バルの事業譲渡【事例から読み解くポイント】

スペインを発祥とするバルですが、日本では軽食とお酒を気軽に楽しめる少し洒落た居酒屋として定着し、ブームを反映して店舗も多数オープンしました。 

一方で、バルを含む飲食店業界を取り巻く経営環境はここ数年だけを取ってみても非常に厳しさを増しています。

日本では少子化・高齢化が進み、消費は縮小の傾向にあります。

少子化の影響はそれだけにとどまらず、飲食店業界では異常ともいえる人手不足、そこからくる人件費の高騰という形で、経営にダメージを与えています。 

アルコール消費の中心年齢の人口が減少し、一人当たりのアルコール消費も減っていることから、国内でのアルコール消費量はピークである平成8年からは12%以上減少しています(「酒レポート 平成30年3月」国税庁)。

 

経営環境の厳しさを反映してか、バルが事業譲渡されることも増えています。

バルの事業譲渡について、事例を交えてポイントを見ていきます。

 

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バルが事業譲渡の道を選ぶメリットとは 

バルの経営から手を引くことを検討する場合、廃業ではなく、事業譲渡という選択肢も考えられます。

ここでは、バルを手放す際に事業譲渡を選択するメリットをご紹介します。

 

経営のプレッシャーから解放される 

国内の人口は2008年をピークに減り続けており、これにより経営環境は厳しくなっています。

市場がシュリンクする国内の状況を打開するために、大手であれば海外進出することも可能ですが、中小規模の事業者ではそれもなかなかできません。

また、国内だけを見ても、厳しい経営環境の中ではスケールメリットを得ることができる大手がやはり強く、中小事業者の経営者には厳しい状態が続いています。

開店当初と比べて、店の運営能力がそれほど変化していない、あるいは強化されていても、市場全体が悪化の方向に向かっているために、そのままでは経営状態は悪化してしまいます。

この状況下で大きなプレッシャーに向き合い続けている経営者も少なくありません。

事業譲渡という形で事業を手放すことにより、日々のプレッシャーから解放されることができます。

 

後継者問題の解決 

高齢化の波は店をおとずれる客だけでなく、経営者にも及んでいます。

バルの経営者が高齢化や健康問題による引退を考える際、身内や従業員だけの中からは後継者を見つけられない場合があります。

後継者がいない場合経営をどうするのか、ということになりますが、2017年版中小企業白書では、後継者がいない企業は後継者がいる企業の1.5倍の割合でM&Aによる事業継続を検討しています

M&Aという言葉に巨大投資ファンドによるマネーゲームという印象が持たれていたのはすでに過去の話で、M&Aの多くは友好的な形での事業や企業そのものの譲渡です。

少子化・高齢化による後継者不足の中、第三者に事業を譲渡することにより、事業継続を図る動きが強まっています。

 

事業や店舗の拡大 

中小事業者によるバルの経営で、経営環境の悪化などで経営に行き詰まりを感じている場合に、事業譲渡により事業や店舗数を拡大することができます。

SNSを始めとするソーシャルメディアの発達により、チェーン店に比べて新規の顧客が入りにくかった個店に対してのハードルは下がっています。

相対的に、大規模チェーンの魅力が減少しているため、大規模事業者が中小規模事業者を傘下に収める場合でも、そのブランドをそのまま維持した形で買収することが増えてきました。

譲渡側は経営を手放すことになっても、今まで育ててきた店ののれんが維持されることになり、大規模事業者のスケールメリットを得て、事業や店舗の拡大を託すことが可能です。

 

従業員の雇用安定や待遇改善 

バルの経営から手を引く際は廃業するか、事業を譲渡することで継続するかを選択することになります。

廃業を選択した場合、店舗は閉店となり、従業員は解雇されることになります。

現在、飲食店業界は極端な人手不足の状況にあるため、解雇された従業員が次の職を見つけるのはそれほど難しいことではないかもしれません。

しかし、従業員たちがそれまで積み上げてきた店での運営ノウハウや味は次の職場で役立てることができるとは限りません。

事業譲渡により店が継続する方がやはり従業員にとっては望ましいでしょう。

 

また、前項にあったように、店がより大きな規模の事業者の傘下に入っても、店ののれんはそのまま残されるケースも増えてきました。

こういったケースでは、従業員は今の店での運営ノウハウを生かしたうえで、より大規模な事業者の中で、充実した福利厚生を得る、あるいは数値的な待遇の改善を受けられるようになるという可能性もあります。

