担当者も同じです。
オーナーだけがチェンジするわけですが、これはなかなか気づきにくいものです。
せっかく育てた事業ですから、長きにわたり継続していってほしいですよね。
目次
事業譲渡とは何?
最近よく耳にする「事業譲渡」ですが、正直なところよくわからない…という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「事業を譲渡することでしょ?」と簡単に言ってしまうとそうなんですが、その事業を譲渡することってどういうことなのか、ご説明します。
会社はだれのもの?
この考え方を知っておくと、事業譲渡についても理解しやすいです。
会社はだれのものか?それは株主のものです。
よく企業をテーマにしたドラマなどで、企業乗っ取りを企てる人たちのセリフで
「A社の株式の○%取得することに成功した!これで筆頭株主になれる!これであの会社は俺のものだ!」などと聞いたことありませんか?
ちなみに厳密に言うと、このセリフには間違いがあります。
他の株主に比べて多くの株を保有するとひょっとしたら筆頭株主になれるかもしれません。
しかし会社は株主全員のものですら、他より多く株を持っていても、会社すべてが筆頭株主のものになるわけではありません。
50%以上の株式を所有すれば可能かもしれませんが、ドラマに出てくるような大企業では、固定株主で固めていて、全体の50%の株式を所有することはかなりのお金持ちでも難しいといえます。
流動株主のすべての株を手に入れたとしても、筆頭株主になれるかどうかも難しいところです。ましてや50%なんて無理。
ほかの株主の過半数に反対意見を持たれたら、その意見は却下されます。
筆頭株主というだけでは、我が物顔で会社を動かすことなんてできませんので、悪しからず。
では事業は誰のもの?
それは会社のものです。筆頭株主のものでもないし、経営者のものでもありません。
事業にはどんなものが含まれるかというと、ヒト(従業員)・モノ(商品・工場)・権利(取引先、ブランド名)などです。
事業を譲渡するということは、これらのものを第三者へ売却することです。
気を付けておきたいのは、売却してしまったら、今後同一の事業を行うことが制限されます。
保険代理店の事業譲渡を行う前に知っておくべきポイント
事業譲渡は専門家を頼ったほうが良い
M&Aで事業譲渡を行うことはある程度理解しているという方もいらっしゃるでしょう。
買い手先も自分で探した方が、安心できると思うかもしれません。
しかし、大切に育てた保険代理店です。会社というのは、そんなに簡単に売り買いできるものではありませんよね。
やはり買い手先を詳しく知る必要があります。
また、こちらの情報も的確に理解してもらう必要もあります。知り合いに頼めば一石二鳥じゃないかと思うかもしれませんが、意外に知り合いを頼ってしまうと、遠慮してしまって本当に知りたいことがきけなくなったりしませんか?
ビジネスシーンでは、この少しの遠慮が大きな損失につながってしまうのです。
保険代理店の事業譲渡での実績があるM&Aエージェントなら、業界についても深い理解があります。
成功報酬制をとっているエージェントが多く存在しますから、まず事業譲渡が完了しないことには、報酬が入ってきません。
ビジネスライクに考えれば、完了する日まできっちり対応してくれるわけです。
ほんの少しの疑問も遠慮することはありません。
納得がいくまで打ち合わせていけばいいのです。そしてその上で買い手を探してもらうことができます。
事業価値が高くても譲渡先に伝わらなければ意味がない
保険代理店の事業価値は
・顧客
・従業員
の2つに大きく分けることが出来ます。
顧客というのは保険契約があることが前提です。
保険代理店の経営は、大きな経費が掛かる事業ではありません。設備投資もほとんどいりません。電話とプリンター、パソコンがあれば、ある程度は営業に必要なものは揃っているでしょう。
ちなみに、パソコンがここまで普及する前は、電話と机があれば保険営業はできるといわれていました。保険商品の知識と営業センスがあれば契約はとれるということです。
