建設業の事業承継【事例から読み解くポイント】

近年の建設業界は変化が早く、事業運営に必要な知識やコストも加速度的に増加しています。事業体系の変革が進んでいる時期でもあり、これからの建設会社の運営には幅広い視野を持って最適な手段を実施していける決断力が重要となってきます。

本稿では建設業の特性と現状を基にM&Aが増加している背景に関して基本的な解説を実施したうえで、建設業界で実施された事業承継の事例について紹介します。

 

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建設業が事業承継を行う背景

2017年度における建設業の事業規模は56兆円とされており、2003年からの最高値を2年連続で更新しています。2020年の東京五輪に向けて公的機関による交通インフラの整備と、オリンピック特需に合わせた建設ニーズの増加が進んでいることから、2018年度以降も建設業の事業規模は拡大されていくと思われます。

しかし、2021年以降は建設会社への集中的なニーズが収束することによって国内人口の減少による問題が表面化し、国内向け建設事業は厳しい状況に置かれる可能性が高いです。

建設業は受注した案件に沿って建造物を作成して引き渡す典型的な受注請負産業であり、単純な事業規模よりも建築に関する資格、技能を持った人員の数が重要な産業と言えます。近年は中堅以上のゼネコンでも技能者の育成が追いつかないことが珍しくなく、一定以上の技能を持つ人員をまとめて獲得できるM&Aが注目を浴びています。

経営者の高齢化に伴う後継者問題も背景にあります。特に建設会社の場合は地方でシェアを伸ばしている業者が廃業してしまうと該当地域を担当する建設業者が不在となり、地域経済に大きな影響を与えることになります。休廃業を選択する事業者の2割は建設業者とされており、最も多い3割を占めるサービス業に続いて2番目に多いとされます。

事業が好調でも時間に余裕が無く、後継者教育に充分な時間を割けないというケースは多く想定されます。M&Aは適切に実施すれば1年程度で完了できることから猶予のない経営者でも会社の継続を図れる有用な手段です。

 

建設業の事業承継の事例

建設業は事業規模によるメリットが比較的少なく、M&Aが活発な業界ではありませんでしたが、2012年以降は件数が増加しています。他業種への事業譲渡も活発化しており、業種ごとの強みを活用して事業を成功させるM&Aも今後増えていくと予測されています。ここでは建設業で実施された事業承継の事例を紹介します。

 

事例1:下村建設が美樹工業へ建設事業を譲渡

兵庫県内を中心に建築業および土木工事、舗装工事等の住宅関連事業を実施している美樹工業株式会社が下村建設株式会社より建設事業を譲り受けることを2015年10月28日に発表した。取得金額は2億円。下村建設は大阪府下を中心に不動産業及び建設事業を展開しており、売上高は約10億円とされている。今回の事業譲受によって商圏の拡大を図ると同時に事業競争力の強化を推進するとしています。

 

事例2:積水化学工業がフクビ工業へ環境事業を譲渡

積水化学工業株式会社環境・ライフラインカンパニーが、保有するフェノールフォーム断熱ボード事業を2018年8月24日付でフクビ工業へ譲渡する契約を締結したことを同年9月10日に発表しました。フクビグループの強みを生かすことで譲受した事業の販路拡大を見込めるとし、企業価値向上に繋がるものと判断したとされます。

なお、販売事業に関してはフクビ工業が担当し、製造事業に関しては譲渡実施に先がけてフクビ岡山株式会社を子会社として新設し、同事業を担当するとされます。

フクビ工業は住宅用建築資材および樹脂製品の製造、販売を主な産業としており、素材開発から成型までを一貫して担うことによって、幅広い分野における日常を支える高品質な製品を提供している企業です。

子会社の設立年月日は2018年10月1日であり、事業譲渡の実施予定日は翌年1月1日となっています。

 