 

譲渡による現金獲得

事業譲渡では譲渡側は現金を得ることができます。

廃業の場合は不動産や造作のみの譲渡となりますが、バルの事業譲渡ではそういった資産のほかにのれんが加算されるケースが目立ちます。

不動産や造作譲渡の場合は譲渡先が事業をイチから構成してかなければなりません。

事業譲渡では、事業を丸ごと譲り受けるため、譲渡先も非常にスピーディーに事業を立ち上げることができます。

こういったメリットがあるため、事業譲渡では不動産や造作のみの譲渡の場合と比較して上乗せした金額での取引が行われるケースが少なくありません。

 

バルの事業譲渡の事例 

実際に飲食店の事業譲渡の事例をみていきましょう。

 

平成27年8月4日、株式会社クリエイト・レストランツ・ホールディングスが、「レインフォレストカフェ」をはじめとする飲食店舗を展開する株式会社アールシー・ジャパン(千葉県浦安市、売上高12億1200万円)の発行済み全株式を株式会社オリエンタルランドより取得しました。 

クリエイト・レストランツは、フードコートからレストランまで様々な飲食店の企画、運営を行う企業です。

アールシー・ジャパンは、ディズニーランドの運営でお馴染みのオリエンタルランドの子会社で、オリエンタルランドが運営する商業施設イクスピアリ等で、4店舗の飲食店を運営していました。

オリエンタルランドが施設運営に選択と集中を行う狙いがありました。

一方、クリエイト・レストランツは規模の経済を活かして、グループを強化することができます。

クリエイト・レストランツは観光地における事業を強化していきたいとの狙いもありました。

アールシー・ジャパンは大手グループの傘下につくことにより、ノウハウを得て、更なる成長を目指すことができます。

まさに、お互いの利害が一致した事業譲渡といえるでしょう。

 

バルの事業譲渡の事例から見る注意点

事業譲渡の過程では注意しなければならない点が多く存在します。

バルの事業譲渡での注意点について見ていきます。

 

ビジネスモデルの収益性や独自性は譲渡額に反映する 

事業譲渡の際にはいくらで売買するのか、という譲渡額を決めなければなりません。

譲渡額の決定は「事業の価値」という形があるようでないようなものについて値付けをする難しい作業です。

譲渡額を決定するのには「譲渡対象の事業に含まれる資産とのれん代を積み上げて算定する」「同種同規模の売買例をもとに妥当な額を決定する」「売買対象となる事業が将来生みだすと見込まれる収益に基づいて決定する」などの方法があります。

 

バルを含む飲食事業の譲渡では、事業価値に対してのれん代が大きな割合で算定されることが少なくありません

のれん代はその事業のブランド力や味、ノウハウといった形のないものに対して譲渡時に有形の資産に加算される価値のことです。ブランド力などによっては譲渡時点では赤字の事業であってものれん代がプラスに算定されることもあります。

 

ビジネスモデルが収益性に優れる、独自性がある場合、資産とのれん代を積み上げる事業価値算定法ではのれん代が大きくなることがありますし、将来収益に基づいた事業価値算定ではそのまま事業価値が大きくなります。

 

譲渡先が必要とするのは数字やデータによる裏付け 

事業譲渡の際に、譲渡側としてはよりよい条件や、メニューや味、ブランドといったのれんの確実な引継ぎを望むことにとなるでしょう。

 

好条件での譲渡を実現するために、譲渡側は譲渡の準備段階で「事業の磨き上げ」を行うのが一般的です。

事業の磨き上げとは譲渡対象となる事業の問題点を見つけ出して解決し、長所や差別化要因を洗い出して伸ばす作業です。

事業の磨き上げを行うことで、多くの場合、譲渡額を決めるための事業価値算定での数値をより良くすることができます。

ただし、磨き上げといっても事業を見かけだけを実態以上に飾り立てるということではありません。

厚化粧された事業が、譲渡後に化けの皮がはがれると大きなトラブルにつながりますので、注意が必要です。

 

バルを含む飲食業の事業価値算定においては、のれん代が大きく加算される場合があります。

しかし、のれんが無形のものであるからといって、根拠のないままに一声いくらで値段をつけてくれるわけではありません。

譲渡先にとって、この事業を譲り受けることにどれだけのメリットがあるのか、それを目に見える形で提示することがよりよい譲渡条件につながります。

 