とはいえ、これはなかなか難しいことです。その営業マンの素質にかかっているということです。
様々な業種で「営業」があります。不動産、車、宝石など値段の張るものはたくさんあります。保険契約だって安い買い物ではありません。
しかし、不動産、車、宝石などは資産が残ります。「家が欲しい」「車がほしい」「宝石身に着けたい」と、モノを目当てにお客さんがやってきます。
しかし、保険には目に見えるモノは残りません。
何が残るか?保障です。安心を売っているのです。それをお客様に理解してもらう必要があります。
理解してもらってこそ「売ること」ができるわけです。
この保険代理店経営を続けていくことの難しさ、しかし難しいだけでなく「やりがい」や、お客様との信頼関係も、とても大切な要素です。
これらのことをしっかり理解して、新しい譲渡先を見つけてもらう必要があります。
改めて保険代理店の事業価値について掘り下げて書きますと、
・長い付き合いの優良な顧客
・優秀な営業マン・事務員(従業員)
ということです。
この2つの事業価値は、長年にわたり営業してきている保険代理店なら必ず持っている事業価値ではないでしょうか。
事業譲渡を行う目的があやふやだと譲渡後に後悔しやすい
このまま続けていてもメリットはないし、譲渡先が見つかったらすぐにでも買い取ってもらいたい!と思ってM&Aを検討し始めたと思います。
「もう、続けていけない!!」と強く思ったから事業譲渡をする…この理由だけでは、事業譲渡する目的としては弱いのです。
経営者の方にお話を聞くと、「自分にとって経営してきた会社は、実子と同じようなもの。」とおっしゃる方がとても多いのです。
自分の子供と同じ価値がある、自分の命と同じくらいの価値があるということではないでしょうか。
これまでの人生をかけて続けてきた事業なので、簡単に手放せるものではありません。
しかし、人間の気持ちというのは変わってしまうものです。
手放そうと一旦考えたら、とにかく早く売却してしまいたい。いつしか事業を続けていくということから、譲渡するということが目的になってしまいます。
ここで、もう一度考え直してみてください。譲渡することを目的にしてしまっていいのでしょうか。
答えはNOです。譲渡を目的にしてはいけないのです。
自分は経営を続けられないけれども、新しいオーナーのもとでも、自分が始めた「保険代理店」の経営が永遠に続いていくように、事業譲渡をする…と考え方を切り替えなければなりません。
自分が経営している保険代理店をそのまま引き継いでくれる人はどんな人でしょうか?
たとえば、
・自分の企業理念を引き継いでくれる人
・顧客を同じように大切にしてくれる人
・従業員を引き続き大切に育ててくる人
・保険というものが人々にどんな恩恵をもたらすか理解している人
などが挙げられるでしょう。
大切な保険代理店を責任もって続けてくれる人を探す必要があります。そんな譲渡先を見つけてもらうことを目的にしてみたら、きっと手放したあとに後悔することはないと思います。
保険代理店の事業譲渡を行う手順
M&Aの手法で事業譲渡を行う手順について、項目ごとにご紹介していきます。
最初から完了まで、7つの項目があります。すべてが完了するのに、早くても4~5か月、平均6か月以上はかかると思っていただきたいです。
そう考えると、買い手候補の検討を含めると、合計で1年ほどの期間が必要になることがわかります。
このあとの内容を読み進めていくと、数多くの手順があることをお分かりいただけると思います。
この一つ一つの項目はすんなりスムーズに進まないこともあります。その度に、本当に保険代理店を譲渡してしまっていいのかなと考えてしまうこともあると思います。
数多くの経営者がM&Aでの手法で事業譲渡を行い、第三者へ事業を譲渡する場合に、なかなかスムーズにいかなかったと話しています。
しかし、同じ数だけ、M&Aでの事業譲渡を行って本当に良かったという声も実に多いのです。
そのことを忘れずに、ひとつひとつコツコツと進めていきましょう。
事業譲渡する相手を見つける
