
美容室の経営からの撤退を検討する際には、廃業を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
最近では、他の経営者や企業に事業を引き継ぐ「事業譲渡」を選ぶ美容室が増えてきています。
廃業ではなく事業譲渡を選ぶことで様々なメリットを得られますが、事業譲渡の成功のためには専門家のサポートを受けて慎重に進めなければなりません。
ここでは、美容室の事業譲渡のメリットや注意点をご紹介します。
目次
美容室が事業譲渡の道を選ぶメリットとは
廃業ではなく事業譲渡を選ぶ美容室が増えてきているのは、それだけ事業譲渡のメリットが大きいためです。
事業譲渡のメリットを1つずつ確認していきましょう。
経営のプレッシャーから解放される
美容室の経営を続けるためには、常にプレッシャーと戦い続けなければなりません。
経営者は、美容室で働いているスタッフの生活を支えています。
経営難に陥り、やむを得ず廃業することになれば、スタッフが路頭に迷う可能性があるのです。
美容室の件数は非常に多く、それだけ美容師の数も増えてきています。
しかし、美容師の数は1店舗につき何人までなど、人数制限が設けられていることがほとんどであるため、うまく転職できるとは限らないのです。
このように、自分以外の人の生活も支えているというプレッシャーに押しつぶされ、廃業を考える方は少なくありません。
事業譲渡によって他の人や企業へ美容室の経営を引き継ぐことができれば、スタッフを路頭に迷わせるようなことなく、美容室を存続させることができるのです。
後継者問題の解決
ある程度の年齢になると、経営者の立場から退き、後継者へ引き継ぐことを考えます。
しかし、後継者は簡単に現れるものではありません。
美容室の経営者は、基本的に美容師です。
そのため、腕の良い美容師を後継者候補にすればよいと考える方もいますが、それだけでは希望通りの結果となりません。
美容室の経営者になるためには、美容師としての腕が良いことだけではなく、経営に向いている性格で、あらゆるノウハウを持っている必要があります。
単純に美容師としての腕が良いだけの人物を後継者にしてしまうと、美容室のブランディングやマーケティング、人材の獲得などにおいて問題が起こり、売上が落ちる可能性があります。
事業譲渡では、経営に関するノウハウを持つ人物や企業に引き継げる可能性が高く、譲渡後も美容室の存続が期待できるのです。
事業や店舗の拡大
1店舗だけで売上を伸ばすのには限界があります。
しかし、店舗を拡大させたくてもノウハウを持っておらず、失敗を恐れて行動に移せないという方もいるでしょう。
特に、店舗を増やすために借り入れが必要な場合、店舗の拡大を諦めてしまうケースが多くみられます。
事業譲渡によって資金力がある人物や企業に美容室を引き継ぐことで、これまでに築き上げてきた美容室の店舗拡大が期待できるのです。
買い手としても、事業を拡大できるという大きなメリットを得られます。
買い手が美容関係の企業の場合、その事業の1つとして美容室の事業を受け継ぐことができます。
事業の拡大により、収益源を増やすことができるのです。
このように、事業譲渡は売り手だけではなく買い手にもメリットがあるため、対等な立場で交渉を進めることができます。
また、事業全てではなく一部だけを譲渡することも可能です。
美容室の経営はこれまで通り行い、経営支援を受けるという形で経営を続けられます。
従業員の雇用安定や待遇改善
黒字経営であるものの売り上げに伸び悩んでいる場合、従業員の待遇を改善することは難しいでしょう。
また、そのときの経営状況によっては、勤務日数を減らすことも考えることになります。
このような、従業員の待遇改善や雇用安定のためには、資金力が必要です。
事業譲渡によって資金力のある企業に売却すれば、従業員の雇用安定と待遇改善が期待できます。
これは、交渉のときの条件の1つとして提示しておくことをおすすめします。
これまで長く働いてきてくれた従業員の待遇が改善されれば、安心して経営者の立場から退くことができるでしょう。
譲渡による現金獲得
事業譲渡は、無料で企業や人物に事業を渡すのではありません。
その美容室の売上や成長性、ブランド力など様々な要素を加味して算出された金額で売却するのです。
そのため、美容室が事業譲渡において高い評価を得ることができれば、それだけ多くの現金を手元に残すことができます。