事例3:ハイアス・アンド・カンパニーがアンビエントホールディングスからリフォーム事業などを譲受

ハイアス・アンド・カンパニー株式会社が、株式会社アンビエントホールディングスおよび株式会社ハウス・イン・ハウスより、R+House事業、アーキテクチャルデザイナーズマーケット事業、ハウス・イン・ハウス事業を譲り受けることを2018年1月19日に決議しました。同社は譲渡先の2社と共同で事業を展開していたが、事業運営をより効率的にするためにこれらの事業に係る技術本部を中心とする機能を譲り受けたとしています。

今回の事業譲受によってグループシナジーが更に進み、同社グループの企業価値向上に有益な効果があるとされています。

 

事例4:ウィルが株式会社村上よりリフォーム事業を譲受

株式会社ウィルが100%出資子会社として株式会社遊を設立し、株式会社村上より住宅リフォーム事業を譲り受けることを2013年11月1日に決議しました。同社はファミリー層を主要な対象として住まいや暮らしに関する各種サービスを提供しており、特にリフォーム事業を主要な事業スキームとして経営を拡充しています。なお、株式会社村上は神戸および芦屋エリアを中心とした富裕層向けの高価格帯リフォームを得意としています。

当事業譲受によってターゲット層の拡大、設計及び施行ノウハウの共有、ネームバリューの強化などが見込まれ、収益性の向上が可能になるとされています。

 

建設業の事業承継のポイントとは

近年の建設業ではM&Aによる事業承継が増加してきましたが、建設需要が増加し始める2011年以前は親族内承継や社員への承継が主流でした。業界の特性上からM&Aを実施するメリットが薄かったことが理由ですが、建設需要の急速な増加に対応する形でM&Aに踏み切る企業が増加したという背景があります。とはいえ、現在も建設業界の基本的な性質は同じです。適切に事業承継を実施するには建設業界の性質を理解したうえで進めていく必要があります。ここでは重要なポイントや知識を解説します。

 

事業承継する際のタイミングと景気

2020年度までは建設業におけるM&A件数の増加が続くと見込まれますが、事業承継の交渉には時間が掛かります。前準備の段階に於いても人員不足による工費の増加と収入減といった理由で赤字経営になっていた場合は相手企業から売却を断られるリスクが跳ね上がります。事業承継を確実に成立させるには経営を立て直したうえで実施する必要があります。

経営を立て直したうえで交渉過程に進むと考えた場合、事業承継を成立させるまでには2~3年ほど必要だと仮定しておくことを推奨します。1社目の候補との交渉が決裂した場合は2社目以降を探すことになります。調整期間を短縮して承継を強行しても売却側に不利な条件になりやすく、成立後に簿外債務や偶発債務が出てくると承継を取り消されたうえで損害賠償を請求されうるリスクも想定されます。問題なく事業承継を完了するには早期から準備を進めておくことが大切です。

リスクの回避以外にも、建設業界全体が上向きである現在は早く準備を始めるほど大きなメリットを得やすくなります。2011年に発生した東日本大震災の復興特需から間を置かずに東京五輪への準備が重なり、人材確保や事業水準の向上を目的としてM&Aを用いる建設業者が増加しています。

しかし2021年以降の先行きは不透明で、少なくとも2020年までよりは悪化する可能性が高いことは認識しておく必要があります。

 

社員の数や採用力

人材確保を目的としたM&Aでは譲渡側企業の社員の数や新規採用力が重要視されます。建設業界における新規採用数自体は2010年から下げ止まっていますが、長時間労働に見合った対価を支払える体制を構築できていない中小業者が新規雇用者を募集しても応募が見込みづらい状況となっています。

採用できた場合でも事業が好転していかないと新規教育に費やしたコストを回収できる前に労働条件の良い同業他社や他業種へ移ってしまう可能性が高いです。早ければ数カ月でやめるケースも少なからずあり、建設会社にとって新規採用を実施することは多くの困難を伴います。

