バルの事業承継【事例から読み解くポイント】

日本全体での人手不足はもはや危機的状況となり、外国人材受け入れについての法改正もされました。

この人手不足は飲食業界については特に深刻で、人材不足そのものに加え、それから来る賃金の上昇も経営の大きな足かせになりつつあります。

また、消費嗜好が多様化する中、アルコールの消費量は総量と成人一人当たり消費、共に減少を続けており、酒類を提供する業態へのニーズが減ってきています。

経営環境が厳しさを増す中、バルの廃業を検討されているオーナーの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここでは廃業するのではなく、事業承継を選択する場合のメリットやそのための注意点などをご紹介します。

 

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バルが事業承継を行う背景

まずはバル業界の市場環境を整理した上で、バルの事業承継がなぜ行われるのかを紐解いていきましょう。

 

バルの置かれる厳しい現状 

バルを含む飲食業界の経営は年々厳しさを増しています。

少子化の進行により日本の人口が減少し続けていることから、消費マーケットは縮小を続けています。

マーケットが縮小を続けているということは、同じ手法で商売を展開している限りは売り上げは先細りになってしまうということです。

また、原材料費の高騰からくる仕入れ値の上昇も経営に打撃を与えています。

 

そして冒頭で触れた人手不足です。

2018年12月の日銀短観や2018年11月の厚労省一般職業紹介状況の数値を見ても、全産業が人手不足に陥っているなかで飲食業の人手不足感は突出しています。

これらの厳しい状況を反映するかのように、飲食店は開業から5年以内に2割近くが廃業に追い込まれるというデータ(「新規開業パネル調査」日本政策金融公庫)もあります。

バルを含む飲食店経営者に対するプレッシャーは現在非常に大きい状態です。

 

社会の高齢化と歩調を合わせて経営者自身の高齢化も進んでいます。高齢化により経営から身を引ひいて子にあとを継いでもらいたくとも、様々な要因でそれすら難しいことも珍しくありません。

 

バルの事業承継の背景 

実際のバルの事業承継は、後継者により3通りに大別することができます。

 

子を含む身内への承継は一番自然で、固定客や従業員といった周囲からの理解も得やすい選択です。

現経営者としても一番よく知った人物に店を託せることから安心できるでしょう。

しかし、核家族化が進んだ結果、後継者候補となる人物の絶対数が少ないため、年々厳しくなっていく経営環境下でビジネスを継続する能力のある人物が見当たらない場合があるのが問題です。

また、現在の経営状態が思わしくなく、負債がある場合は、身内に事業承継を行うと負債は身内にとどまり続けるというデメリットもあります。

 

つぎに、現在の従業員の中から、経営者として適していると思われる人物に後継を依頼する方法があります。

この場合、後継者候補は業務についてよく知っているため、事業承継時の人材育成期間が短くて済みます。

人手不足の現在ではこれは非常に大きなメリットとなり得ます。従業員を後継者とする場合の問題点としては、後継者が事業を買い取るだけの資金を持っていないことが多い、ということがあります。

また、場合によっては現経営者の相続対象となる人物や他の従業員からの理解を得にくいこともあります。

事業承継の前に、現経営者と相続対象人物との間で、事業を従業員に継がせることへの十分な同意を得ておかないと、後々経営上のトラブルになりかねません。

 

最後は後継者を第三者とするケースです。

この場合は一部店舗や業態を第三者に託すのであれば事業売却、全体を譲り渡すのであれば株式譲渡(M&A)を行うのが一般的です。

 

バルのM&A 

M&Aによりバルの事業承継を行う場合、多くのメリットが考えられます。

 

現経営者は売却により現金を手にすることができます。

廃業した上での不動産単体(スケルトン)や居抜きでの譲渡(造作譲渡)と比較して、事業全体での売却はそれよりよい売却価格となることも珍しくありません

 

買い手から見ると、飲食店の新規開業にはスケルトンや居抜きの状態から造作をし、メニュー構成やコンセプトを考え、人を採用して育成しといった多くのステップを必要とします。

事業ごと買収することで買い手はこれらの段階を飛ばして一気にビジネスを開始することができます。

飲食業での人手不足が深刻な現在では人材確保・育成の部分をパスできるのは特に魅力が感じられる点です。

 