事業磨き上げの中では、財務諸表をできるだけきれいな形にまとめます。

きれいにすると言っても、もちろん粉飾を行うということではなく、貸借対照表や損益計算書といった決算書がシンプルな形になるように持っていく、ということです。

手の込んだ節税対策を行うあまりに、分かりづらい決算書になっていると、事業価値算定にもよい影響はありません。

 

事業譲渡の前後でのれんの継続を望む場合は、譲渡側は現在までの事業についての思いを熱く語りたくなります。

熱意は大切ですが、ここでも譲渡先が求めているのは目に見えるものです。

現在のブランドを築くまでのノウハウやレシピなどを、可能な限り文書にして見える化しておくことで、のれんの継続性が高まる上、事業価値算定においてものれん代プラスの好材料になります。

 

長い時間が掛かる場合もある

現経営者が事業譲渡を企図したとしても、譲渡がすぐに行えるわけではありません。

事業譲渡はそれ自体が大きなプロジェクトで、実現までに長い時間を必要とすることもあります。

 

まず、譲渡先のマッチングに時間がかかります。

バルをはじめとする飲食業は経営者同士の横のつながりが比較的強いとされます。

このため、ごく小規模な事業譲渡(おおむね1件1,000万円以内)では、当事者間の一声で譲渡が決まる場合もあります。

しかし、通常は譲渡先の選定では秘密を厳守しなければなりません。

これは、事業譲渡の情報が洩れて業界で広く知られるようになってしまうと、わけあり案件として認知されてしまって譲渡がなかなか決まらなくなることがあるためです。

こういった状態になると展開中の事業そのものにも悪影響を与え、それによりさらに売りにくくなるといった悪循環にも陥ります。

このため、譲渡先の選定は事業譲渡の仲介を手がける会社を経由して秘密裏に行うのが普通です。

 

また、譲渡を行うための事業磨き上げにも相応の時間がかかることもあります。

経営が現経営者に依存している部分を排して事業が組織中心で回るようにしていく、あるいは売り上げより利益を重視した経営にシフトしていくといった変化を短時間で行うのは難しいためです。 

準備が整っていないと、譲渡に適したタイミングを逃してしまうこともあるので、事業譲渡を考える場合はできるだけ早く準備を始めることが必要です。

 

事業譲渡は人対人 

ドライに考えられる事業譲渡ですが、取引は最終的に経営者同士、人対人が行います。

のれんの引継ぎのためには、その中身をできるだけ可視化することが重要であることは事業磨き上げの作業の中で必須です。

しかし、バルのように店の雰囲気や個性が事業の構成要素として非常に大きなものである業態では、文書化したものだけではどうしても引き継ぎきれない部分が出てきます。

こういった部分の継続のためには、事業譲渡の準備期間中に新旧の経営者が同時に店舗の運営に携わる、引き継ぎ期間を設けることが有効です。

 

また、飲食業では一般に従業員の中に店舗運営のキーパーソンとなる人物がいます。

のれん継続のためには、従業員、特にこのキーパーソンが引き続いて在籍することが重要です。

人手不足に見舞われている飲食業界では、従業員の流動性も高いため、事業譲渡のタイミングでの従業員流出を防ぐ手立てを工夫する必要があります。

 

バルの事業譲渡を行うなら 

事業譲渡はその過程で専門知識を必要とする場面が多く出てきます。

譲渡先のマッチングから始まり、事業価値の算定、買収監査への対処、事業譲渡契約書の草案の作成といったシーンで、事業譲渡の仲介事業者の助けがとても役立ちます。

事業譲渡を検討される場合、信頼できる仲介事業者を見つけて相談してみることをお勧めします。

 

最後にバルを含む飲食店の事業譲渡を得意とする会社の一例をご紹介します。

会計事務所を母体とするスパイラルコンサルティング社です。

税務・財務の面でのサポートにも強く、事業価値を高めてから譲渡するSCALE型M&Aというサービスを展開しています。

自分が思っていた以上の金額で事業譲渡できる可能性があるのです。

バルを含む飲食店のM&Aに特化しており、過去には15億円の事業譲渡を成立させた実績もあります。

飲食業特有の事業の問題やノウハウに精通しているため、バルの事業譲渡を相談する相手としておすすめできます。

 

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