廃業の場合、簿価上の価値と換金価値の相違によって、手元に借金が残るケースがあります。
そうなれば、事業から撤退後も借金の返済を続けることになり、今後の生活を圧迫してしまうかもしれません。
事業譲渡によって手元に多くの現金を残すことができれば、ハッピーリタイアもできるでしょう。
ハッピーリタイアとは、事業譲渡などで手元に多くの現金を残し、悠々自適の生活をおくることです。
手元に借金が残ってしまうと、これまでに行ってきた事業の意味についてわからなくなり、悩んでしまうことになるかもしれません。
美容室の事業譲渡の事例
全国に数百店舗の美容室を展開する企業は、より多くの店舗を展開するために、フランチャイズを利用していました。
しかし、目標となる店舗数を達成するためには、現在の管理体制では難しいと考え、資金力を持つ企業へ事業譲渡したという事例があります。
事業譲渡後、現経営者が退任するのではなく、引き続き経営者として舵取りをしつつ、譲渡先の企業の経営ノウハウを取り入れるという形で事業譲渡をしたパターンです。
より強固な組織体制を構築できるため、店舗の拡大が容易になります。
このように、経営ノウハウに問題を抱える場合にも事業譲渡がおすすめです。
美容室の事業譲渡の事例から見る注意点
美容室の事業譲渡には多くのメリットがありますが、どの企業・人物に売却してもよいわけではありません。
慎重に進めなければ失敗に繋がります。
事業譲渡の失敗としては、思っていたほどの金額で売却できなかった、思っている以上に交渉に時間がかかり、その間に経営が悪化してしまったといったことが挙げられます。
このような失敗を防ぐために、次のようなことに注意が必要です。
ビジネスモデルの収益性や独自性は譲渡額に反映する
事業譲渡の際には、譲渡額を算出します。
譲渡額は、次のような要因で決まります。
・ビジネスモデルの収益性
ビジネスモデルの意味は様々ですが、事業譲渡においては「収益を継続して得るための仕組み」のことです。
どのようなビジネスモデルで収益を挙げているのかによって、譲渡額が変わります。
継続して多くの収益を挙げられるビジネスモデルであれば、それだけ譲渡額が上がるでしょう。
また、そのとき限りではなく、継続して通ってもらえる顧客がどれだけいるかも関わります。
・独自性
美容室は非常に多いため、独自性がなければ顧客を作ることは難しいという意見もあります。
独自性があれば、ブランディングに繋がり、美容室の価値が高まります。
美容室の価値が高くなれば、それだけ多くの収益に繋がるため、譲渡額も高くなるのです。
・スタッフの質
企業の経営を支えるのは、現場で働くスタッフです。
スタッフに数々の賞を獲得しており、多くの顧客を持つ美容師が入れば、それだけ企業の価値が高まります。
スタッフが多いだけでは、譲渡額は上がりません。
それどころか、客数に対してスタッフが多すぎると考えられる場合には、譲渡額が下がってしまうことも考えられるのです。
適正な人員数と配置でベストな収益を得ていることが大切です。
・純資産額
企業の資産と負債の状況からわかる純資産額を譲渡価格に反映します。
負債を多く抱えていれば、それだけ譲渡額は低くなります。
資産は、企業の収益性を表しているため、資産が多ければ多いほどに譲渡額は高くなるでしょう。
譲渡先が必要とするのは数字やデータによる裏付け
事業譲渡の際には、美容室への思い入れを熱く語ることも大切ですが、譲渡先が必要としているのは数字やデータです。
収益を多く挙げていることを口で伝えても、裏付けられる数字やデータがなければ信用してもらえません。
数字やデータを提示し、美容室の価値を伝えることが大切です。
譲渡額は、次のような項目によって修正されるため注意が必要です。
・売掛金
クレジットカードのように、1ヶ月もしくは半月に1回の頻度で入金されるものを売掛金といいます。
売掛金は基本的に譲渡額に影響を及ぼしませんが、回収できない分がある場合は譲渡額減額に繋がります。
クレジットカードの未払いについては、カード会社が客に催促するため、美容室への入金に支障はありません。
施術後に会計ではなく、毎月末に銀行振込をするといった方法をとっており、売掛金を回収できない場合は譲渡額が減額されます。
・商品
取り扱っている商品の在庫も美容室の資産です。