また、SNSの普及により、個別の店や小規模チェーンに対する一般消費者の心理的な敷居が下がる一方、チェーン店への魅力は相対的に低下しています。

そのため、大規模事業者であっても、地域で強いブランドを持つ小規模事業者ののれんをそのまま維持する形で買収する形での規模拡大を行うことも増えています。 

加えて、飲食業は仕入れや物流の共通化によるスケールメリットを追いやすい業態です。

大規模事業者としては規模の拡大を図る際に1店ずつ開店していくより、地域の中小規模チェーン店を買収することで一度に開店するほうが利益を出しやすいのです。

 

売り手としては廃業する場合と比較して、のれんを継続できる、従業員や仕入れ先、固定客に迷惑をかけずに済むというメリットもあります。

飲食業界は極端な人手不足の状態ですから、廃業しても職に困るということは少ないかもしれませんが、味やオペレーションのノウハウは失われてしまいます。

従業員にとっては雇用関係そのものだけでなく、現在の店で今まで積み上げてきたものをそのまま生かし続けることができるということがメリットでしょう。

 

M&Aというとマネーゲームを想像してあまりいい印象がないかもしれません。

しかし、M&Aの多くはニュースで見るような敵対的買収ではなく、友好的なものです。

特に株式が非公開である中小事業者に対しては敵対的買収を行うことはできません。

また、中小事業者では従業員も企業価値の主要な構成要素であるため、買収に伴って従業員が解雇されるケースも多くはありません。

参加するどのプレーヤーにとってもメリットがあるのがスモールM&Aです。

 

バルの事業承継の事例 

2017年6月27日、居酒屋「はなの舞」「さかな屋道場」などを展開するチムニー株式会社は、居酒屋「酔虎伝」「八剣伝」「居心伝」、スペインバル「BarVida」などを展開するマルシェ株式会社(売上高88億1,300万円、営業利益6,900万円、純資産30億5,800万円)の株式954,500株(発行済み株式のうち11.2%)を取得し、筆頭株主になることを発表しました。 

この事例では対象企業の筆頭株主が創業家からチムニー株式会社に移行しています。 

マルシェ株式会社は居酒屋業態を中心に全国で477店舗(2017年5月末現在)を展開しており、既存店舗の収益構造改革、店舗営業力や各種業態のブランド力強化に努めています。

チムニー株式会社は全国で746店舗(2017年5月末現在)を展開しており、職を中心とした総合サービス産業を目指しています。

 

マルシェ株式会社はチムニー株式会社と資本業務提携を結んで2社合計1,223店舗とすることにより、様々なシナジー効果を追求するとしています。

具体的には商品供給力やメニュー作成力、店舗営業力の強化を推進していきます。

また、マルシェ株式会社は関西圏や郊外に店舗が多く、チムニー株式会社は関東圏や首都圏に店舗が多いことから地域的な補完関係もあり、業務提携後は日本全国でこれらシナジー効果を発揮させられるとしています。

これらの施策を実行し、企業価値を向上させるためには中長期的関係が不可欠であり、資本関係を持つことが最も有効であるとして資本提携に踏み切りました。

スケールメリットを求めて事業承継が行われた一例です。

 

バルの事業承継のポイントとは 

バルの事業承継では、何に気を付けていけばいいのでしょうか。

これから事業承継を検討される方に向けてポイントを整理していきます。

 

ビジネスモデルや強みを整理する 

事業承継を行う場合、承継に先立って「事業の磨き上げ」を行います。

事業の磨き上げは、事業承継に向けて現在の問題点を洗い出して解消し、強みを伸ばすことで企業価値を上げる作業のことです。

 

問題点の洗い出しではまず経営に関する数値や契約をわかりやすくまとめます。

貸借対照表や損益計算書をできるだけシンプルな形にできるよう財務状態を整理していきます。

もちろん簿外債務や決算書の粉飾があったりすれば、売却は不可能ですし、隠したまま売却すれば後に大きなトラブルに発展しまいます。

税務関係も、過剰な節税対策は脱税につながりかねない部分もあるために控えます。

現経営者に経営が大きく依存してしまっている場合は、経営が属人化している部分を減らし、企業が組織だって動けるように体制を整えていきます

従業員との雇用契約や仕入れに関する契約も再確認して整理します。

この際、特に急に手元資金が必要になる可能性のある契約には注意を払う必要があります。

 

これら問題点を洗い出して整理しておくことで、最終契約直前に行われるデューデリジェンス(買収監査)への対応も落ち着いて行えます。

 

バルの事業承継に向けて長所を伸ばす部分ではメニューや味、店舗のオペレーションノウハウといったのれんの強化が主要な作業です。

 

