
「ホテルや旅館といった宿泊業の経営をしているけれど、そろそろ後継者に事業を引き継いでもらいたい」と、考えている経営者もいるのではないでしょうか。
あなたが経営者からリタイアするのであれば、ホテルや旅館を続けるためにも後継者を見つける必要があります。
当然、その事業承継、つまり引き継ぎ方法や後継者選びを失敗すると、事業自体が傾く可能性があります。
そこで今回は、ホテルや旅館の事業承継のポイントを事例から読み解いていきましょう。
ホテルや旅館の事業承継のポイントを知って、あなたが経営してきた事業を今後も繁栄させていきましょう。
目次
ホテル・旅館が事業承継を行う背景
まずは、ホテルや旅館のオーナーが事業承継を行う主な背景を確認していきましょう。
ホテルや旅館といった宿泊業で事業承継を行うタイミングは、主に以下の4つの場合です。
- オーナーがリタイアしたいとき
- 後継者によるアイデアで事業規模を大きくしたいとき
- 後継者の経営力で売上を伸ばしたいとき
- オーナーが別の事業に注力したいとき
現在、あなたが上記の状況にあると感じているのであれば、事業承継を行ったほうが良いでしょう。
例えば、オーナーがリタイアしたいときに事業を誰かにバトンタッチすることができなければ、ホテルや旅館は存続させることが難しくなります。
自分の愛着のあるホテルや旅館がなくなるということは、単に事業が終わるだけでなく、長年、そこで提供されていたサービスもなくなることを意味します。
しかし、最適な事業承継を行えば、あなたが経営から離れたとしてもそのホテルや旅館は存在し続けます。
昨今、経営してきたホテルや旅館に営業を続けて欲しいという背景で事業承継を行うオーナーはとても多いです。
後継者選びに成功すれば、新しい後継者ならではのアイデアによって、ホテルや旅館が大きく成長する可能性もあります。
現状、一部の老舗のホテルや旅館を選ぶ宿泊客も減っているという話を聞きますが、新しいオーナーの発想で客足を取り戻すことを狙い、事業承継をする人もいます。
少しでも自分が育ててきたホテルや旅館を存続させたいという思いがあるのなら、ぜひ事業承継を考えてみましょう。
ホテルや旅館の事業承継の事例
今回、ホテルや旅館の事業承継の事例を紹介するのは、新潟県にある「ホテルみかわ」と「日本山嶼海(さんよかい)株式会社」です。
「ホテルみかわ」は、1994年7月に開業して以来、24年間も赤字が続いており、累積負債は約7000万円でした。
そんな「ホテルみかわ」を「日本山嶼海株式会社」が事業承継を行い、経営を見直しました。
この経営の見直しの一環として、古くなった温泉の改修や外国人旅行客のツアーを計画・実施し、「ホテルみかわ」の新たな客層の獲得を狙うという新しい取り組みを行い、経営の改善を図っています。
このように、ホテルや旅館業界では、親族や従業員以外に事業承継をするケースもあります。
というのも、ホテルや旅館を廃業しようとしている経営者の多くが、後継者不足によって経営を諦める現実があるからです。
外部の第三者にホテルや旅館を事業承継することにより、廃業を避け、新しい経営手法で事業存続を図ることができます。
もし、あなたも経営から離れる際に後継者がいないのなら、外部への引き継ぎを考えると良いでしょう。
それでは次章で、ホテルや旅館の事業承継のポイントを確認していきましょう。
ホテルや旅館の事業承継のポイントとは?