しかし、大量発注したものの全く売れずに在庫を抱えてしまっているような場合は、不良在庫として譲渡額が減額されます。
全てのデータを提示することで、予想していたよりも譲渡額が安くなることに気づくケースもあります。
データを予め確認しておき、大体どれぐらいの譲渡額になるか確認したうえで、事業譲渡を検討しましょう。
長い時間が掛かる場合もある
事業譲渡において、企業価値を算定しても、そのとおりの額で交渉が成立するとは限りません。
基本的に、希望譲渡額には経営者の美容室に対する想いが加算されているため、買い手企業の希望額よりも高くなってしまいます。
売り手としては、思い入れを大切にしたいため、買い手との考え方に相違が生じ、交渉が長引くケースがあるのです。
交渉が長引けば、それだけ店舗拡大や従業員の待遇改善などが遅れ、スタッフから不満の声が漏れ始める可能性もあります。
そうなると売上が落ち、譲渡額にも悪影響が及ぶことも考えられるでしょう。
しかし、交渉を焦っては良い取引にはなりません。
早い段階から事業譲渡の計画を立てておき、できるだけ予定通りに譲渡できるよう進めることが大切です。
事業譲渡は人対人
事業譲渡において注意したいことは、人対人で交渉することです。
譲渡額の算出方法はマニュアル化されていないため、数字が全く同じでも企業によって譲渡額が変わります。
そのため、交渉の進め方次第で、事業譲渡が良い結果となるかどうかが決まるのです。
社員ではなく経営者同士が事業内容や経営理念などについて話し合い、お互いの理解を深めます。
どれだけ条件がよくても、経営者同士の相性が悪いと、スムーズに交渉は進められません。
経営者同士で話し合いを繰り返し、信頼関係を築けてから売買の交渉を行います。
交渉では、売却までのスケジュール、いつまでに引き渡すか、現在働いている従業員の扱い、今の経営者は退任するのか、それともそのまま重要なポジションに移って経営に関わり続けるのかなどを決めます。
事業の買収について前向きな姿勢を持つ買い手の場合、売り手が提示した条件の多くを承諾してくれます。
ただし、売り手に明らかに不利な条件は信頼関係を崩すことに繋がるため、避けなければなりません。
美容室の事業譲渡を行うなら
美容室の事業譲渡を行う場合は、事業譲渡の専門家やアドバイザーに相談しましょう。
事業譲渡は、当事者同士だけで交渉できますが、それでは話がうまくまとまらない可能性があります。
仲介者としてM&Aや事業譲渡の専門家を招くことで、双方にとって良い取引となるでしょう。
また、企業価値の算出に関する知識を持っているため、適正な価格を提示できます。
計算ミスによって企業価値を低く見積もってしまえば、それだけ損をしてしまいます。
事業譲渡によるメリットを最大限に活かし、良い結果を出すためにも専門家に相談しましょう。
また、M&Aの仲介者は買い手企業の選出もしてくれます。
事業譲渡したいけれど、誰に話を持ち掛ければよいかわからないという方は多いでしょう。
また、自分で選んだ企業が信頼できる企業だとも限りません。
専門家に相談すれば、現在の美容室の状況や経営者の希望などを加味したうえで、適した買い手企業を選出してくれるのです。
美容室の事業譲渡を行う場合は、相談が無料のM&Aや事業譲渡に関する専門家に依頼してみましょう。
成果報酬型であれば、美容室の事業譲渡が決定されるまで費用はかかりません。
美容室の事業譲渡事例を持っている専門家なら、より頼りにしやすいですよね。
完全成果報酬型で美容室の事業譲渡の事例を持つ相談先として、渋谷にある会計事務所、M&Aコンサルティング社がおすすめです。
他の相談先と異なるのが「匿名で相談や査定ができる」という点です。
美容室の事業譲渡の専門家やアドバイザーは、事業譲渡を実施しなければ儲けを得られないわけですから、基本的には事業譲渡をさせたいわけです。
そのため身元を明らかにして相談すると、あとあと営業などが面倒そうですよね。
「やっぱり事業譲渡はやめたい」と思っても言い出しにくいかもしれません。
その点、M&Aコンサルティング社は匿名で相談ができるので、このような心配はいりません。
もし美容室の事業譲渡について悩んでいる、事例を聞きたい、という場合は、一度問い合わせてみてはいかがでしょうか。
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