譲渡先を探す前に、まず頼りになるエージェントを見つけましょう。
これはM&Aでは鉄則です。保険代理店の内情に詳しいエージェントをさがしましょう。
そして、事業譲渡する上での条件について徹底的に話し合いをします。
エージェントに譲渡先を見つけてもらう時に、
・従業員の雇用が継続できること
・ある程度業界に理解があること
・お互いの事業内容に互換性があり、相性が良いこと
などを提案しておくといいのではないでしょうか。
譲渡先候補から意向表明書をもらう
エージェントと何度か打ち合わせを行い、譲渡先の希望条件などもよく確認して、譲渡候補先が決まってきました。
ここでもしも1社に絞ることになったら、意向表明書をもらいましょう。
口約束でも民法では契約は成立しますが、かならず後でもめないように、「譲り受けたい」という意思を書面でもらっておくようにします。
基本合意書の締結
ここでは、譲渡先から「あなたの代理店を譲ってもらいます」という意思表示である意向表明書を受け取って、今度はもう一度お互いに事業譲渡の意思があることを書面でもって表示します。
ここからは、売り手と買い手の1対1の話し合いが始まります。
よくM&Aは企業間の結婚と言われているのですが、結婚段階で言えば、結納が終わって正式に婚約となったというタイミングになるでしょう。
お互いに合意をしていますが、これで事業譲渡が決まったわけではありません。婚約においても、結婚の意思は固まっていますが、「婚約破棄」ということもない話ではありません。
その点にも注意をはらいつつ、基本合意書の締結が完了したら、次のデューデリジェンスの実施へと進んでいきましょう。
デューデリジェンスの実施
この項目が事業譲渡の山場です。
デューデリジェンスをスムーズに進めるには、日ごろから帳簿、各種契約書、従業員名簿、顧客名簿などがどこにあるか、そして内容もある程度把握しておく必要があります。
これは従業員任せではすまされません。
この段階で揉めたり、事業譲渡を取りやめるようなトラブルが起きやすいのです。
デューデリジェンスに向けて、基本的には以下の準備をしておく必要があります。
・監査基準日現在の試算表を会計事務所に準備してもらう
・試算表に関して内訳明細書も準備する
・定期預金に関しては、銀行に残高証明書を作成してもらう
・土地建物など資産に関する権利書を準備しておく
(事務所が賃貸の場合は、賃貸借契約書など)
・株主総会、役員会議事録はすぐ見られるようにしておく
・総勘定元帳、補助元帳などもすぐに見られるよう準備する
・生命保険(オーナーが加入分)も監査基準日の解約返戻金を計上しておく
・顧客の契約内容の台帳などをもう一度見直しておく
契約書の締結
最後の山場といえる「デューデリジェンス」が無事済めば、あとは契約書を交わすだけです。
株主総会の承認
大企業ですと株主が数多く存在しますが、保険代理店などの場合は、従業員も10名以下の規模が多く見受けられますし、筆頭株主=オーナーという場合が多いのではないでしょうか。
家族と共同経営者や、役員会がある場合は、M&Aを検討して譲渡先と契約が整うタイミングを見計らって、日ごろから経営に関する将来性を話し合っておくことをお勧めします。
引継ぎを行う
譲渡してしまったらもう終わりだと思わずに、最後まで、従業員や取引先の為にも引継ぎがあることを想定しておいてください。
保険代理店を事業譲渡するならまずは相談
自分が経営している保険代理店の事業譲渡を検討したら、まず、保険代理店M&Aの実績があるエージェントを探して、相談されることをお勧めします。
相談はほとんどのエージェントが無料です。また、買い手もネットで探してもらいますから匿名で探せます。
ちなみに、相談先として、当サイトはM&Aコンサルティング社をおすすめします。
完全成功報酬型なので、事業譲渡の完了までしっかりとサポートをしてもらえます。
M&Aは相談からはじまります。まずは一度話を聞いてみてはいかがでしょうか。
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