事業の磨き上げを含む事業承継の準備は大変時間がかかります。

どうしても承継時における経営の不安定化のリスクは残ってしまいますが、その期間をスムーズに乗り越えるためには経営環境に余裕のあるタイミングでの承継を実施したいところです。

承継をより望ましいタイミングで行うためには十分な準備期間を確保してください。

 

M&Aにおいて譲れない条件をはっきりさせる 

事業承継の手段としてM&Aを選択する場合、承継にあたって譲れない条件が何か、を明確にしておく必要があります。

M&Aによる事業承継を決める理由は、「利益確保」「不採算店舗の切り離し」「高齢化等による引退」などです。

 

アーリーリタイアを望む、あるいは他業種へ転向するための資金確保のために、売却により現金を得ることが目的であれば、売却準備にもある程度時間をかけ、事業がよりよい条件で売却できるタイミングをうかがうべきでしょう。

 

不採算店舗や業態を切り離して経営をスリム化し、利益の上がる部分に経営資源を集中させたいのであれば、売却準備はスピード感をもって行い、売却条件より早期売却を追い求めることになります。

 

経営者が高齢による引退を考えるケースではのれんの継続が何より重要になることも少なくありません。

これまで時間をかけて育ててきた店の味や雰囲気、固定客との関係を大切にして、のれんの引継ぎを重視してくれる売却先を選びます。

 

このように売却目的により、売却準備の各ステップで行うべき行動や各ステップにかけられる時間が大きく変化することから、売却を決める際にはまずゴールをはっきりさせておくことが大切です。

 

売却先候補に事業の強みや価値が伝わる説明を 

売却額のベースとなるのが企業価値の算定で得られる金額です。バルを始めとする飲食業では企業価値の中でのれん代が大きな要素となります。

味やオペレーションノウハウ、店の雰囲気作りの工夫などでどのように強みを持っているか、という形がないものに値段をつけるのがのれん代です。

納得のいく条件での売却を望むのであれば、のれん代が正しく算定されるような努力が必要です。

 

のれんを構成する要素は、ともすると見て覚える、空気を感じるというように、感覚で伝えられる形になりがちですが、これをできるだけ文書化するなどして可視化していきます。

バルのように店の個性や雰囲気が比較的重要な要素となる業態では文書化しきれないながらも、店の強みを構成している部分がどうしても残ってしまいます。

可視化に限界のある部分については、売買交渉がまとまった段階でオーナーと後継者が共に店舗運営にあたる引き継ぎ期間を設けることがのれんの確実な継承に有効です。

 

M&Aの専門家に頼るのもアリ 

M&Aを検討する場合、専門の仲介業者への相談をおすすめします。 

M&Aの初期段階は売却先を選定することになりますが、まずこの部分が売り手の企業単独の力ではなかなかの難問です。

売却について周囲に声をかけることを繰り返し、売却の意思があまりにも広範囲に伝わってしまうと何か訳ありで売却を急いでいるという憶測が働いてしまいます。

これは、売却条件の悪化を招くだけにとどまらず、全く買い手がつかなくなることもあります。

秘密を守りながらの売却先とのマッチングは仲介専門業者の力を借りることでスムーズに進みます。

 

その後の企業価値の算定やデューデリジェンスへの対応では会計士や弁護士といった専門家の力が必要です。

仲介業者ではこういった専門家も用意して、M&Aプロセス全体に対して統一された窓口で対応が可能です。

 

相談先の仲介業者の選定は注意深く行いましょう。

店ののれんを正しく評価してもらうには、飲食業界でのM&A実績を多く積んでいる業者が望ましいと言えます。

 

バルの事業承継を行うなら

バルを事業展開していて何らかの理由で事業承継を考えた場合に注意すべき点について、事例を交えつつご紹介しました。

少子化が進み、生産年齢人口も減る中、親族や従業員以外への事業承継、すなわちM&Aも増えています。

決して特別な選択肢ではないM&Aを事業承継のための手段として検討してみてはいかがでしょうか。

 

その際にはM&Aの専門家を交えて進めていくことをおすすめします。

バルを含めた飲食店のM&Aについては、東京のスパイラルコンサルティング社がサポートを得意としています。

過去には15億円で飲食店のM&Aを成功させた事例もあります。

どうしたら売り手・買い手ともにwinwinとなるM&Aになるのか、そのポイントを熟知し、バルのオーナーが望む金額で会社を譲渡するためのSCALE型M&Aというサービスを提供しているコンサルティング会社です。

一度話を聞きに行くだけでも得るものがあるでしょう。

 

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