ホテルや旅館の事業承継を行う際のポイントは、主に下記の4つだといえます。
・ビジネスモデルや強みを再確認する
・M&Aの条件を明確にする
・売却先候補に事業の強みや価値を伝える
・M&Aの専門家に相談する
これらのポイントを抑えておけば、ホテルや旅館の事業承継は成功する確率は上がります。
何事も準備なしには物事はうまくいきません。
しっかりと事業承継の準備をし、成功するように、ポイントを十分に理解して計画を立てましょう。
それでは、具体的にそれぞれのポイントについて、順番に見ていきましょう。
ビジネスモデルや強みを再確認する
ホテルや旅館の事業承継を考えているなら、まずは自分の事業のビジネスモデルや強みをしっかり理解することが大切です。
後継者となる人に現段階でのビジネスモデルや強みを説明することが、事業承継のはじめの一歩といえるでしょう。
現状以上の事業のスケールアップを求めるなら、あなたがこの事業のビジネスモデルや強みを十分に理解し、説明する機会も出てくるかと思います。
その説明の機会をしないと、せっかく今まで築き上げてきたあなたのホテルや旅館独自の良さが失われてしまう可能性が高いからです。
ホテルや旅館のリピーターは、その宿泊施設ならではとなる良さに惹かれて利用することが少なくありません。
そのようなことが起こらないように、あなたは再度、この事業のビジネスモデルや強みを確認する必要があります。
自分自身が十分に理解してからこそ、それを後継者に正しく伝えるようにするにはどうすれば良いのか考えるフェーズになります。
具体的な話は、3.3で紹介しますが、ビジネスモデルや事業の強みは、具体的な数字や表を交えながら説明すると情報の受け手にとっては理解しやすいものになります。
もしも自分だけではビジネスモデルや事業の強みを把握しきれない場合は、従業員やM&Aアドバイザーに聞いてみると客観的な意見が聞けるでしょう。
その際、まずは自分でできるだけその事業のビジネスモデルや事業の強みの考えをまとめたうえで、周囲の人に相談したことがいいかもしれませんね。
M&Aにおける条件を明確にする
ホテルや旅館の事業承継をする際、もし「これだけは絶対に譲ることのできない条件がある」と考えているなら、それをしっかりと言語化しておくといいでしょう。
後継者候補が見つかったら、どのような条件で事業承継するのか話し合いが必ずあります。
事前にあなたの譲れない条件を明確にしておけば、時間を浪費することを避けることができます。
当たり前ですが、相手の希望する条件を聞いても自分の希望する条件が言えないとなると、話し合いが前に進みません。
また、その場は相手の求める条件を中心に話を進めたとしても、あとから妥協した条件で事業承継をしてしまったことに後悔するケースもあります。
事業承継の話し合いの前に時間をかけ、どの条件は絶対に譲れず、どの条件は妥協できるのかをしっかり決めておきましょう。
大事なことは、単にあたなの利益だけ追い求めるだけではなく、ホテルや旅館の後継者や従業員、お客さんのことまでを意識したうえで条件を考えることです。
例えば、従業員の雇用を守りたい場合は条件としてしっかりと後継者に提示してください。
その条件がホテルや旅館の事業承継を成功させるカギとなります。
売却先に事業の強みや価値を伝える
ホテルや旅館を事業承継するなら、後継者に事業の強みや価値が伝わる説明をしなければなりません。
3.1で事業のビジネスモデルとその強みを再確認したと思います。
それを受けて、新しいオーナーとなる人にあなたの今まで経営してきた情熱や思い出を語るだけではなく、客観的なデータを相手に見せることが重要です。
事業の強みや価値は、全てではないですが、ひとつの指標として日頃のホテルや旅館の売上や客数という数字に表れます。
まずは、どれくらいの客数でいくらくらいの売上が出ているのかを確認しましょう。
グラフなどを作れば、自分の頭の中でも理解が進み、情報の受け手の理解が進むことでしょう。
一般的に、客観的なデータを積み重ねることによって、事業を引き継いでくれる人に事業の良さを理解してもらいやすいといえます。
そのうえで、あなたの情熱も後継者に伝えることが事業承継においては欠かせません。
繰り返しになりますが、新オーナーに説明するための資料作りや伝える練習は入念に行う必要があります。