それゆえ、技能を習得している社員を一度に複数人確保できるM&Aは教育コストを大幅に削減できる手段となり得ます。特に現場代理人として実績を上げているような社員は貴重であり、譲受側企業にとっては優先的に確保したい人材と言えます。事業承継によって建築技能者の人数を確保できた場合は建築サービスの質が上がるほか、従業員1人当たりの負担を軽減させることも見込めます。労働条件の改善に繋がった場合は新規採用者に対して良質な雇用条件を提示できるようにもなり、長期的な利益にも影響してきます。

 

事業承継後の目指す目標の設定

事業承継を進める上で何を最終的な目標として実施するのかは重要です。目標によって最適な承継時期、方法などは異なりますが、明確な方針を定めずに準備を進めると相続に関するトラブルや、後継者教育の期間を充分に設けられないなどの問題が予想されます。

後継者問題の解決を目的としている場合はM&Aを活用した承継に限定されるので、従業員の人数や技能、財務諸表に関する情報、中長期的な事業計画の正確性が特に重要となってきます。

特に事業計画は今後の会社や業界に関する予測分析、経営方針、数値的な成長目標などが含まれており、企業価値の算出に大きく影響する要素です。譲渡側企業にとっては獲得できる金額と承継の成約率を大きく左右するデータの1つなので、出来るだけ具体的な根拠に基づいて正確な情報を記載する必要があります。

スムーズに事業承継を実施するには事業承継計画書を作成し、経営者と後継者の経営に対する知識及び認識を一致させることが重要です。

後継者にとっては会社の経営方針や事業計画などから、各種資産の相続時に必要な知識を共有することが出来ます。経営者自身も事業承継の流れを再認識することが可能であり、トラブルを避けながらスムーズに手続きを進めやすくなる効果が見込めます。

 

M&Aの専門家に頼るのもアリ

経営者の親族や社員への承継は社風や経営方針を維持しやすいことがメリットですが、承継によって経営状況を大きく改善するのは難しいとも言えます。後継者教育を実施する期間の設定や、自社株式の譲渡にかかる資金の準備などを経営者個人で検討して実施するのは少なからず時間と労力を要します。既に準備が整っている場合でも、承継後は各種資産の譲渡費用によって経営が一時的に不安定になることや、取引先への周知を実施する期間を考慮して第一線を退いた後も1~2年程度はサポートを行う期間を設けておく必要があります。

2021年には建築業界への需要が減少することを考えると、出来るだけ早くに承継する必要があります。現在から検討し始める場合は親族内承継や従業員承継だと充分な準備期間を設けることが難しいですが、大手M&A仲介業者に依頼してM&Aを進めた場合は半年から1年ほどで売却先探しから承継手続きの完了まで進められた事例も少なからずあります。

近年の建設業界は特需が重なって多くの建設会社が人手不足の状態で、仮に幾らかの債務を抱えている場合でも優れた建築技能者を引き継げる場合はM&Aによる事業承継が出来る可能性があります。大手M&A業者の統計によると、建設会社によるM&A件数は2011年の約45件から2017年には約90件と倍程度に増加しています。

建築技能者の確保や事業承継の目標決めなどは経営者が準備を進めておくことですが、M&A仲介業者は適切な売却先探しや各種書類手続きなどをサポートする機関として有用です。利用を検討する場合は建築業界に詳しく、建設会社のM&Aを多く成立させている仲介業者へ相談することを推奨します。

 

建設業の事業承継を行うなら

建設業界では技能者不足や後継者不在が問題となっていますが、問題を解消する手段としてM&Aを実施する建築業者が増加しています。東京五輪に向けて市場は活況にあり、建設会社の事業承継を行うのは2020年までが最適なタイミングです。建設会社同士のM&Aは事業領域の拡大や技術水準の向上が見込みやすく、適切に実施すれば従来の顧客にワンランク上の建築サービスを提供していくことが出来ます。現在から準備を始める方はM&A仲介業者に相談をしたうえで早めの行動を心がけてみてはいかがでしょうか。

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