資料作りが苦手なのであれば、専門家に頼ったほうがあなたの理想の形に近づけるかもしれません。
M&Aの専門家に相談する
ホテルや旅館の事業承継を行うなら、M&Aの専門家に頼るのも正しい選択です。
事業承継をあなたの希望通りに成功させようと思ったなら、率直に様々な知識が必要となります。
例えば、会計や経営、法律などというような幅広く深い専門知識も重要です。
つまり、自分だけで手続きを完ぺきにすることは難しいことでしょう。
手続きがうまくできていないまま無理やり事業承継を進めても、あとから後継者と揉めることになりかねません。
一度揉めてしまうと、事業承継を成功させるハードルが高くなってしまいます。
だからこそ、ホテルや旅館の事業承継が失敗する可能性を下げるためには、M&Aアドバイザーや事業承継アドバイザーなどの専門家の力を借りることが適切な手段です。
M&Aアドバイザーや事業承継アドバイザーなら、後継者探しや後継者育成の方法、事業の拡大方法も提案してもらえることでしょう。
事業承継は人生で何度も行うようなことではないので、せっかくならプロの力を頼ってあなたの理想の形に近づく結果にすることは正しい選択といえます。
最後に、事業承継は後継者探しからその譲渡まで長い期間が必要です。
もし今、事業承継をしようと思ったなら、早めに専門家へ相談に行くのもいいでしょう。
上記の4つが主にホテルや旅館の事業承継を成功させるポイントです。
ホテルや旅館の事業承継は、絶対失敗しないとは言い切れません。
しかし、先ほど挙げたポイントを抑えておくことによって、成功する確率を大幅に高めることができるはずです。
逆に、肝心のポイントを抑えていなければ、せっかくの事業承継も失敗に終わるかもしれません。
ホテルや旅館の事業承継が成功すれば、また何年もの間、あなたの愛着のある事業が続いていきます。
それだけではなく、これまで以上に事業が大きく伸びることも少なくありません。
その為には、最後の3.4で挙げたように、積極的に専門家に相談に行くのも適切な手段です。
ホテル・旅館の事業承継を行うなら
ホテルや旅館の事業承継を行おうと思ったのなら、早めに準備を始めたほうが成功しやすいです。
事業承継は単に後継者に経営権を渡して終わりという簡単なものではありません。
あなたのホテルや旅館独自のサービスや、従業員の接客、経営理念など、様々なことを後継者に引き継いでもらう必要があるのです。
このような目に見えにくい資産は、一朝一夕では引き継げません。
したがって、事業承継は早い段階で動き始めれば始めるほど、成功する可能性が高まるといわれています。
後継者を見つけて安心してホテルや旅館の経営を任せられるまでに教育するのは、あなたが思っているよりも時間がかかるケースが多いです。
経営者としての地位を後継者にはお願いするとしても、実際に現場での仕事も行ってもらう必要があります。
ホテルや旅館の仕事は覚えることも多く、従業員の上に立てるくらいにまで習得するのには短くても1年以上はかかるはずです。
なので、できるだけ早めに事業承継の準備に取り掛かり、事業承継の為の手続きを決めていきましょう。
早めに動きだし、事業承継の手続きを進める為には、まずは事業承継の専門家である事業承継アドバイザーやM&Aアドバイザーのところに相談に行くのはどうでしょうか。
このような専門家とあまり接したことがない人も多いかと思います。
しかし、事業承継を何度も経験してきているプロに相談することで後継者への事業の引き継ぎが成功しやすくなることでしょう。
まずは、堅苦しくならず、気軽にアドバイスをもらいにいけば、きっと良い方向に事業承継が進んでいくのではないでしょうか。
実際に話した後、今後も安心して任せられそうだと思ったら、そのまま相談を続ければいいだけです。
もし、安心して任せられないと思えば、その相談を継続する必要はありません。
自分ですべての事業承継ができる人を除き、安心して相談できる専門家を見つけることが、あなたのホテルや旅館の事業承継を成功させるための第一歩となります。
早めに専門家探しや資料の準備に取りかかり、事業承継を成功させましょう。
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